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第4話 カイル隊長の魔法は何魔法?

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「さよならだ」と僕が言うけど子フェンリルは動かない。
何度も言うが動かない。
仕方ないから僕たちが先に移動することにした。僕たちは砦に向かって歩き出すと子フェンリルも一緒についてくる。

「えっ、だめだよ。ついてきちゃ。君は元の住んでいた場所に戻らなきゃだめだよ」と言い聞かせるように話してもついてくる。

兄様たちに向かってどうしようと顔を見ると
「子フェンリルはハルトと一緒にいることを選んだのではないのか。傷を治してあげたしね」
「連れて行けよ。大きくなって一緒に過ごせなくなったときは樹海に戻るようにいい聞かせればいい」リクス兄様とジェラ兄様が言う。

カイル隊長もうなずくので子フェンリルに向かって
「僕についてくると今迄みたいに自由に走り回れなくなるけどいいの。親フェンリルぐらい大きくなった時はもう一緒に過ごせない。その時は樹海に戻ると約束してくれる。
それでよければ一緒にいよう」と両手を差し出すと子フェンリルは僕に向かって飛びこんできた。

「父様たち驚くだろうな。反対されるかもしれないから兄様たちも僕の味方になってよね」
「俺もあと2年したら学園に入学でハルト一人になるし、ちょうどいい遊び相手ができてよかったじゃないか」
「驚くだろうけど、大丈夫だと思うよ。この子はとても賢いしね。それと名前をつけてあげないと。子フェンリルって呼び続けるのはかわいそうだ」

「私達には聞こえなかったフェンリルの鳴き声が、なんでリーンハルト様には聞こえたのでしょうね」とマイヤーが不思議がる。
「相性かもしれない。急いで砦に戻り、隊を編成して中腹に行った者たちの確認をしないと。それと親フェンリルがやられた魔獣が何か気になりますから調べないといけませんね」とカイル隊長が言いい、僕たちは足早に砦に戻った。


砦に戻るとカイル隊長は報告に行くと騎士舎の責任者のところへ、ハント騎士は冒険者ギルドに行くようだ。
僕たちは子フェンリルを連れて騎士舎に入って休憩をとる。

「ハルト、初めての樹海がとんでもないことになったね」
「いやーこんな経験、俺も樹海に行っているが初めてだぞ」と兄様たちが笑いながら言う。

「ねえ、樹海ではフェンリルのことで聞けなかったけれど、カイル隊長の植物を自在に動かす魔法ってすごいね、何属性になるの。あんな魔法があるなんて初めて知ったよ」と僕が疑問に思っていたことを聞くと、クリス兄様がカイル隊長は水魔法のみ。
あれは植物神様からの加護だと教えてくれた。

魔法と加護の違いは、魔法は親や一族からの遺伝になるが、加護は本人だけが神様から祝福されてもらえるもので遺伝しなく本人一代限り。
1万人に一人いるかいないかだそうだ。

有名な加護だと、賢者神から鑑定、天空神から天気読みの力、海神から航海読みの力、植物神からの木々を自由自在に動かす力、薬神から調合の力など。
加護判定も8歳の魔力鑑定儀式のときに判るとのこと。
この国は前世の日本程ではないが様々な神様がいる。この世界を作った創造神と各々の生活でお世話になっている神々を複数信仰している。

軽食を食べながら話していたが、フェンリルが欲しそうな顔をするので食べるか聞くとキャンと鳴くのでお皿にハムを挟んだサンドイッチを置いたら2口くらいでなくなってしまった。
まだ欲しそうな顔をするので追加であげた。

「お腹すいていたんだね。しばらく食べてなかったのかな」
「親があの傷で広場まで移動してきたのなら、戦った後からは何も口にしていないのかもしれないね」
「クリス兄様、今更だけどフェンリルって普通に人間の食べ物あげても大丈夫なのかな」
「美味しそうに食べているから大丈夫じゃないの。食べられなければ残すだろうしね。カイル隊長が戻ってきたら屋敷に戻るから今のうちに体を休めておこう」それから1時間ほど経ってカイル隊長が僕たちのところへ来た。

「お待たせしました。これからお屋敷に戻ります。騎士舎の前に馬を移動させましたから出発しましょう」
「中腹に行っている部隊は大丈夫なのか」とクリス兄様が問う。
「砦から戻ってくるようにと合図を送ったところ全員無事のようです。ただ、警戒は必要なので応援部隊を派遣して合流して戻ってくる手はずになりました」
「僕たちにできることはないから屋敷に戻ろう。遅くなると逆に父上たちが心配する」

子フェンリルが馬に近づくと馬たちが怖がり落ち着かなくなった。
僕は子フェンリルに何とかならないとかと話すと子フェンリルが馬たちに向かってキャンと鳴いたら、馬がおとなしくなった。
「ありがとう。これから僕が住む家に帰るよ。君も気に入ってくれるといいな」



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