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彼女ハ、彼岸花ヲ愛ス
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穏やかな川が流れ、古民家沿いを歩く親子。青い着物の上に黒い羽織りを身に付け、黒い足袋に草履を履いて歩く、青みがかった黒髪の40代前半程の、性的魅力に溢れた高身長の男、白鳥ナガレと、黒髪の、薄い緑色の着物に濃い羽織を身に付けて小さな草履を履いて歩く8歳くらいの男の子、息子の京牙と手を繋いで歩いていた。
「父上!白玉ぜんざゐ(い)食べたゐ(い)!」
「先日も食べたに、また食べるとか京牙。(昨日も食べたのに、また食べるのか京牙)」
彼はとにかく甘い物が好きで、散歩をしているとおねだりしてくる。
「毎日とはいえ食せる!(毎日でも食べれる!)」
「ははは!」
そんな話しをして歩いていると、川沿いに咲く、一輪の彼岸花。目の前にしゃがんで触れているのは、ブロンドの短い髪の女だ。赤いモダン柄の黒い着物を身に付けており、顔が良く見えない。
「父上!彼岸花じゃ!息吸うな!毒じゃ!(父ちゃん彼岸花だ!息吸うな!毒だ!)」
この時代、彼岸花は毒性があると恐れられていた。それは誰もが知っており、子供たちを育てる親はとにかく彼岸花に毒性がある事を言わなければならない時代だった。だが、何故そんな毒性のある彼岸花の前にしゃがみ込んで、触れているのだろうか。
「あぁ?おう…」
あの子。
良く見掛けるんだよな。
「父上早う!(父ちゃん早く!)」
「ん?あ、おう」
父親の手を引っ張って早く彼岸花から遠ざかろうと走る息子に対し、自分の方が体重が重いので中々早く進んでくれない。
「………………………………………」
その時、ふと顔を向けた。その女は、一度見たらずっと残る蠱惑的な美貌の主であり、この街では一番の美少女として有名な、鈴だ。とても綺麗だった。彼岸花を愛でている変わった一面を持っているが、とても凛としていて、座る姿も美しい。暫く息を止めたままその直ぐ先の橋を歩いて向こう側に渡る。
「ぶはああぁ!はぁはぁ」
息を止めていた京牙は、深く息を吐く。呼吸が出来る有り難みを、また知る事になる。
「おゐおゐ長らく息止めておったら死ぬぞ?(おいおい長く息止めてたら死ぬぞ?)」
マイペースで、叱っているのだがとても優しい口調で言うなり
「毒性がござるとは母上に教わった!父上は切迫感が全くござらん!(毒性があるって母ちゃんに教わった!父ちゃんは危機感が全く無い!)」
逆に息子に叱られてしまった。
「とはいえあの子、触とはた。(けどあの子、触ってたよ?)」
「あの女は彼岸花の毒を吸ゐ続けたせゐにておかしいとおなっとんじゃ!父上白玉食べに参ろう?(あの女は彼岸花の毒を吸い続けたせいでおかしくなってるんだ!父ちゃん白玉食べに行こう?)」
「おう!」
彼岸花の毒性。
本当にそうなのか?
半信半疑だが、確かにあの子はとても変わっている。何せ、毒性のある彼岸花に触れていたのだから。
「やーだーだー!あの子また!(やだ!あの子また!)」
「変わった子で候ね?(変わった子よね?)」
「近居られたらこっちもおかしくなっちゃうわで候?(近付いたらこっちもおかしくなっちゃうわよ?)」
街の女たちには、変わり者扱いされていた。色々な噂話がまた広がっていく。
「………………………………………」
鈴は、その場から立ち去り、森へと入っていった。ザッザッザッザッザッザッと、豊かな道を歩き、その先には温泉が。彼女は、着物を脱いだ。美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になり、チャポッと、なかなかお目にかかれない綺麗な形のほっそりした脚を入れ、更に片方の脚も入れて浸かる。
「ふぅ」
体に溜まった疲れが滲み出てくる。街に居るのは退屈だ。色々と言われるから。この時間帯が、とても至福。チチチチチ。チュンチュン。小鳥の囀り。温泉に入りながら、癒しを得る。やがて、バシャッと立ち上がった。濡れたふっくらとした形の綺麗な大きな胸や、ムチッとしたピンク色の愛らしい乳首から滴る水滴。濡れた瑞々しい貝殻骨の浮いて見える綺麗な背中や、欲望を唆らせる引き締まった濡れた尻。男を知らない彼女の体は、とても綺麗だ。
その夜。
「父上はらへりじゃ~!(父ちゃん腹減った~!)」
「待たれよろ。おっとーが美味い塩結び握とはやるからな(待ってろよ。父ちゃんが美味しい塩結び握ってやるからな)」
囲炉裏に胡座をかいて駄々こねる京牙と、玄関先にある釜戸に網を乗せて魚を2匹、竹筒で火加減を見ながら息を吐き込む。全然おにぎりとは関係無い。
「父上囲炉裏がござるんじゃからここにて魚焼けば良きにはんか~!(父ちゃん囲炉裏があるんだからここで魚焼けば良いじゃんか~!)」
囲炉裏の方も薪が焚かれて火が燃えている。
「あっ!ははははは!あぁ~うつけ者したでござる!ではそっちにて雑炊こしらえる!(バカした!じゃあそっちで雑炊作る!)」
「今から~!?」
その時、ガタタン!と言う戸が揺れる音がし、彼は顔を向けた。
「何事じゃ?(何だ?)」
「何?」
ダンダンダン!と、戸を乱暴にノックする音が。
「京牙。奥に行とはろ(京牙。奥に行ってろ)」
京牙は言われた通り奥に行き、彼は、結び帯の横に装着している小刀を手にして立ち上がり、ガタッ!と戸を引いた。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「!!!!!!!!!!?」
脚元に倒れるのは、鈴の姿が。
「おゐ!よきか!?しかとしろ!(おい!平気か?しっかりしろ!)」
しゃがみ、彼女に触れて声を掛ける。
「た、助けてくれ…」
瞳を揺らし、助けを求める鈴は、停電したようにプッツリと、意識を失なってしまう。
「おい!」
ナガレは、軽々と彼女をお姫様抱っこして家に入り、戸を閉めた。やがて、ふと、目を覚ました。
「父上!この女絶対に毒吸ゐ過ぎたんでござる!何時も彼岸花触っとるし!(父ちゃん!この女絶対に毒吸い過ぎたんだ!いつも彼岸花触ってるし!)」
梁の屋根が、視界がぼやけながらも見えた。自分は、仰向けになっているようだ。
「京牙。よろず彼岸花のせゐにすんにはござらんの!はらへりにて倒れておったやもしれぬ(京牙。何でも彼岸花のせいにするのはよせ!腹減って倒れたかもしれないだろう?)」
「父上其れはあり得ないで候!(父ちゃんはそれはないよ!)」
「なににて決め付けるのか?電波の無きなりしが全部彼岸花にすんにはござらんの!(何でそう決め付けるのよ?電波が無いのも彼岸花のせいにするな!)」
「この時代電波なにかござらんで候!(この時代電波何かないよ!)」
ふと顔を向けると、大人の背中が見えた。囲炉裏を囲んで座って、串に刺さった鮎を食べており、京牙も胡座をかいて座ってバリバリ食べていた。
「うわぁ!眼覚ましたでござる!(うわぁ!目覚ました!)」
「せっしゃ起きてるで候長らく!(俺ずっと起きてただろう?)」
「否!女でござる!(違う!女だよ!)」
「?」
振り返り見ると、目が合った。
「あっ!気付おりきか?(あっ!気付いたか?)」
「!!!!!!!!!!?」
ガバッ!と上体を起こした途端
「ぐっ!うぅ!」
余分の脂肪の無い痩せて凹んだ腹部を抑えて前に倒れる。
「おゐおゐ無理するでござるな!(おいおい無理するな)」
囲炉裏の炭に突き刺し、彼女に触れて優しく押し倒す。
「何ぞあったでござるんじゃ?(何があったんだ?)」
「父上触るな!毒が!(父ちゃん触るな!毒が!)」
「偏見はで候せ!人を毒扱ゐすんな。彼岸花であろう?毒性があんのは(偏見はよせ!人を毒扱いするな!彼岸花だろう?毒性があんのは)」
子を叱り付けてから、彼女に顔を向ける。
「ひい応処置はしたでござる。脚うながひどく腫れておったから、包帯を巻おりき(一応処置はした。脚首がかなり腫れてたから、包帯を巻いた)」
何があったか知らないが、捻挫をしていたので包帯して処置をしたようだ。
「辱い」
瞳を揺らし、顔を逸らす。
「何ぞあったでござるんじゃ?(何があったんだ?)」
「………………………………………」
鈴は、顔を逸らしたまま黙り込んでしまう。
「いずれ話してちょーだいで候(いつか話してよ)」
その時、ドンドンドンドンと、戸をノックされる音。
「白鳥!白鳥殿は不在か?」
それは男の声であり、その声を聞いた途端、彼女の顔色が変わり、上体を起こす。
「!!!!!!!!!!?」
「何程かの用じゃ?(何の用だ?)」
彼は立ち上がるなり、ナガレの長くて細い脚にしがみついた。
「?」
「庇ってくれ。頼む…(庇とはくれ。頼む…)」
その時、彼は何かを悟った。
「京牙。女を庇ゑ(京牙。女を庇え)」
「えぇ!?俺が!?(ゑぇ!?それがしが!?)」
「早う!(早く!)」
すると京牙は、毒性のあるこの女を父の命令により、嫌々ながら歩き出せば、彼女は這って付いて行き、台所に行けば、ガバン!と、真四角に開く地面。収納スペースだったようで、地面と同化しているあまり気付かなかった。
「白鳥殿!」
「御意御意!今出候!お待ち下され!(はいはい!今出ます!お待ち下さい!)」
玄関に出、ガタガタと戸を開ける。
「かたじけない!いつぞや戸の調子が悪しきもとでござるから(すいません!最近戸の調子が悪いものですから)」
そこに立っていたのは3人の警官だ。しかも一人は、警察の中でもトップに立つ40代後半程の高身長の男性。鬼賀之仁導。元軍隊の中尉。
「いかがも!白鳥殿!余分遅くにすまなゐねぇ。食事中でござったかの?(どうも!白鳥くん!余分遅くにスマないねぇ。食事中だったかな?)」
「嗚呼。とはいえ、全然心配御無用でござるよ?なにかあり申したか?(あぁ。でも、全然大丈夫ですよ?何かありましたか?)」
「先程、彼岸花の撤去作業を行おうと致した際に、女が妨害してちょーだい来ましてほしいで候。その女を捕まゑて処刑つかまつる探致し候んなれど、見掛けたら、教ゑて下さらなゐか?金髪の、街ひい番の美おぼこ、愛道鈴を(先程、彼岸花の撤去作業を行おうとした際に、女が妨害して来ましてね。その女を捕まえて処刑する為に探しているんだが、見掛けたら、教えて下さらないか?金髪の、街一番の美少女、愛道鈴を)」
顔を知らない人は居ない。彼女はとても有名な街一の美少女。警察官から逃げて来たようだ。その時、収納スペースに身隠れしている鈴は、その声と会話を聞き、震えていた。
「………………………………………」
息を殺すのに必死だ。少しでも声を上げたら、自分だけでなく白鳥親子も殺されてしまい兼ねない。彼女は、自分の手で口を塞ぐ。
「さふでござったか。ござるが何ゆえに彼岸花の撤去を?毒性がござるからでござるか?(そうでしたか。ですが何故彼岸花の撤去を?毒性があるからですか?)」
ここで彼は言い方に失敗した。女を庇っているので、女に触れるのを避けてしまった。これは人間の心理であり、隠し事をしている人は必ず避ける。
「ゑぇ。毒性がござるものを街に放てる訳に御意かなゐからな?(えぇ。毒性があるものを街に放てる訳にはいかないからな?)」
「相手はおかしくなった女でござる。捕まゑるにしてちょーだいもお油断せぬやう(相手はおかしくなった女です。捕まえるにしてもお気を付けて)」
「お魂遣ゐありがたき幸せ白鳥殿。まぁまた、會うとは思うておるんなれどな?(お心遣いありがとう白鳥くん。まぁまた、会うとは思うんだがな?)」
彼は、笑みを浮かべてそう口にした。ナガレは、自分を保つのに精一杯だった。少しでも油断したら、鬼賀之に見透かされそうだ。だが、彼は分かっている気がする。だから隠すのも必死になるが、変に隠し続けるのも怪しまれる。彼は、いつものように接する。その後ろで、囲炉裏に胡座をかいて座る京牙は、どこか動揺をしてしまい、目が泳いでいた。それを、鬼賀之は見過ごさなかった。
「京牙くぅん。お邪魔するぞよぉ(京牙くぅん。お邪魔するよぉ)」
靴を脱ぎ、囲炉裏に上がって近付き、片方の膝を付く。だが、ナガレは動かなかった。2人の若い警察官がおり、マークされているような気分だ。
「京牙。ご挨拶は?」
「ご、ご機嫌いかがでござるか(こ、こんばんは)」
瞳を揺らし、床に爪を立てる。怖かった。何だか、今まで見て来た中で、違うオーラが放たれており、それがとても恐ろしく、恐怖だった。
「良き子じゃねぇ。京牙くんは(良い子だねぇ。京牙くんは)」
彼は、頭の上に手を置いた。ナガレとは違った手の大きさと厚さ。何だかとても硬い。その温もりに、子供ながら愛を感じられなかった。
「父上と母上のお陰にて、良き子に育ちましたでござる。(父ちゃんと母ちゃんのお陰で、良い子に育ちました)」
8歳とは思えない発言に、父親としてナガレはニヤッとする。
「天晴は白鳥めをとのわらしじゃ。気品がござる。お主が未だ小さゐ頃、良くおじ殿と遊みておりきんじゃぞ?覚ゑてるかの?(さすがは白鳥夫妻の子供だ。気品がある。君がまだ小さい頃、良くおじさんと遊んでいたんだぞ?覚えてるかな?)」
鬼賀之は、近所に住んでいて良く遊んでいた。
「父上そうなのでござるか?それがし、覚ゑてなゐ(父ちゃんそうなの?俺、覚えてない)」
「ははは!覚ゑてござらぬても無理はござらんさ。京牙殿(覚えてなくても無理は無いさ。京牙くん)」
「貴様が未だ参歳くらゐの頃でござったかの?鬼賀之殿には良くお馬さんごっこしてもらふたとはたんじゃぞ?(お前がまだ3歳くらいの頃だったかな?鬼賀之殿には良くお馬さんごっこして遊んでもらってたんだぞ?)」
それは彼がまだ3歳くらいの時のようだ。それは、記憶に無くても不思議では無いし、おかしくは無い。幼すぎる。
「そうでござったか!かたじけない!それがし、覚ゑてのうこざった(そうだったんだ!ごめんなさい。俺、覚えてなかった)
「良きんでござる良きんでござる。また戯れよう?京牙殿(良いんだよ良いんだよ。また遊ぼう?京牙くん)」
「うん!」
コクッと頷き、それだけで心が開いた気がし、笑みを浮かべた。もう、少しの危機感と緊張感は無い。
「夜分遅くに邪魔をしたでござる(夜分遅くに邪魔をした)」
やがて、彼は家から出た。
「否。また戯れに来て下され(いいえ。また遊びに来て下さい)」
「にてはまた(ではまた)」
そして、3人で歩いて離れ、彼は戸を閉め深く息を吐き出した。
「はああああぁ~」
体から緊張感が抜け、座り込んでしまう。
「父上!平気!?(父ちゃん!平気!?)」
立ち上がって走り駆け寄る。
「あはは!平気でござる京牙。辱い。魂配してちょーだいくれて(平気だよ京牙。ありがとう。心配してくれて)」
そして立ち上がると、彼は収納スペースをガコンと開き、両膝を付いて両手を差し出した際、鈴はその腕を掴み、グイッと引っ張ればお姫様抱っこした。
「まふ平気じゃ。何奴も来なゐ。平穏しろ(もう平気だ。誰も来ない。安心しろ)」
「それがしのせゐにて、お主たち親子を危険に晒す訳に御意かぬ。か以って上、迷惑千万は掛けれぬ(オレのせいで、あなたたち親子を危険に晒す訳にはいかぬ。これ以上、迷惑は掛けられん)」
「なにれにしてちょーだいも、その脚にて外は歩けぬ。暫くは庇う。ここに居ろ(何れにしても、その脚で外は歩けぬ。暫くは庇う。ここに居ろ)」
「なれど…(しかし…)」
「父上の申す事聞け!せっしゃ貴様を庇ゐ立てしたうなゐなれど、処刑されるでござるのは嫌じゃ!(父ちゃんの言う事聞け!俺はお前を庇い立てしとうないけど、処刑されるのは嫌じゃ!)」
その近くで言い放つ京牙は、鈴に対しての考え方が変わった。処刑にされてしまう運命の女を、庇わない訳にはいかない。この、若い女に待ち受けているその運命はあまりにも重た過ぎる。彼は、父と共に庇う事を決意した。
「辱い。かのような幼子にも…。すまぬ(ありがとう。こんな幼子にも…。すまぬ)」
そして、この家で過ごす事に。布団の上で仰向けになる鈴の枕元には水が入ったタライと白いタオルが。彼女は上体を起こし、肩から開(はだ)けさせ、着物を腰まで下ろして上半身裸になる。
「鈴殿!」
襖をスーッと引き
「床に就いたにてござるか?(寝たでござるか?)」
彼女は顔を向けるなり、ぷるんとふっくらとした形の綺麗な大きな胸が揺れ、彼は、カアァッと、若い子の裸を目にして顔が熟れすぎたトマトみたいな色になり、開いた口が閉じない。
「!!!!!!!!!!?」
てかそもそも寝てる人にこの声の大きさで話し掛けてきたらその声で起きてしまうだろうに。
「あっ!乳房だ!乳房出しておる!(あっ!お×ぱいだ!お×ぱい出してる!)」
「わらしは寝てろ!拝見するな!(子供は寝てろ!見るな!)」
スパーン!と閉じ、親子揃ってうるさい。
「………………………………………」
愉快である、親子じゃな(楽しい、親子だな)。
翌日。
歯を磨くナガレと京牙は、外の井戸の前に立っており、柄杓で水を口に含んで濯ぎ、地面に吐き出す。
「父上寺子屋行って参る!(父ちゃん学校行ってくる!)」
「おう!御武運を!(おう!行ってらっしゃい!)」
走って行く息子を見送り、彼は中に入り戸を閉める。草履を脱ぎ、囲炉裏に上がり、その隣の襖を開ける。
「スースー」
布団の上で仰向けになる鈴は、眠っていた。疲れたのであろう。警察に追われて怖い思いをしながらも逃げて来たんだ。
「………………………………………」
ナガレはソッと、閉めた。近くの畑で野菜を収穫し、それをリヤカーに積んで売りに行く。それが、彼の仕事。
「畑にて収穫した新鮮な野菜でござる!買とはて買とはて!(畑で収穫したばかりの新鮮な野菜だよ!買ってて買ってて!)」
「人参参本下されな(人参3本下さいな)」
「大根を弐本(大根を2本)」
「茄子を伍本貰おうかね?(ナスを5本貰おうかね?)」
「巻き葉野菜壱つと人参参本。大根を弐本下されな(キャベツ1つと人参3本。大根を2本下さいな)」
「あゐで候!毎度あり!毎度!(あいよ!毎度あり!毎度!)」
野菜に集る主婦たち。野菜は売れる。それを安く売っているのでとにかく売れ行きが早い。そんな中、ふと、鈴は目を覚ました。
『ここに居たとか女(ここに居たのか女)』
『!!!!!!!!!!?』
周りに立つのは警察と、鬼賀之だ。
『連れてゆけ(連れて行け)』
『はっ!』
2人の警察官が彼女の腕を掴んで立たせせるなり
『いやぁ!』
鈴は抵抗し、着物を脱いで裸になりながらも走って逃げる。
『追ゑ!逃すな!処刑にしろ!(追え!逃すな!処刑にしろ!)』
走ってくる警察官と、魔の手。追い付かれた鈴の腕を掴んで後ろ手にして手枷をし、口には猿轡を嵌めさせられ、手で目を遮蔽する。
『んぅ!ん…………………ッ!』
唾液を垂れ流し、涙を流す。
助けて!
母上!
「うわあああああぁ!!」
「しかとしろ!鈴殿しかとしろ!(しっかりしろ!鈴殿しっかりしろ!)
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
目を見張り、叫んでいた彼女の肩を掴んで揺さぶるナガレは、仕事から帰って来たばかりであり、ひどく魘されていた為揺さぶり起こしたようだ。
「ひどく魘されてござった。平穏しろ。何奴も来なゐ。平気じゃ。鈴殿(ひどく魘されていた。安心しろ。誰も来ない。平気だ。鈴殿)」
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
瞳を揺らし、額から汗が滴る。
「湯に浸かると良い。今、湯を焚く(風呂に浸かるが良い。今、風呂を焚く)」
「はぁはぁはぁはぁはぁ辱い。白鳥殿」
彼女は常に、怯えていた。警察官たちに。ナガレは、薪を焚べてカチカチと石と石を擦って火を付け、竹筒を手に火加減を見ながら五右衛門風呂の湯を焚く。
「かのようなもんかの?(こんなもんかな?)」
立ち上がり、彼女を呼びに行く。
「鈴殿。湯が焚けたでござる。(鈴殿。風呂が焚けた)」
スーッと引くなり、彼は軽々と鈴をお姫様抱っこして風呂場へと向かう。
「良いのに」
「何ぞ?(何が?)」
「抱かござらぬても歩けると申すに(抱かなくても歩けると言うのに)」
一々お姫様抱っこをされて移動するので、彼女は恥ずかしくて仕方が無いようだ。
「その脚にては歩けん。辛抱しろ(その脚では歩けん。我慢しろ)」
それを、ニヤッとしながら言われ、鈴は下唇を噛み締め頬が染まる。
「良いと申すに(良いと言うのに)」
「良きか良きか(良いじゃんか良いじゃんか)」
包帯を外し、後は自分で服を脱ぎ、美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になり、五右衛門風呂に浸かる。そんな中彼は、布で目を遮蔽して竹筒を手に拭き続ける。
「湯加減はいかがじゃ?(湯加減はどうだ?)」
「丁度良き(丁度良い)」
ナガレは、吹くのを止めた。
「白鳥殿。昨夜分のあの男とは、仲が良いうにて(昨夜のあの男とは、仲が良いようで)
鬼賀之の事であろう。隠れていたが、会話は筒抜けだった。
「鬼賀之殿は古、近所に住みてた男にて、京牙と良く遊みてくれておりきんじゃ。なれどせっしゃ、鈴殿を売るごとき行為はひい切致さぬ。平穏してちょーだい、ここに居ろ(鬼賀之殿は昔、近所に住んでた男で、京牙と良く遊んでくれていたんだ。だが俺は、鈴殿を売るような行為は一切しない。安心して、ここに居ろ)」
彼は、そうやって仲良かった人であっても、決して売るような行為はしない。彼女の瞳が揺れ、こう口にした。
「それがしは白鳥殿を信ずる(オレは白鳥殿を信じる)」
彼は、笑みを浮かべた。やがて風呂から上がり、タオルで体と髪の毛を拭き、やがて着物を身に付けて布団に座り、ナガレは包帯を巻く。
「辱い。世話になりっ放しにてかたじけない(世話になりっ放しで申し訳無い)」
「良きんじゃ良きんじゃ。迷惑千万掛けてくれ(良いんだ良いんだ。迷惑ばかり掛けてくれ)」
「………………………………………」
その、彼の優しさに瞳を揺らし、頬を染める。
「其れにて、鈴殿は歳幾つじゃ?(それより、鈴殿は歳いくつだ?)」
「参十八じゃ(38だ)」
「参十八ぃ!?」
それを聞いて驚愕のあまり目を見張り、声が大きくなってしまう。
「冗談じゃ(冗談だ)」
「ござるよなぁ!?たまげた~。おゐふざけんなで候(だよなぁ!?びっくりした~。おいふざけんなよ)」
彼は笑い出し、常に真顔な彼女の口元が緩み、ほんの少しだが、笑みを浮かべる。
「誠は幾つじゃ?(本当はいくつだ?)」
「十六じゃ(16だ)」
僅か16で、処刑の運命が決められている。こんな若い子の命を、放ってはおけない。
「であると思った(だと思った)」
「白鳥殿。庇とはもらっておる身じゃ。礼がしたいでござる(庇ってもらってる身だ。礼がしたい)」
迷惑を掛けているので、お礼がしたい気持ちはある。だが、ナガレはこう口にした。
「要らぬ。善人にて庇っとるんじゃ。左様な事、存念無くて良き。ただに、ここに居てさゑくれらば良きんじゃ。警察が収まる迄は、外に出なゐ事を勧める(必要ない。善人で庇ってるんだ。そんな事、考え無くて良い。ただ、ここに居てさえくれれば良いんだ。警察が収まるまでは、外に出ない事を勧める)」
「さふ云ゑば、白鳥殿は父上屋敷庭だか?(そう言えば、白鳥殿は父子家庭なのか?)」
確かに昨日から母親の姿は見えない。考えられるとしたらそうなので聞くと、彼の瞳が揺れ、懐かしげに語る。
「伍年前に、正室が病死し他界したでござるんじゃ。暫く手筈っと、『母上母上』泣ゐてて。それがしもいかがすらば良きか分からござらぬてな。それがしが京牙を守る必定がござる。強く無くてはいけないであろう。御父上としてちょーだい、男としてちょーだい。じゃからせっしゃ、鈴殿を守る。生きておる鈴殿の命を。(5年前に、妻が病死して他界したんだ。暫くはずっと、『母ちゃん母ちゃん』泣いてて。俺もどうすれば良いか分からなくてな。俺が京牙を守る必要がある。強く無くてはいけない。父親としても、男としても。だから俺は、鈴殿を守る。生きている鈴殿の命を)」
命の有り難みを、妻で知った。だから、生きている鈴を、白鳥親子が危険な目に遭うかもしれない。死と隣り合わせになっているが、彼女を庇うのは、命の尊さを知ったからだ。
「…………………白鳥殿」
鈴は、ナガレの腕を掴んだ。
「辛ゐ事を思ゐ出しめてしまゐ、申し訳無かった。代わりに、それがしが白鳥殿の奥方としてちょーだい、それがしを扱とはくれ(辛い事を思い出させてしまい、申し訳無かった。代わりに、オレが白鳥殿の妻として、オレを扱ってくれ)」
「なに!鈴殿が正室として(何!?鈴殿が妻として!?)」
「如何にとはするでござる!庇とはもらっておる身じゃ。白鳥殿に聞き従う。屋敷事もするでござる。御身を売れと申したら白鳥殿に売る。如何にとはするでござる。それがしを、使ひてくれ(何だってする!庇ってもらってる身だ。白鳥殿に聞き従う。家事もする。体を売れと言ったら白鳥殿に売る。何だってする。オレを、使ってくれ)」
彼女は、本気だった。彼の瞳が揺れ、こんな若くて可愛い子をどう扱えば良いか分からなかった。
「白鳥殿を、癒す事じゃとはするでござる(癒す事だってする)」
すると、ナガレの結び帯を解くなり、着物が脱げ、筋肉で引き締まった裸体に。
「!!!!!!!!!!?」
その、人並み外れて大きな男根を目に、目を、見張る。
何と、大きさ(何て、大きさ)
「待たれよ待たれよ待たれよ待たれよ!候せ!止めろ!己の御身を大切にしろ!(待て待て待て待て!よせ!止めろ!自分の体を大切にしろ!)」
そして、鈴も着物を脱ぎ、裸体になった。
「白鳥殿。それがしは、白鳥殿の為なら、如何にとは…(白鳥殿。オレは、白鳥殿の為なら、何だって…)
その上に覆い被さり、彼を押し倒した。
白鳥殿…。
授業が終わり、寺子屋から京牙が出て来た。走る息子を、木の陰から覗くのは鬼賀之だ。
「………………………………………」
悪しきが、それがしの眼を誤魔化す事は出来んぞ?(悪いが、俺の目を誤魔化す事は出来んぞ?)
