10 / 70
010
しおりを挟む「俺、死んだから。そこへ行かなきゃならないの?」
『まあ、最終的にはな──』
嫌だと駄々をこねたら慰めてくれそうな、柔らかい声に変わった。
どういうことだろう?最終的って。
すぐには行かない感じ。なにか問題があるのか。
『私は──お前を鍛えなければならぬ』
「鍛える……おつむをですか?」
『異世界には敵がおるのだ。私の敵対者がな』
確か……この方は太陽の女神って言ったっけ。
敵となれば、肉体の方を鍛えるのかな。
「太陽の敵ってこと? 金星とか木星とかの子供の神がいるの?」
『ふっ。そういう発想になるのか……。この時代の子らは』
声がいっそう和らいだ気がする。
そして表情は笑みを湛えているようでもある。
『まあ、今はそんな所でいい。それで異世界に入るまでに、お前には強くなってもらいたいのだ』
「身体を鍛えるの? そんなんで神様のしもべとかをどうにかできるの?」
『ふっ。しもべか。──あいつらは、まさにそれだな』
うん?
女神の視線がどこか遠くを見つめたような。
敵対者に対しての位置づけのことだろうか。
故郷で何か大事があった感じだが。
そんな所へ俺なんかを連れて行って戦力になるのかな。
そうは言っても行く当てがないわけだ、俺は。
一体どうして、こんなことになったんだ。
俺も家に帰りたいな。
もう地上に降ろしてもらえないのかな。眼下をちらりと見た。
もと居た公園の脇に目をやる。すぐ傍だからな自宅は。
『家が恋しいか? 残念ながらお前の帰る場所はもうここにはない。お前は私と共に進むのだ。急ぎの案件なのでな。よし、余談はこのぐらいにして本題に移ろうか。まず、お前に手渡すモノがある』
急ぎの案件……。
その言葉には何だか焦りの色が窺えた。
すこし口調が早くなっているのを感じたのだ。
俺を鍛えるという話だから、鉄アレイか縄跳びでも出してくるのか。
となれば……。
そんな急激に体力アップはできないから、時間的に、まだこちらの世界に居られるのかも。
筋力トレーニングをまさかこの空の上でさせないよな。
俺の中のイメージは重力に逆らい過ぎた、こんな場所ではないからな。
これはもしかすると、頼めば地上には戻れるのかもしれない。
『ハイ、これ』
え、なに。
両腕を綺麗に揃えて、こちらに向けている。
手のひらの上に見たことのない造形物がある。
メタリックっていうのか。それはUFOみたいな外見で神秘的だった。
なんか想像してたものとかけ離れた物を差し出されたが。
全く、この女神と来たら優しい時は、声も顔も美しいのに。
いまの、「ハイ、これ」は、同級生みたいな感じだったぞ。
そこからは少しはしゃいでいる感がにじみ出ていた。
屈託のない笑顔を見せてきて、まるで少女じゃないか。
ちょっと可愛かった。いや、かなりかな。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜
あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。
そんな世界に唯一現れた白髪の少年。
その少年とは神様に転生させられた日本人だった。
その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。
⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。
⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる