願いを叶える魔法の傷薬~俺の異世界転生に必要なスキルを72時間しか遊べない体験版ゲームで取に行くところです~

ゼルダのりょーご

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 女神と別れて街道に出る。
 ひとり静かに歩を東へ進めると、間もなく人通りが増える地点へときた。

 ジョブチェンジをして忍者になったらしい。
 さほど実感はない。
 先ほど、世を忍ぶ仮の姿である薬売りになったばかりだ。
 だが確かに荷物を背負って山林沿いの街道を軽々しく歩けている。

 遠足でたまにこういう舗装のない道を歩くことがある。
 半日で足首あたりから指の付け根まで、ヘトヘトになってしまう。
 家路につけば、過度の筋肉痛による心の悲鳴などは当たり前だった。

 電車もない。
 バスも通ってない。こっちの当たり前はそこに尽きるよな。
 そういえば、とつぜん馬が走って来たりするんだよな、この時代は。

 え、なんか背中に強い視線を感じた。
 背後から耳元に、人のわめき声が明瞭に届いてくるこの感じはなんだ。

 どうやら、誰かがもめているようだけど。
 
 10人ほどの大人と若い男がひとりいて、追いかけっこの最中か。
 なにやら寄ってたかって若者をいじめているようだ。
 通りすがりに肩がぶつかったとか、その類ではなさそうだ。
 ずいぶんと遠くから追いかけられて、付きまとわれているみたいだ。

 だが会話のやり取りから、金の話のようだ。
 金銭トラブルか。
 金でもめている若者が誰かに助けを求めて、こっちに向かってくる。
 俺の30メートル手前を全力で走っているようだ。

 俺は自分をエスパーかと思うほど、すでに背後の状況がくみ取れていた。
 足音がばらついているのだ。息もかなり乱れているようだ。
 運動会のリレーで、人数不足のチームにより他の人の分まで自分が走る。
 そんな経験をいつしかしたよ。
 まさにヘトヘトになって、もつれているのがわかった。

 若者は大人たちを必死に振り払い、猛ダッシュを決め込んだ。
 俺の背中から、肩に手をかけて「ごめんよ!」といって、すぐ脇に倒れ込んだ。
 
 ぶつかって来たものだから、ついつい、「大丈夫ですか」といって彼をみた。
 倒れた拍子に膝をすりむいた彼に、背中の薬箱を降ろし、軟膏をぬってやった。


「親切はありがたいけど。こ、こんな高価な薬で手当てをされても、おれ払えねえから……」

 申し訳なさそうなその声は震えていた。

「お金を請求したりはしないよ。ただのお節介だから気にしなさるな」
 気軽なくちぶりで彼の肩をポンと叩いた。
「だって薬屋さんでしょ?」
「うんまあ。でも困ったときはお互いさまっていいますよ」
「本当に!? どうもご親切にありがとう」その笑顔すら痛々しかった。
「ところどころ、ひどい傷だらけですが大丈夫ですか。さあ肩をかしましょう」

 まだ子供じゃないか。中高生ぐらいだろうか。
 ちょんまげでもないし。町民だな。
 俺は、傷だらけの彼を一目見て、派手にやられたもんだなと思った。
 念頭には、人助けをしなければという思いがあったわけだ。
 状況を見るに見かねて、つい、訳も聞かずに手持ちの薬で手当をしてしまった。
 ほんとに売って歩くわけでもなし。
 もとより俺のものかどうか不明だし。


「おい、そこの若ぇの! そいつをこちらに引き渡してもらおうか」


 男たちが追い付いて来たか。
 中には力自慢の大男もいるみたいだ。
 ああ、いわゆるヤクザ者というわけですな。
 品がなく、ガラの悪い連中のお出ましだ。
 だけど相手は10人はいるぞ。

 いきなりの難敵じゃないか。

 この世界で、俺はまだなんの経験もない。
 偶然、おなじ街道を歩いていただけだ。


「か、堪忍してくれよな。巻き込むつもりはなかったんだ」
「まあ、こちらも巻き込まれるつもりなどないのですが」
「ぶつかった上に親切に手当てをしてもらって、肩まで貸してくれる人に遇ったのは生まれてはじめてだ。迷惑はかけられない。おれが出て行けば済む話だから」


 人数が人数だからな、腹をくくったか。
 親切にした俺を巻き込みたくない……か。
 この若者は思いやりの心を持っているようだ。

 俺も、どの道なにかを選択しなければならない。
 その人助けの難易度をいまさら下げられるかという話だな。
 死ななきゃオッケーなんだろ。

 ここで一発、決めておくか。
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