そして彼は後を追う。
「………………………………………」
鈴は、座ったまま一言も発さなかった。
「鈴殿のこころもちは伝わった。感謝するでござる!じゃから、己の御身を大切にしてちょーだいくれ!分かるのう?それがしのこころもち!(鈴殿の気持ちは伝わった。感謝する!だから、自分の体を大切にしてくれ!分かるよな?俺の気持ち!)」
若ゐ子に抱かるる所でござった!(若い子に抱かれる所だった!)
危うい所じゃった!(危ない所だった!)
純粋で、純情そうに見えて、実はとても大胆な子であるのを知り、ナガレは必死になって説得させる。互いに裸体のまま。
「鈴殿。取り敢ゑず着物着やう(取り敢えず着物着よう)」
「すまぬ白鳥殿。気合が入りすぎてしもうた(すまぬ白鳥殿。気合いが入り過ぎてしまった)」
着物を手にして身に付け、彼も身に付ける。
「………………………………………」
良かった。分かとはくれて(良かった。分かってくれて)
ホッとしたのも束の間。
「父上~!(父ちゃ~ん!)」
京牙の呼び叫ぶ声が。
「京牙!!」
彼は立ち上がって走り、玄関の戸を開けた途端
「ぐっ!ゔっ!」
刺股で首を押さえ付けられ、そのままドサッと倒れる。
「父上!(父ちゃん!)」
京牙を押さえ付けているのは鬼賀之だ。
「き、鬼賀之殿!」
「がさいれ」
すると、警察官が2人入って来るなり、鈴を見付け出した。
「いやぁ!」
「女を確保候成り!(女を確保しました!)」
「連れてゆくぞ!(連れて行くぞ!)」
「待たれよ下され!彼女の話しも聞ゐてあげて下され!(待って下さい!彼女の話しも聞いてあげて下さい!)」
その時、彼は腕を伸ばすとナガレのアゴを掴んで顔を向けさせた。
「ぐ、うぅ!」
「父上!(父ちゃん!)」
「元来なら、貴様のせがれ共々、犯罪者を庇ゐ立てするでござる事は死に値する事じゃ。彼岸花の毒性はいと天下無双んじゃ。実際に彼岸花の香りを吸ゐ過ぎて、亡くなった人がゐる。其れを放とはおけば、死に至らしめるんじゃ(本来なら、お前の息子共々、犯罪者を庇い立てする事は死に値する事だ。彼岸花の毒性はとても強いんだ。実際に彼岸花の香りを吸い過ぎて、亡くなった人がいる。それを放っておけば、死に至らせるんだ)」
彼の瞳が揺れ、彼岸花にそんな毒性があるとは全く信じていなかった。だが現に、亡くなっている人が居る。それも、知らなかった。
「まぁ、白鳥殿は古からの良き仲じゃからな。処罰は致さぬが、息女は頂戴いたす(まぁ、白鳥殿は昔からの良き仲だからな。処罰はしないが、娘は貰っていく)」
すると警察は離すと、鈴を連れて2人の警察が出て来た。
「鈴殿!」
立ち上がった際、彼女は一筋の涙を流しており、鈴は、唇に唇を、押し当てた。その時、鬼賀之は気遣って、京牙の目に手で覆う。やがて、ソッと離れこう、口にした。
「違った形にて、愛したかった(違った形で、愛したかった)」
「!!!!!!!!!!?」
「ゆくぞ?」
京牙を離し、彼はナガレに抱き付く。
「かたじけない父上!それがしのせゐにて、あの子が(ごめん父ちゃん!俺のせいで、あの子が)」
責任を感じ、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とす。
「お前のせゐではない。全然お前のせゐではない(お前のせいじゃない。全然お前のせいじゃない)」
鈴!
せっしゃほらを吐おりき(俺は嘘を吐いた)
守ると約束したでござるに!(守ると約束したのに!)
生きてくれ!
鈴!
そんな中彼女は布団の上に仰向けになって、首輪を嵌められ、黒い布で目を遮蔽され、後ろ手にされて縄で華奢なくびれた両手首から肘に掛けて縛り付けられており、美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になって、なかなかお目にかかれない綺麗な形のほっそりした脚をM字開脚させられ、膝と脚首を2本の縄で縛られて固定されている。
「絶景絶景!」
鬼賀之は上半身裸になっており、その上に覆い被さる。
「いやぁ!いやっ!」
ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とし、抵抗して叫ぶ。
「ひいつ聞かせてくれ。何ゆえに貴様は彼岸花を愛すんじゃ?毒性のあるでござるものを慕うなど、貴様はそれがしと似ておる。親近感が湧ゐておるのはそれがしのみにてか?(一つ聞かせてくれ。何故お前は彼岸花を愛すんだ?毒性のあるものを愛するなど、お前は俺と似ている。親近感が湧いているのは俺だけか?)」
「母上は、彼岸花を愛にてておりき!なれど、彼岸花には毒性なにかなゐ!母上殿上は病にて亡くなった!彼岸花のせゐではない!拙者は、母上が首ったけな彼岸花を、同じこころもちにて好きなのみにてだ!彼岸花に毒性なにかござらん!信じてで候!(母上は、彼岸花を愛でていた!けど、彼岸花には毒性何かない!母上は病気で亡くなった!彼岸花のせいじゃない!私は、母上が大好きな彼岸花を、同じ気持ちで好きなだけなの!彼岸花に毒性何か無い!信じてよ!)」
彼岸花を愛していたのは確かだ。だが、彼岸花を愛ですぎで亡くなったと噂が、まるで感染症のように広まり、彼岸花には毒性があると言う考えが植え付けられた。
「ほぉ。亡き母上の為に、彼岸花を守とは参ったと申す訳か。めるへんな息女じゃ(ほぉ。亡き母の為に、彼岸花を守って来たと言う訳か。メルヘンな娘だ)」
「お願ゐ!釈放してちょーだい!(お願い!釈放して!)」
そうなったら事実だ。釈放を求めるのが当たり前。自分は処刑にされる必要の無い人物であり、無実だ。なのでそう言ったのだが、彼は、違う目的を持っていた。
「白鳥殿の元には返せん。貴様はここにて長らく、それがしの癒しとしてちょーだい扱わらるるんじゃからな(白鳥殿の元には返せん。お前はここでずっと、俺の癒しとして扱われるんだからな)」
鬼賀之は、それが目的だった。鈴を物にすると言う目的だった。最初から、彼岸花など興味無かった。彼岸花に手を出せば彼女が動く。だからこそ毒性があるのを利用して鈴を釣った。だが、誤算だったのが、彼女がまさかナガレの元に行って助けを求めに行くとは思わなかった。けれども、それでも彼はお構い無しな行動を取った。
「嫌じゃあぁ!左様なの嫌じゃ!ながれにはなければ嫌!(嫌だあぁ!そんなの嫌だ!ナガレじゃなきゃ嫌!)」
「さふかさふか左様な重畳か。なら、くれてやる(そうかそうかそんなに嬉しいか。なら、くれてやる)」
「いやああああぁ!」
かのようなきゃつに!(こんな奴に!)
かのような外道に!(こんな外道に!)
処女、奪わらるる何と!(処女、奪われる何て!)
ながれにはなければ嫌(ナガレじゃなきゃ嫌)
ながれにはなければ…(ナガレじゃなきゃ…)
感じてる顔を見、彼は額から汗を流してニヤッとする。『いやっ!』。言葉は否定するも、『締め付けておるではないか。言葉とは裏腹に、体は、素直だぞ?息女』。そう言われたのが悔しかった。痛い方がマシなのに、素直になっていく自分が悔しくて、悔しくて、仕方が無かった。
ながれ。
ながれ!
ながれぇ!
