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しおりを挟むゲーム開始早々。事件のようなものに遭遇した。
だが広い世の中だ、どこにでもありそうな出来事だろう。
より良いスキルの獲得には、クリア条件となる『人助け』が必要。
駒次郎を窮地から救ったことで、とりあえずの感謝の言葉を受けた。
これだけでもひとつの、「チャレンジクリア」と見なされているのか。
そんな時は、確認するのだったな。
駒次郎救済進行度+STオープン──【女神エンジン】。
ピピッ!
ST……更新あり。
☆ツナセ街道 ゴロツキと駒次郎
アクシデントにより、イベント発生。
『人助け』を意識下にクエスト受注を決定。
①クエスト受注:+005pt ②傷の手当:+020pt
③対象者の保護:+020pt ④敵の討伐:+100pt (ゴロツキ10人撃退)
①請け負う勇気に貢献 ②回復に貢献
③救助に貢献 ④戦闘に貢献
貢献度に応じてpt獲得
つぎのレベルまで:1000pt
現在取得ポイント:0145pt のこり:0855pt
対象者からの感謝の気持ちにより、集計結果更新。
フィールド:ツナセ街道~宿場町
主人公:グン 旅のお供:駒次郎
☆
「これは人助けの内訳か。貢献度が四種あって受注は俺の決意か。つぎのレベルはよくわからんけど、いま145ptで1000までにあと855が必要……たぶんスキルの獲得にじゃないかな。……あいつら一人10ptかよ。そんじゃ、コマさんとここで別れる手はないな。引き続き、pt稼ぎのために付き合うのがセオリーだろうな」
うん?
エンジンから状況確認をしていると駒次郎が後ろから声を発した。
「グンっ! ちょっと……待って、足が速すぎるよ」
「あ、ごめん。気付かなくて」
振り返ると彼が息を切らせながら、そう呟いていた。
俺の移動速度は人の三倍だった。
意識しないと常人は追い付けなくなる。
おかげでエンジン閲覧中の独り言を聞かれることはなかった。
歩行速度を彼にあわせて歩き出す。
「ところで、さっきの奴らはヤクザ者のようだったけど?」
「そうなんだ。おれの住んでる長屋に度々やって来る連中さ」
駒次郎は長屋暮しか。
貧困層のあるあるで借金でもしているのか。
込み入ったことは本人に聞ける範囲に留めなくては、ここで嫌われるわけにはいかない。貧乏人は家庭の事情を格好悪がって話したがらないからな。
「あんな奴らが、何しに来るの?」
「年貢が厳しくてな。長屋の仲間もみんな、借金があるんだけど、若い娘がいる家は借金の形に取られてしまうんだ」
陰惨な話題をわりと軽快に打ち明けて来た。
この時代、そのケースは身売りと呼ばれ、行き先は女郎屋と相場は決まっている。
まあ、俺が聞いたんだけど。
「それで、コマさんの所も家族を差し出したの?」
「いや、おれの家に女はおっ母だけだよ」
「そっか。じゃあ借金返済のために無理やり働かされていて、逃げてきたとか」
「そのほうがずっと気持ちが楽だったかもしれないよ」
彼からは悲壮感が漂う。
あんな連中を相手に何かしらの交渉を試みていたのは知っているし。
「心に想うだいじな人でも、取られましたか」
「……ッ!」
駒次郎の顔色をうかがいながら、ドラマに出てきそうなシーンをチョイスしてみると。
彼の瞳孔が開いた。
どうやら図星のようだ。
「おや、これは余計なこといってしまったかな」
俺が案ずると。
彼は首を軽く横にふって、そんなことはないと優しく口を開いてくれた。
「ただの幼馴染だと思っていた。けど連れて行かれる前夜になって、涙を溜めたお里から「ほかの男に抱かれる前に駒ちゃんに抱きしめて欲しい」といわれて」
あらら。
告られたのだろうか。
「恋に落ちたのですか」
「若い娘はお里が最後でした」
「おさとちゃんはよっぽど美人だったんですね」
彼は一瞬目を泳がせて、
「働き者でもないおれなんかにすがるようにして、一夜を過ごしたもので。どこに連れて行かれたのかと、探し倒してようやくあいつらの所だとわかったんだ」
掛け合ったのか、女郎屋に。
見請け金がとんでもない額だったことだろう。
しかし、なぜ追われる身になったんだ?
全額返済しても、遊郭からの離脱にも大きなお金がいる。
彼は貧乏なのでとてもじゃないが借金の返済すらできないはず。
ならば門前払いで、相手にされないのが普通だろ。
何か、やらかしてしまったのか。
で、なければ遊郭はヤクザ者など抱えないだろう。さっきの連中は雇われ者か。
昔から、恋は盲目というからな。
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