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しおりを挟むそうじゃないな。
女神が俺の手を引き、身体を起こそうとしてくれている。
このまま直立させられたら、いくら逆光で部屋が暗いといっても。
あらわになってしまう。
おそるおそる腰を上げていくが、前屈姿勢を脳が要求するのだ。
『まだ腹の具合が悪そうだな。手を当てて行くだけで終わるから、そのままじっとしていろ』
「え」
いまなんと仰いましたか。
直接、手を当てて汚れを取っていくと聞こえたんだが。
ひとしきり放出したから、いまは元気を失くしているよ。
そればかりか、しおれてしまって食べかすのバナナの皮に成り下がってる。
腰を引き、くの字の姿勢を崩せないでいる。
そのため女神の手は、俺の股ぐらの奥へと延びてきた。
その状況を体は決して嫌がらないし、むしろ極楽な気持ちでいる。
どこまで汚れた魂なのだろうか。
こんなクズ野郎にだれが女神様などを差し向けてくれたのか。
あのまま生きているより、百倍の幸せを味わって居るのかもしれない。
俺は思わずゲロだと主張した。
疑うことなどせずにキレイに隅々まで拭ってくれようとしている。
浄化というスキル持ちのため、そうすることは彼女にとっては日常的なことなのかもしれない。
だが俺にとっては……。
『おい、お前っ!?』
「ひいいぃっ! ごめんなさい。やっぱそうですよね? ぜ、ぜ、全裸でごめんなさい。とってもわるいことしていました……人にあるまじき行為を……うぐっ」
身体を強い力で押さえられていた。
思わず心がたじろぐ。
引っぱたかれて切断すると、せっかんを受けた。
親がそうだったから、その先入観しかない。
もし切断されたら、ニューハー腐転生者になってしまう。
『動くな、じっとしていろ!』
「ひいっ! ちょん切らなくても大して変わりないから…」
口を開くと言い訳ばかりだな俺は。
最後ぐらいは潔く、男らしくできないのかよ。
つくづく、どあほな男だな。
だから「おし」はなにも言わないのか。
言えばボロがでるから。
『──ところでお前、まだ名前を聞いていなかったな』
体には直に触れていないのだが、ズズズと吸引される感触がある。
心地良い振動が加わって、さらなる快楽物質を誘発するかのようだ。
もう修行とかは明朝にしてもらって、このまま時の経過を忘れてしまいたい。
全身からさらに力が抜けていくようだ。
そんなこちらの気持ちも知らないで、女神は名前など所望している。
そういえば、名乗りはまだだった。
「抜汐群です。あだ名がショーグンだから、江戸を意識するようになったんです」
『バツシオ、グン……シオグン、ショーグンか。まあ、グンでいいかな』
「はい。女神さんは、お名前がないのですか?」
話題が名前のほうに行った。
いいぞ、誤魔化せるぞ。
ぶっちゃけ、あんたの名前なんか聞けなくても、どうでもいいが。
『無くもないが、おいそれと名乗るものでもない。女神でよいだろ』
案の定。聞くくせに答えてはくれないんだな。
「はい、もちろんです……」
これで清めの儀式も終えて、自己満足だがすっきりした。
江戸時代、晴れた心で挑めそうだ。
『おい、グン。いつまでもその格好じゃ、みっともないだろ。早速、ジョブチェンジに移ろう。話を早めたいので、ジョブチェンジのことは【女神エンジン】で見てくれるか』
みっともないという認識はあるのだな。
ということは、子供扱いされているわけか。
性の対象外なんだなと、つくづく思ったよ。
女神は話を進めて行きたいようだ。
「あ、はい。ジョブ……チェンジ、ですね? わかりました」
こっちに来れば、身支度のための着替えをすると分かっていた。
そろそろ服を着ろ、ということなのだな。
ベトベトの身体は余すところなくキレイにしてもらえた。
死んで幽体になったはずなのに、ちゃんと感触は残っている。
こうして気持ちよくなれるたが嘘みたいだ。
だから、ふと思ったんだ。
俺の死体はこれなのかと。
そういえば、死の告知を受けてから自分の姿をまだ確認していない。
とくに首から上のことだが。
ブサ顔だった俺が江戸時代などに来ても本当に良かったのかと内心ハラハラドキドキだ。
とにかく今は。
ジョブチェンジ──【女神エンジン】。
ピピッ!
検索完了──。
「お、また検索結果が出て来たぞ」
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