お慕い垂き(愛してる)
ながれ…。
「あぁ………………ッ…ア……!」
最後に鈴は、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とし、唾液を垂れ流して腰を痙攣させてナガレを想いながら潮を吹き出し、射精は力強く、雄々しく、精液はどこまでも濃密だった。きっとそれは子宮の奥まで到達したはずだ。あるいは更にその奥まで。それは実に非の打ち所のない射精だった。
さようなら。
とこしえにながれを想う…(いつまでもナガレを想う…)
あれを最後に、鈴の姿を見なくなった。彼岸花を見る度に、彼女を想うナガレは、しゃがみ、触れた。
「………………………………………」
鈴…。
前髪の陰で表情を隠し、一節の涙を流して彼岸花にキスをする。
とこしえに、鈴を想う。
「父上!白玉ぜんざゐ(い)食べたゐ(い)!」
「先日も食べたに、また食べるとか京牙。(昨日も食べたのに、また食べるのか京牙)」
彼はとにかく甘い物が好きで、散歩をしているとおねだりしてくる。
「毎日とはいえ食せる!(毎日でも食べれる!)」
「ははは!」
そんな話しをして歩いていると、川沿いに咲く、一輪の彼岸花。目の前にしゃがんで触れているのは、ブロンドの短い髪の女だ。赤いモダン柄の黒い着物を身に付けており、顔が良く見えない。
「父上!彼岸花じゃ!息吸うな!毒じゃ!(父ちゃん彼岸花だ!息吸うな!毒だ!)」
この時代、彼岸花は毒性があると恐れられていた。それは誰もが知っており、子供たちを育てる親はとにかく彼岸花に毒性がある事を言わなければならない時代だった。だが、何故そんな毒性のある彼岸花の前にしゃがみ込んで、触れているのだろうか。
「あぁ?おう…」
あの子。
良く見掛けるんだよな。
「父上早う!(父ちゃん早く!)」
「ん?あ、おう」
父親の手を引っ張って早く彼岸花から遠ざかろうと走る息子に対し、自分の方が体重が重いので中々早く進んでくれない。
「………………………………………」
その時、ふと顔を向けた。その女は、一度見たらずっと残る蠱惑的な美貌の主であり、この街では一番の美少女として有名な、鈴だ。とても綺麗だった。彼岸花を愛でている変わった一面を持っているが、とても凛としていて、座る姿も美しい。暫く息を止めたままその直ぐ先の橋を歩いて向こう側に渡る。
「ぶはああぁ!はぁはぁ」
息を止めていた京牙は、深く息を吐く。呼吸が出来る有り難みを、また知る事になる。
「おゐおゐ長らく息止めておったら死ぬぞ?(おいおい長く息止めてたら死ぬぞ?)」
マイペースで、叱っているのだがとても優しい口調で言うなり
「毒性がござるとは母上に教わった!父上は切迫感が全くござらん!(毒性があるって母ちゃんに教わった!父ちゃんは危機感が全く無い!)」
逆に息子に叱られてしまった。
「とはいえあの子、触とはた。(けどあの子、触ってたよ?)」
「あの女は彼岸花の毒を吸ゐ続けたせゐにておかしいとおなっとんじゃ!父上白玉食べに参ろう?(あの女は彼岸花の毒を吸い続けたせいでおかしくなってるんだ!父ちゃん白玉食べに行こう?)」
「おう!」
彼岸花の毒性。
本当にそうなのか?
半信半疑だが、確かにあの子はとても変わっている。何せ、毒性のある彼岸花に触れていたのだから。
「やーだーだー!あの子また!(やだ!あの子また!)」
「変わった子で候ね?(変わった子よね?)」
「近居られたらこっちもおかしくなっちゃうわで候?(近付いたらこっちもおかしくなっちゃうわよ?)」
街の女たちには、変わり者扱いされていた。色々な噂話がまた広がっていく。
「………………………………………」
鈴は、その場から立ち去り、森へと入っていった。ザッザッザッザッザッザッと、豊かな道を歩き、その先には温泉が。彼女は、着物を脱いだ。美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になり、チャポッと、なかなかお目にかかれない綺麗な形のほっそりした脚を入れ、更に片方の脚も入れて浸かる。
「ふぅ」
体に溜まった疲れが滲み出てくる。街に居るのは退屈だ。色々と言われるから。この時間帯が、とても至福。チチチチチ。チュンチュン。小鳥の囀り。温泉に入りながら、癒しを得る。やがて、バシャッと立ち上がった。濡れたふっくらとした形の綺麗な大きな胸や、ムチッとしたピンク色の愛らしい乳首から滴る水滴。濡れた瑞々しい貝殻骨の浮いて見える綺麗な背中や、欲望を唆らせる引き締まった濡れた尻。男を知らない彼女の体は、とても綺麗だ。
その夜。
「父上はらへりじゃ~!(父ちゃん腹減った~!)」
「待たれよろ。おっとーが美味い塩結び握とはやるからな(待ってろよ。父ちゃんが美味しい塩結び握ってやるからな)」
囲炉裏に胡座をかいて駄々こねる京牙と、玄関先にある釜戸に網を乗せて魚を2匹、竹筒で火加減を見ながら息を吐き込む。全然おにぎりとは関係無い。
「父上囲炉裏がござるんじゃからここにて魚焼けば良きにはんか~!(父ちゃん囲炉裏があるんだからここで魚焼けば良いじゃんか~!)」
囲炉裏の方も薪が焚かれて火が燃えている。
「あっ!ははははは!あぁ~うつけ者したでござる!ではそっちにて雑炊こしらえる!(バカした!じゃあそっちで雑炊作る!)」
「今から~!?」
その時、ガタタン!と言う戸が揺れる音がし、彼は顔を向けた。
「何事じゃ?(何だ?)」
「何?」
ダンダンダン!と、戸を乱暴にノックする音が。
「京牙。奥に行とはろ(京牙。奥に行ってろ)」
京牙は言われた通り奥に行き、彼は、結び帯の横に装着している小刀を手にして立ち上がり、ガタッ!と戸を引いた。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
「!!!!!!!!!!?」
脚元に倒れるのは、鈴の姿が。
「おゐ!よきか!?しかとしろ!(おい!平気か?しっかりしろ!)」
しゃがみ、彼女に触れて声を掛ける。
「た、助けてくれ…」
瞳を揺らし、助けを求める鈴は、停電したようにプッツリと、意識を失なってしまう。
「おい!」
ナガレは、軽々と彼女をお姫様抱っこして家に入り、戸を閉めた。やがて、ふと、目を覚ました。
「父上!この女絶対に毒吸ゐ過ぎたんでござる!何時も彼岸花触っとるし!(父ちゃん!この女絶対に毒吸い過ぎたんだ!いつも彼岸花触ってるし!)」
梁の屋根が、視界がぼやけながらも見えた。自分は、仰向けになっているようだ。
「京牙。よろず彼岸花のせゐにすんにはござらんの!はらへりにて倒れておったやもしれぬ(京牙。何でも彼岸花のせいにするのはよせ!腹減って倒れたかもしれないだろう?)」
「父上其れはあり得ないで候!(父ちゃんはそれはないよ!)」
「なににて決め付けるのか?電波の無きなりしが全部彼岸花にすんにはござらんの!(何でそう決め付けるのよ?電波が無いのも彼岸花のせいにするな!)」
「この時代電波なにかござらんで候!(この時代電波何かないよ!)」
ふと顔を向けると、大人の背中が見えた。囲炉裏を囲んで座って、串に刺さった鮎を食べており、京牙も胡座をかいて座ってバリバリ食べていた。
「うわぁ!眼覚ましたでござる!(うわぁ!目覚ました!)」
「せっしゃ起きてるで候長らく!(俺ずっと起きてただろう?)」
「否!女でござる!(違う!女だよ!)」
「?」
振り返り見ると、目が合った。
「あっ!気付おりきか?(あっ!気付いたか?)」
「!!!!!!!!!!?」
ガバッ!と上体を起こした途端
「ぐっ!うぅ!」
余分の脂肪の無い痩せて凹んだ腹部を抑えて前に倒れる。
「おゐおゐ無理するでござるな!(おいおい無理するな)」
囲炉裏の炭に突き刺し、彼女に触れて優しく押し倒す。
「何ぞあったでござるんじゃ?(何があったんだ?)」
「父上触るな!毒が!(父ちゃん触るな!毒が!)」
「偏見はで候せ!人を毒扱ゐすんな。彼岸花であろう?毒性があんのは(偏見はよせ!人を毒扱いするな!彼岸花だろう?毒性があんのは)」
子を叱り付けてから、彼女に顔を向ける。
「ひい応処置はしたでござる。脚うながひどく腫れておったから、包帯を巻おりき(一応処置はした。脚首がかなり腫れてたから、包帯を巻いた)」
何があったか知らないが、捻挫をしていたので包帯して処置をしたようだ。
「辱い」
瞳を揺らし、顔を逸らす。
「何ぞあったでござるんじゃ?(何があったんだ?)」
「………………………………………」
鈴は、顔を逸らしたまま黙り込んでしまう。
「いずれ話してちょーだいで候(いつか話してよ)」
その時、ドンドンドンドンと、戸をノックされる音。
「白鳥!白鳥殿は不在か?」
それは男の声であり、その声を聞いた途端、彼女の顔色が変わり、上体を起こす。
「!!!!!!!!!!?」
「何程かの用じゃ?(何の用だ?)」
彼は立ち上がるなり、ナガレの長くて細い脚にしがみついた。
「?」
「庇ってくれ。頼む…(庇とはくれ。頼む…)」
その時、彼は何かを悟った。
「京牙。女を庇ゑ(京牙。女を庇え)」
「えぇ!?俺が!?(ゑぇ!?それがしが!?)」
「早う!(早く!)」
すると京牙は、毒性のあるこの女を父の命令により、嫌々ながら歩き出せば、彼女は這って付いて行き、台所に行けば、ガバン!と、真四角に開く地面。収納スペースだったようで、地面と同化しているあまり気付かなかった。
「白鳥殿!」
「御意御意!今出候!お待ち下され!(はいはい!今出ます!お待ち下さい!)」
玄関に出、ガタガタと戸を開ける。
