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第2話 初めての樹海

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翌日の朝、邸宅の前に僕たち兄弟とそれぞれの侍従3人。そして護衛騎士が10人の16人で今日は行動する。
僕たち兄弟の前に赤髪の護衛騎士が来た。

「本日この隊をまとめます、第3部隊隊長のカイル・ハーバーライトです。左にいる者が副隊長のフェデリック・ハントです。出発の準備はできていますのでよろしければ出発したいと思います」

「僕たちも準備はできている。ハーバーライト隊長今日はよろしく頼むよ」クリス兄様が代表で答える。樹海には馬で向かう。
僕は馬場では一人で乗っているけれど、初めての遠出になるためマイヤー騎士と一緒に乗っている。
ロック・マイヤー騎士は俺の馬術の先生でもあり気心がしれていて安心だ。

馬での移動は馬車とは違い季節的に少し肌寒いが気持ちいい。初めての樹海にワクワク感が抑えられない。
2時間程走ると樹海の駐屯地に着いた。

駐屯地は樹海入口でもあるためか、壁の高さは建物3階建てぐらい。壁の厚さも3メートルあり、騎士たちが上から監視・攻撃できるようになっている。
壁は2重構造で、壁と壁の間に野菜がイモ類の畑になっていた。

2つ目の壁の門をくぐると、騎士舎や冒険者ギルド、食堂、宿、鍛冶など一通りの店があり村だった。
魔獣の氾濫などで砦にこもってもしばらくは生活できる環境が整えられているそうだ。馬上でマイヤー騎士が説明してくれた。
周りをキョロキョロ見ていたら騎士舎に着いた。馬はここに預け休息後樹海に入る。


「ハルト移動は大丈夫だったか」
「クリス兄様大丈夫。一日中馬に乗っていたわけではないし」
「砦を見たいだろうけれど、樹海はずっと徒歩になるから今はしっかり休んどけよ」
「ジェラ兄様ありがとう。みんなについていけるように休むよ」

ハーバーライト隊長が僕たちの前に来て、
「クリスフォード様、ジェラルド様、リーンハルト様、1時間後に樹海に入ろうと思います。休憩は取りますが、食事は携帯食か果物のみになりますから今のうちに騎士舎で軽食を召し上がってください」
「ハーバーライト隊長わかった。これから軽食を取る。1時間後の集合はこの場所でいいか」
「はい、この場所に戻ってきてください。ハーバーライトは長いのでカイルで構いませんよ」
「カイル隊長、わかった。ジェラにハルト、騎士舎の食堂に行こう」とクリス兄様が騎士舎に向かって歩き出す。
僕たちとジョルジュ達侍従の5人はクリス兄様についていった。

一時間後、「みんな揃っているか」カイル隊長から声がかかる。
「リーンハルト様、このマジックバックに小型ナイフ、ポーションと携帯食と果物と水が入っています。休憩時の水分補給は別にありますから、水は万が一はぐれてしまった時用と思ってください。護衛にマイヤーとウィルソンがつきますので、2人と離れないようにしてください」
「カイル隊長、気を付けるよ。マイヤーにウィルソン、今日はよろしく頼むよ」
「「はっ」」
「ではこれから樹海に入る」


最初にくぐった門とは違う門からでると目の前は樹海が広がっていた。
10分程歩くと樹海の入口についた。

木々から太陽の光が入るし、道も広く歩きやすい。僕の同行が許されるわけだ。
30分ほど歩いていると急にカイル隊長が止まった。
「前方に気配を感じる。注意を怠るな」

騎士や兄様たちが剣を構える。
僕とジョルジュはマイヤーとウィルソンの後ろにさがる。
しばらくすると、シルバーウルフが5頭現れた。

「なんでシルバーウルフが、浅瀬にいる魔獣じゃないぞ。我々には大丈夫な相手ですが、リーンハルト様動かないでくださいね」とマイヤーが言う。
5分程で戦闘は終わった。
クリス兄様も、ジェラ兄様も1匹ずつ倒していた。

「ただ殺すなら瞬殺だけど、シルバーウルフの毛皮は人気があるから高く売れる。
傷が多いと価値がさがってしまうからな。毛皮を傷つけないようにするなら足か頭を狙うしかない。ハルトも魔獣によってどの部分に価値があるのか勉強しておくといい。しかし、シルバーウルフがこんな浅瀬にとは珍しい。普通なら一角ラビットかココットだよな」とジェラ兄様が話してくれた。

なるほど、我が家は魔獣の素材で利益を得ている。
騎士を雇うにしても武器にしてもお金はかかる。いかに価値を高めて素材を売却するかも大事になるということか。

シルバーウルフは白銀の毛皮が肌触りも良く人気、でもお肉は硬くておいしくない。
だからといってお肉を捨てるわけではなく、ドックフードみたいなのに加工して家畜やペットの餌になっているそうだ。
単体だとEランクだが、だいだい5~10匹ぐらいで行動するため団体だとDランクになる。

一角ラビットは頭に角が生えている中型犬ぐらいの大きさのウサギでFランクの魔獣である。
見た目は大きいウサギだが狂暴で角に刺されると痛いし体当たりされると骨折する場合があるらしいから油断はできない。
肉はおいしく、冬は毛並みが白くなるため襟巻や手袋、髪飾りや小物のバックなどに人気だ。春から秋は茶色の毛並みになるため毛皮の価値は下がる。

ココットとは中型犬ぐらいの大きさの鶏でFランクの魔獣である。
足が速く、くちばしでつつかれたり、足でキックされると痛い。
名前の由来はココットと鳴いているように聞こえるからとか。

ココットは肉と卵。
卵を手に入れるには雌を飼いならす必要があり、罠を仕掛けて生け捕りにするか出合い頭に生け捕りにするかの2択。
雄はすぐに殺され肉になる。雌は強いと認めた相手には攻撃しなくなるので、殺さず、けがをさせないで従わせていく。

だから各地にココットを飼いならす専用職員がいる。
卵はどこも必要だし、引退した冒険者や騎士の再就職先として人気らしい。
また5、6年すると雌は卵を産まなくなるので生け捕り依頼は年中途切れない。

一角ラビットとココットは樹海では弱い部類だが繁殖力が高く狩っても狩っても減らない。人間にはありがたい魔獣である。

討伐したシルバーウルフの死体は時間停止付のマジックバックに仕舞う、水魔法を使える騎士が素早く血抜きをして、風魔法が使える騎士が血の匂いを風で飛ばす。
早くしないと血の匂いで他の魔獣が集まってくるから素早く処理をして立ち去らないといけないらしい。

移動を再開して15分程歩いたところで、またシルバーウルフが8匹現れる。
「いったい何が起こっているのか」クリス兄様のつぶやきが聞こえたが、まずは目の前のシルバーウルフを倒すことが先決だ。

「リーンハルト様、今回のシルバーウルフの中に上位種が1匹います。戦闘は長くなりますので気をぬかずにいてください」とマイヤーが小声で話してくる。
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