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しおりを挟む俺が女神に提案したい案件。
「時間軸の変更」が可能なら、これからの冒険がずっと楽しくなるのです。
出発地点で時間軸を……つまり、
出会った駒次郎たちには、少年期と幼年期があったよな。
登場した名称なら選択肢はある筈だと、ピンとひらめいたのだ。
女神はたしか、どこにでも行けるので昭和から江戸時代に来れたんだ。
時間軸とはまさにこれだ。
同じ時代の中でも、これを選べるのであれば幼年期の長屋へも行く価値は十分にあると思っている。
しかも子供ならまだそんなに手強くはない。
時間軸を駒次郎の幼年期とするだけで、どの場所も違った景色になるはず。
そこで俺だけ幼年に成らずに済めば。
希望としては、俺はこのまま少年忍者サスケのジョブで行きたいんだが。
「……可能でしょうか」
女神が怪訝そうな顔を……していない。
これは楽しみ。
『その者の幼年期へ冒険の舞台を移すのは容易いことだが、後者はムリだな。
仮に駒次郎が五歳なら、その世界では四歳のサスケしか存在しないからな。
中身がグンでも、お前は幼少のサスケに成ることになる』
かああ、そう来たか。
まあそういうことだろうな。
だが前者は可能なんだな。うっはぁー。
俺、死んだ甲斐があったな。
いまの駒次郎さえ回避できればという話では、出会ったらまた終わるかも。
かと言って、あいつらのポイントは高い。
他者の窮地がより険しいほどptが跳ねあがる。喜びと感謝がptに変換されるのだから。
なにも、関わらない選択肢を求めているのではない。
関わるタイミングを選びたいのだ。
ついでに過去を知ることもできるのが有難い。
別の者に代えたらこの差異を知ることが出来ず、その優越は得られない。
少年期にも戻って来るつもりだ。もちろん、次は死なずにクリアという形で。
その後の展開も有利に運べる気がしているので、同じジョブで同じ人物との出会いを望まなきゃな。
せっかく女神と知り合いなのだから、この特権を有効活用したいのだ。
よし、もう少し具体的にまとめて、より良い状態でログインできれば。
ツナセ界隈をこれまでより楽に攻略できるのではないか。
ポイントはリセットされたので、稼ぎ直しだけど。
何処から開始しても、人に寄り添っているなら人助けはできるし。
長屋へ行ったほうが人助けの面と、移動の自由度の面で有利かもしれない。
綱隠れの里は任務がないと外出がむずかしいという話だったし。
里が宿場近辺に入らないなら、ptを取得できないデメリットが生じる。
一度打診して見るか。
「関わりの観点から……幼少期の長屋から開始したいのですが。できれば駒次郎が誘拐される前の長屋で。ジョブは忍者のままで何とかならないですか?」
『お前はこう言いたいのだな?
信頼が足りぬから子供時代に接点を持ち、心の暴走の制御を試みたい、と』
「はい」
察してくださるのが有難いです。
『勝ち取れる保証はできないぞ。
それと──サスケで開始するには少々、幼過ぎる。
立ち回りの困難さがこの段階で判別できるものは却下される可能性があるのだ』
そう言いつつ、女神は「じっとしていろ」と俺の額に例の如く、右手をかざして来た。
なにか調べ事でもあるのかな。
30秒ほど経過した。
『おかしいな。
その時間軸の向こうの様子をスキャンして見たが──、
幼少期のサスケの姿が見当たらぬ』
えっ。
やっぱり対象外ということなのか。
それともツナセ界隈の外から、のちにやって来た人物だろうか。
俺もエンジンから閲覧しようとするが、俺の眼にはそのビジョンが映らない。
代わりにさっきのステータス表示が見えた。
あれ、最終ptが増えている?
おお!ラストバトル+220pt。俺の身を守る行為に貢献か。
1000ptの半分近く稼いでいたことには驚きがある。
『私から言えることは、忍者を変更すれば問題はないだろう』
変更か。
駒次郎がさらわれた現実が、凶と出ているわけだ。
おそらく女神は駒次郎のさらわれた先のことは教えてくれない。
俺の体験がその件に到達していないからな。
つまり忍者を変更するという選択肢なら、「幼少期の長屋+忍者」は通るのか。
祠の中であまり時間をかけていると、叱られそうだから。
忍者変更で手を打つか。
「その場合、駒次郎になりますか?」
女神は静かにうなずいた。
まさか幼少の駒次郎になろうとは。
だが盤次郎とお里には会えるな。悪くないな。
「それに決めたいと思いますが……」
『なんだ? おのれが暴走しそうで怖いのか?』
ためらった物言いをしたせいか、女神が的をついたことを言う。
確かにその不安要素もあるにはある。
だが俺のためらいの理由はべつにある。
それは失ったスキルポイントのことなのだ。
女神には残念だったと言われたが。
俺としてはあれだけの経験をしたのに、って思いがあるわけだ。
次も死んだら、また何も残らず再スタート。
それが堪らなく、虚しくて。
「……なんとかならないですか?」
悔しい気持ちを涙目で訴えた。
『私におねだりか?』
違うとは言えない俺は恐る恐る首を縦に振り、様子を見た。
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