「かたじけない!いつぞや戸の調子が悪しきもとでござるから(すいません!最近戸の調子が悪いものですから)」
そこに立っていたのは3人の警官だ。しかも一人は、警察の中でもトップに立つ40代後半程の高身長の男性。鬼賀之仁導。元軍隊の中尉。
「いかがも!白鳥殿!余分遅くにすまなゐねぇ。食事中でござったかの?(どうも!白鳥くん!余分遅くにスマないねぇ。食事中だったかな?)」
「嗚呼。とはいえ、全然心配御無用でござるよ?なにかあり申したか?(あぁ。でも、全然大丈夫ですよ?何かありましたか?)」
「先程、彼岸花の撤去作業を行おうと致した際に、女が妨害してちょーだい来ましてほしいで候。その女を捕まゑて処刑つかまつる探致し候んなれど、見掛けたら、教ゑて下さらなゐか?金髪の、街ひい番の美おぼこ、愛道鈴を(先程、彼岸花の撤去作業を行おうとした際に、女が妨害して来ましてね。その女を捕まえて処刑する為に探しているんだが、見掛けたら、教えて下さらないか?金髪の、街一番の美少女、愛道鈴を)」
顔を知らない人は居ない。彼女はとても有名な街一の美少女。警察官から逃げて来たようだ。その時、収納スペースに身隠れしている鈴は、その声と会話を聞き、震えていた。
「………………………………………」
息を殺すのに必死だ。少しでも声を上げたら、自分だけでなく白鳥親子も殺されてしまい兼ねない。彼女は、自分の手で口を塞ぐ。
「さふでござったか。ござるが何ゆえに彼岸花の撤去を?毒性がござるからでござるか?(そうでしたか。ですが何故彼岸花の撤去を?毒性があるからですか?)」
ここで彼は言い方に失敗した。女を庇っているので、女に触れるのを避けてしまった。これは人間の心理であり、隠し事をしている人は必ず避ける。
「ゑぇ。毒性がござるものを街に放てる訳に御意かなゐからな?(えぇ。毒性があるものを街に放てる訳にはいかないからな?)」
「相手はおかしくなった女でござる。捕まゑるにしてちょーだいもお油断せぬやう(相手はおかしくなった女です。捕まえるにしてもお気を付けて)」
「お魂遣ゐありがたき幸せ白鳥殿。まぁまた、會うとは思うておるんなれどな?(お心遣いありがとう白鳥くん。まぁまた、会うとは思うんだがな?)」
彼は、笑みを浮かべてそう口にした。ナガレは、自分を保つのに精一杯だった。少しでも油断したら、鬼賀之に見透かされそうだ。だが、彼は分かっている気がする。だから隠すのも必死になるが、変に隠し続けるのも怪しまれる。彼は、いつものように接する。その後ろで、囲炉裏に胡座をかいて座る京牙は、どこか動揺をしてしまい、目が泳いでいた。それを、鬼賀之は見過ごさなかった。
「京牙くぅん。お邪魔するぞよぉ(京牙くぅん。お邪魔するよぉ)」
靴を脱ぎ、囲炉裏に上がって近付き、片方の膝を付く。だが、ナガレは動かなかった。2人の若い警察官がおり、マークされているような気分だ。
「京牙。ご挨拶は?」
「ご、ご機嫌いかがでござるか(こ、こんばんは)」
瞳を揺らし、床に爪を立てる。怖かった。何だか、今まで見て来た中で、違うオーラが放たれており、それがとても恐ろしく、恐怖だった。
「良き子じゃねぇ。京牙くんは(良い子だねぇ。京牙くんは)」
彼は、頭の上に手を置いた。ナガレとは違った手の大きさと厚さ。何だかとても硬い。その温もりに、子供ながら愛を感じられなかった。
「父上と母上のお陰にて、良き子に育ちましたでござる。(父ちゃんと母ちゃんのお陰で、良い子に育ちました)」
8歳とは思えない発言に、父親としてナガレはニヤッとする。
「天晴は白鳥めをとのわらしじゃ。気品がござる。お主が未だ小さゐ頃、良くおじ殿と遊みておりきんじゃぞ?覚ゑてるかの?(さすがは白鳥夫妻の子供だ。気品がある。君がまだ小さい頃、良くおじさんと遊んでいたんだぞ?覚えてるかな?)」
鬼賀之は、近所に住んでいて良く遊んでいた。
「父上そうなのでござるか?それがし、覚ゑてなゐ(父ちゃんそうなの?俺、覚えてない)」
「ははは!覚ゑてござらぬても無理はござらんさ。京牙殿(覚えてなくても無理は無いさ。京牙くん)」
「貴様が未だ参歳くらゐの頃でござったかの?鬼賀之殿には良くお馬さんごっこしてもらふたとはたんじゃぞ?(お前がまだ3歳くらいの頃だったかな?鬼賀之殿には良くお馬さんごっこして遊んでもらってたんだぞ?)」
それは彼がまだ3歳くらいの時のようだ。それは、記憶に無くても不思議では無いし、おかしくは無い。幼すぎる。
「そうでござったか!かたじけない!それがし、覚ゑてのうこざった(そうだったんだ!ごめんなさい。俺、覚えてなかった)
「良きんでござる良きんでござる。また戯れよう?京牙殿(良いんだよ良いんだよ。また遊ぼう?京牙くん)」
「うん!」
コクッと頷き、それだけで心が開いた気がし、笑みを浮かべた。もう、少しの危機感と緊張感は無い。
「夜分遅くに邪魔をしたでござる(夜分遅くに邪魔をした)」
やがて、彼は家から出た。
「否。また戯れに来て下され(いいえ。また遊びに来て下さい)」
「にてはまた(ではまた)」
そして、3人で歩いて離れ、彼は戸を閉め深く息を吐き出した。
「はああああぁ~」
体から緊張感が抜け、座り込んでしまう。
「父上!平気!?(父ちゃん!平気!?)」
立ち上がって走り駆け寄る。
「あはは!平気でござる京牙。辱い。魂配してちょーだいくれて(平気だよ京牙。ありがとう。心配してくれて)」
そして立ち上がると、彼は収納スペースをガコンと開き、両膝を付いて両手を差し出した際、鈴はその腕を掴み、グイッと引っ張ればお姫様抱っこした。
「まふ平気じゃ。何奴も来なゐ。平穏しろ(もう平気だ。誰も来ない。安心しろ)」
「それがしのせゐにて、お主たち親子を危険に晒す訳に御意かぬ。か以って上、迷惑千万は掛けれぬ(オレのせいで、あなたたち親子を危険に晒す訳にはいかぬ。これ以上、迷惑は掛けられん)」
「なにれにしてちょーだいも、その脚にて外は歩けぬ。暫くは庇う。ここに居ろ(何れにしても、その脚で外は歩けぬ。暫くは庇う。ここに居ろ)」
「なれど…(しかし…)」
「父上の申す事聞け!せっしゃ貴様を庇ゐ立てしたうなゐなれど、処刑されるでござるのは嫌じゃ!(父ちゃんの言う事聞け!俺はお前を庇い立てしとうないけど、処刑されるのは嫌じゃ!)」
その近くで言い放つ京牙は、鈴に対しての考え方が変わった。処刑にされてしまう運命の女を、庇わない訳にはいかない。この、若い女に待ち受けているその運命はあまりにも重た過ぎる。彼は、父と共に庇う事を決意した。
「辱い。かのような幼子にも…。すまぬ(ありがとう。こんな幼子にも…。すまぬ)」
そして、この家で過ごす事に。布団の上で仰向けになる鈴の枕元には水が入ったタライと白いタオルが。彼女は上体を起こし、肩から開(はだ)けさせ、着物を腰まで下ろして上半身裸になる。
「鈴殿!」
襖をスーッと引き
「床に就いたにてござるか?(寝たでござるか?)」
彼女は顔を向けるなり、ぷるんとふっくらとした形の綺麗な大きな胸が揺れ、彼は、カアァッと、若い子の裸を目にして顔が熟れすぎたトマトみたいな色になり、開いた口が閉じない。
「!!!!!!!!!!?」
てかそもそも寝てる人にこの声の大きさで話し掛けてきたらその声で起きてしまうだろうに。
「あっ!乳房だ!乳房出しておる!(あっ!お×ぱいだ!お×ぱい出してる!)」
「わらしは寝てろ!拝見するな!(子供は寝てろ!見るな!)」
スパーン!と閉じ、親子揃ってうるさい。
「………………………………………」
愉快である、親子じゃな(楽しい、親子だな)。
翌日。
歯を磨くナガレと京牙は、外の井戸の前に立っており、柄杓で水を口に含んで濯ぎ、地面に吐き出す。
「父上寺子屋行って参る!(父ちゃん学校行ってくる!)」
「おう!御武運を!(おう!行ってらっしゃい!)」
走って行く息子を見送り、彼は中に入り戸を閉める。草履を脱ぎ、囲炉裏に上がり、その隣の襖を開ける。
「スースー」
布団の上で仰向けになる鈴は、眠っていた。疲れたのであろう。警察に追われて怖い思いをしながらも逃げて来たんだ。
「………………………………………」
ナガレはソッと、閉めた。近くの畑で野菜を収穫し、それをリヤカーに積んで売りに行く。それが、彼の仕事。
「畑にて収穫した新鮮な野菜でござる!買とはて買とはて!(畑で収穫したばかりの新鮮な野菜だよ!買ってて買ってて!)」
「人参参本下されな(人参3本下さいな)」
「大根を弐本(大根を2本)」
「茄子を伍本貰おうかね?(ナスを5本貰おうかね?)」
「巻き葉野菜壱つと人参参本。大根を弐本下されな(キャベツ1つと人参3本。大根を2本下さいな)」
「あゐで候!毎度あり!毎度!(あいよ!毎度あり!毎度!)」
野菜に集る主婦たち。野菜は売れる。それを安く売っているのでとにかく売れ行きが早い。そんな中、ふと、鈴は目を覚ました。
『ここに居たとか女(ここに居たのか女)』
『!!!!!!!!!!?』
周りに立つのは警察と、鬼賀之だ。
『連れてゆけ(連れて行け)』
『はっ!』
2人の警察官が彼女の腕を掴んで立たせせるなり
『いやぁ!』
鈴は抵抗し、着物を脱いで裸になりながらも走って逃げる。
『追ゑ!逃すな!処刑にしろ!(追え!逃すな!処刑にしろ!)』
走ってくる警察官と、魔の手。追い付かれた鈴の腕を掴んで後ろ手にして手枷をし、口には猿轡を嵌めさせられ、手で目を遮蔽する。
『んぅ!ん…………………ッ!』
唾液を垂れ流し、涙を流す。
助けて!
母上!
「うわあああああぁ!!」
「しかとしろ!鈴殿しかとしろ!(しっかりしろ!鈴殿しっかりしろ!)
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
目を見張り、叫んでいた彼女の肩を掴んで揺さぶるナガレは、仕事から帰って来たばかりであり、ひどく魘されていた為揺さぶり起こしたようだ。
「ひどく魘されてござった。平穏しろ。何奴も来なゐ。平気じゃ。鈴殿(ひどく魘されていた。安心しろ。誰も来ない。平気だ。鈴殿)」
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」
瞳を揺らし、額から汗が滴る。
「湯に浸かると良い。今、湯を焚く(風呂に浸かるが良い。今、風呂を焚く)」
「はぁはぁはぁはぁはぁ辱い。白鳥殿」
彼女は常に、怯えていた。警察官たちに。ナガレは、薪を焚べてカチカチと石と石を擦って火を付け、竹筒を手に火加減を見ながら五右衛門風呂の湯を焚く。
「かのようなもんかの?(こんなもんかな?)」
立ち上がり、彼女を呼びに行く。
「鈴殿。湯が焚けたでござる。(鈴殿。風呂が焚けた)」
スーッと引くなり、彼は軽々と鈴をお姫様抱っこして風呂場へと向かう。
「良いのに」
「何ぞ?(何が?)」
「抱かござらぬても歩けると申すに(抱かなくても歩けると言うのに)」
一々お姫様抱っこをされて移動するので、彼女は恥ずかしくて仕方が無いようだ。
「その脚にては歩けん。辛抱しろ(その脚では歩けん。我慢しろ)」
それを、ニヤッとしながら言われ、鈴は下唇を噛み締め頬が染まる。
「良いと申すに(良いと言うのに)」
「良きか良きか(良いじゃんか良いじゃんか)」
包帯を外し、後は自分で服を脱ぎ、美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になり、五右衛門風呂に浸かる。そんな中彼は、布で目を遮蔽して竹筒を手に拭き続ける。
「湯加減はいかがじゃ?(湯加減はどうだ?)」
「丁度良き(丁度良い)」
ナガレは、吹くのを止めた。
「白鳥殿。昨夜分のあの男とは、仲が良いうにて(昨夜のあの男とは、仲が良いようで)
鬼賀之の事であろう。隠れていたが、会話は筒抜けだった。
「鬼賀之殿は古、近所に住みてた男にて、京牙と良く遊みてくれておりきんじゃ。なれどせっしゃ、鈴殿を売るごとき行為はひい切致さぬ。平穏してちょーだい、ここに居ろ(鬼賀之殿は昔、近所に住んでた男で、京牙と良く遊んでくれていたんだ。だが俺は、鈴殿を売るような行為は一切しない。安心して、ここに居ろ)」
彼は、そうやって仲良かった人であっても、決して売るような行為はしない。彼女の瞳が揺れ、こう口にした。
「それがしは白鳥殿を信ずる(オレは白鳥殿を信じる)」
彼は、笑みを浮かべた。やがて風呂から上がり、タオルで体と髪の毛を拭き、やがて着物を身に付けて布団に座り、ナガレは包帯を巻く。
「辱い。世話になりっ放しにてかたじけない(世話になりっ放しで申し訳無い)」
「良きんじゃ良きんじゃ。迷惑千万掛けてくれ(良いんだ良いんだ。迷惑ばかり掛けてくれ)」
「………………………………………」
その、彼の優しさに瞳を揺らし、頬を染める。
「其れにて、鈴殿は歳幾つじゃ?(それより、鈴殿は歳いくつだ?)」
「参十八じゃ(38だ)」
「参十八ぃ!?」
それを聞いて驚愕のあまり目を見張り、声が大きくなってしまう。
「冗談じゃ(冗談だ)」
「ござるよなぁ!?たまげた~。おゐふざけんなで候(だよなぁ!?びっくりした~。おいふざけんなよ)」
彼は笑い出し、常に真顔な彼女の口元が緩み、ほんの少しだが、笑みを浮かべる。
「誠は幾つじゃ?(本当はいくつだ?)」
「十六じゃ(16だ)」
僅か16で、処刑の運命が決められている。こんな若い子の命を、放ってはおけない。
「であると思った(だと思った)」
「白鳥殿。庇とはもらっておる身じゃ。礼がしたいでござる(庇ってもらってる身だ。礼がしたい)」
迷惑を掛けているので、お礼がしたい気持ちはある。だが、ナガレはこう口にした。
「要らぬ。善人にて庇っとるんじゃ。左様な事、存念無くて良き。ただに、ここに居てさゑくれらば良きんじゃ。警察が収まる迄は、外に出なゐ事を勧める(必要ない。善人で庇ってるんだ。そんな事、考え無くて良い。ただ、ここに居てさえくれれば良いんだ。警察が収まるまでは、外に出ない事を勧める)」
「さふ云ゑば、白鳥殿は父上屋敷庭だか?(そう言えば、白鳥殿は父子家庭なのか?)」
確かに昨日から母親の姿は見えない。考えられるとしたらそうなので聞くと、彼の瞳が揺れ、懐かしげに語る。
「伍年前に、正室が病死し他界したでござるんじゃ。暫く手筈っと、『母上母上』泣ゐてて。それがしもいかがすらば良きか分からござらぬてな。それがしが京牙を守る必定がござる。強く無くてはいけないであろう。御父上としてちょーだい、男としてちょーだい。じゃからせっしゃ、鈴殿を守る。生きておる鈴殿の命を。(5年前に、妻が病死して他界したんだ。暫くはずっと、『母ちゃん母ちゃん』泣いてて。俺もどうすれば良いか分からなくてな。俺が京牙を守る必要がある。強く無くてはいけない。父親としても、男としても。だから俺は、鈴殿を守る。生きている鈴殿の命を)」
命の有り難みを、妻で知った。だから、生きている鈴を、白鳥親子が危険な目に遭うかもしれない。死と隣り合わせになっているが、彼女を庇うのは、命の尊さを知ったからだ。
「…………………白鳥殿」
鈴は、ナガレの腕を掴んだ。
「辛ゐ事を思ゐ出しめてしまゐ、申し訳無かった。代わりに、それがしが白鳥殿の奥方としてちょーだい、それがしを扱とはくれ(辛い事を思い出させてしまい、申し訳無かった。代わりに、オレが白鳥殿の妻として、オレを扱ってくれ)」
「なに!鈴殿が正室として(何!?鈴殿が妻として!?)」
「如何にとはするでござる!庇とはもらっておる身じゃ。白鳥殿に聞き従う。屋敷事もするでござる。御身を売れと申したら白鳥殿に売る。如何にとはするでござる。それがしを、使ひてくれ(何だってする!庇ってもらってる身だ。白鳥殿に聞き従う。家事もする。体を売れと言ったら白鳥殿に売る。何だってする。オレを、使ってくれ)」
彼女は、本気だった。彼の瞳が揺れ、こんな若くて可愛い子をどう扱えば良いか分からなかった。
「白鳥殿を、癒す事じゃとはするでござる(癒す事だってする)」
すると、ナガレの結び帯を解くなり、着物が脱げ、筋肉で引き締まった裸体に。
「!!!!!!!!!!?」
その、人並み外れて大きな男根を目に、目を、見張る。
何と、大きさ(何て、大きさ)
「待たれよ待たれよ待たれよ待たれよ!候せ!止めろ!己の御身を大切にしろ!(待て待て待て待て!よせ!止めろ!自分の体を大切にしろ!)」
そして、鈴も着物を脱ぎ、裸体になった。
「白鳥殿。それがしは、白鳥殿の為なら、如何にとは…(白鳥殿。オレは、白鳥殿の為なら、何だって…)
その上に覆い被さり、彼を押し倒した。
白鳥殿…。
授業が終わり、寺子屋から京牙が出て来た。走る息子を、木の陰から覗くのは鬼賀之だ。
「………………………………………」
悪しきが、それがしの眼を誤魔化す事は出来んぞ?(悪いが、俺の目を誤魔化す事は出来んぞ?)
そして彼は後を追う。
「………………………………………」
鈴は、座ったまま一言も発さなかった。
「鈴殿のこころもちは伝わった。感謝するでござる!じゃから、己の御身を大切にしてちょーだいくれ!分かるのう?それがしのこころもち!(鈴殿の気持ちは伝わった。感謝する!だから、自分の体を大切にしてくれ!分かるよな?俺の気持ち!)」
若ゐ子に抱かるる所でござった!(若い子に抱かれる所だった!)
危うい所じゃった!(危ない所だった!)
純粋で、純情そうに見えて、実はとても大胆な子であるのを知り、ナガレは必死になって説得させる。互いに裸体のまま。
「鈴殿。取り敢ゑず着物着やう(取り敢えず着物着よう)」
「すまぬ白鳥殿。気合が入りすぎてしもうた(すまぬ白鳥殿。気合いが入り過ぎてしまった)」
着物を手にして身に付け、彼も身に付ける。
「………………………………………」
良かった。分かとはくれて(良かった。分かってくれて)
ホッとしたのも束の間。
「父上~!(父ちゃ~ん!)」
京牙の呼び叫ぶ声が。
「京牙!!」
彼は立ち上がって走り、玄関の戸を開けた途端
「ぐっ!ゔっ!」
刺股で首を押さえ付けられ、そのままドサッと倒れる。
「父上!(父ちゃん!)」
京牙を押さえ付けているのは鬼賀之だ。
「き、鬼賀之殿!」
「がさいれ」
すると、警察官が2人入って来るなり、鈴を見付け出した。
「いやぁ!」
「女を確保候成り!(女を確保しました!)」
「連れてゆくぞ!(連れて行くぞ!)」
「待たれよ下され!彼女の話しも聞ゐてあげて下され!(待って下さい!彼女の話しも聞いてあげて下さい!)」
その時、彼は腕を伸ばすとナガレのアゴを掴んで顔を向けさせた。
「ぐ、うぅ!」
「父上!(父ちゃん!)」
「元来なら、貴様のせがれ共々、犯罪者を庇ゐ立てするでござる事は死に値する事じゃ。彼岸花の毒性はいと天下無双んじゃ。実際に彼岸花の香りを吸ゐ過ぎて、亡くなった人がゐる。其れを放とはおけば、死に至らしめるんじゃ(本来なら、お前の息子共々、犯罪者を庇い立てする事は死に値する事だ。彼岸花の毒性はとても強いんだ。実際に彼岸花の香りを吸い過ぎて、亡くなった人がいる。それを放っておけば、死に至らせるんだ)」
彼の瞳が揺れ、彼岸花にそんな毒性があるとは全く信じていなかった。だが現に、亡くなっている人が居る。それも、知らなかった。
「まぁ、白鳥殿は古からの良き仲じゃからな。処罰は致さぬが、息女は頂戴いたす(まぁ、白鳥殿は昔からの良き仲だからな。処罰はしないが、娘は貰っていく)」
すると警察は離すと、鈴を連れて2人の警察が出て来た。
「鈴殿!」
立ち上がった際、彼女は一筋の涙を流しており、鈴は、唇に唇を、押し当てた。その時、鬼賀之は気遣って、京牙の目に手で覆う。やがて、ソッと離れこう、口にした。
「違った形にて、愛したかった(違った形で、愛したかった)」
「!!!!!!!!!!?」
「ゆくぞ?」
京牙を離し、彼はナガレに抱き付く。
「かたじけない父上!それがしのせゐにて、あの子が(ごめん父ちゃん!俺のせいで、あの子が)」
責任を感じ、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とす。
「お前のせゐではない。全然お前のせゐではない(お前のせいじゃない。全然お前のせいじゃない)」
鈴!
せっしゃほらを吐おりき(俺は嘘を吐いた)
守ると約束したでござるに!(守ると約束したのに!)
生きてくれ!
鈴!
そんな中彼女は布団の上に仰向けになって、首輪を嵌められ、黒い布で目を遮蔽され、後ろ手にされて縄で華奢なくびれた両手首から肘に掛けて縛り付けられており、美しく、生命感に溢れ、清潔で、セクシーな裸体姿になって、なかなかお目にかかれない綺麗な形のほっそりした脚をM字開脚させられ、膝と脚首を2本の縄で縛られて固定されている。
「絶景絶景!」
鬼賀之は上半身裸になっており、その上に覆い被さる。
「いやぁ!いやっ!」
ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とし、抵抗して叫ぶ。
「ひいつ聞かせてくれ。何ゆえに貴様は彼岸花を愛すんじゃ?毒性のあるでござるものを慕うなど、貴様はそれがしと似ておる。親近感が湧ゐておるのはそれがしのみにてか?(一つ聞かせてくれ。何故お前は彼岸花を愛すんだ?毒性のあるものを愛するなど、お前は俺と似ている。親近感が湧いているのは俺だけか?)」
「母上は、彼岸花を愛にてておりき!なれど、彼岸花には毒性なにかなゐ!母上殿上は病にて亡くなった!彼岸花のせゐではない!拙者は、母上が首ったけな彼岸花を、同じこころもちにて好きなのみにてだ!彼岸花に毒性なにかござらん!信じてで候!(母上は、彼岸花を愛でていた!けど、彼岸花には毒性何かない!母上は病気で亡くなった!彼岸花のせいじゃない!私は、母上が大好きな彼岸花を、同じ気持ちで好きなだけなの!彼岸花に毒性何か無い!信じてよ!)」
彼岸花を愛していたのは確かだ。だが、彼岸花を愛ですぎで亡くなったと噂が、まるで感染症のように広まり、彼岸花には毒性があると言う考えが植え付けられた。
「ほぉ。亡き母上の為に、彼岸花を守とは参ったと申す訳か。めるへんな息女じゃ(ほぉ。亡き母の為に、彼岸花を守って来たと言う訳か。メルヘンな娘だ)」
「お願ゐ!釈放してちょーだい!(お願い!釈放して!)」
そうなったら事実だ。釈放を求めるのが当たり前。自分は処刑にされる必要の無い人物であり、無実だ。なのでそう言ったのだが、彼は、違う目的を持っていた。
「白鳥殿の元には返せん。貴様はここにて長らく、それがしの癒しとしてちょーだい扱わらるるんじゃからな(白鳥殿の元には返せん。お前はここでずっと、俺の癒しとして扱われるんだからな)」
鬼賀之は、それが目的だった。鈴を物にすると言う目的だった。最初から、彼岸花など興味無かった。彼岸花に手を出せば彼女が動く。だからこそ毒性があるのを利用して鈴を釣った。だが、誤算だったのが、彼女がまさかナガレの元に行って助けを求めに行くとは思わなかった。けれども、それでも彼はお構い無しな行動を取った。
「嫌じゃあぁ!左様なの嫌じゃ!ながれにはなければ嫌!(嫌だあぁ!そんなの嫌だ!ナガレじゃなきゃ嫌!)」
「さふかさふか左様な重畳か。なら、くれてやる(そうかそうかそんなに嬉しいか。なら、くれてやる)」
「いやああああぁ!」
かのようなきゃつに!(こんな奴に!)
かのような外道に!(こんな外道に!)
処女、奪わらるる何と!(処女、奪われる何て!)
ながれにはなければ嫌(ナガレじゃなきゃ嫌)
ながれにはなければ…(ナガレじゃなきゃ…)
感じてる顔を見、彼は額から汗を流してニヤッとする。『いやっ!』。言葉は否定するも、『締め付けておるではないか。言葉とは裏腹に、体は、素直だぞ?息女』。そう言われたのが悔しかった。痛い方がマシなのに、素直になっていく自分が悔しくて、悔しくて、仕方が無かった。
ながれ。
ながれ!
ながれぇ!
お慕い垂き(愛してる)
ながれ…。
「あぁ………………ッ…ア……!」
最後に鈴は、ぼろぼろと大きい雨粒のような涙を落とし、唾液を垂れ流して腰を痙攣させてナガレを想いながら潮を吹き出し、射精は力強く、雄々しく、精液はどこまでも濃密だった。きっとそれは子宮の奥まで到達したはずだ。あるいは更にその奥まで。それは実に非の打ち所のない射精だった。
さようなら。
とこしえにながれを想う…(いつまでもナガレを想う…)
あれを最後に、鈴の姿を見なくなった。彼岸花を見る度に、彼女を想うナガレは、しゃがみ、触れた。
「………………………………………」
鈴…。
前髪の陰で表情を隠し、一節の涙を流して彼岸花にキスをする。
とこしえに、鈴を想う。
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