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しおりを挟むついに俺は例の白いやつと対面することに。
信じがたいことだが、雲の上に来ている。
いつも見上げていたあの空の上にある、あの雲だ。
今日は日本晴れ。
とても青々とした空だが、遥か上空には雲があったんだな。
まっしろな雲だったんだ……目を覆い始めたあの白いモヤは。
いつもは地上から何気なく見ているから綿あめとでも思っていた。
雲は確かガスなんだよな。
軽いから浮いているのか、それとも無重力によるものか……それすら知らん。
ヒュウウ。
止まっていた風がそよぎ出す。
足元に少しだけ足場のように雲の切れ端が残る。地上の風景が露になった。
それ以外は、サアァっと蜘蛛の子散らすように消えていった。
やつが言ったとおり、眼下を見下ろす。
さっきまで俺の居た場所が、豆粒のように小さく見えている。
こんな高い所、登ったことがないよ。
山よりも高い。流れる雲以外はなにも目に映らない。
◇
『落ち着きを取り戻したか? そのまま黙って聞くがいい──』
やつは女神。
そう名乗った。
だけど未だに姿を見せないでいる。
落ち着きを取り戻しただって? 精一杯、恐怖に抵抗しているだけだ。
身体は固定されたように宙で安定していた。
何かに縛られている感触は一切ないけど。
もう俺には何もできやしない。
説明を求めたことだし、聞いてやるさ。
どこに視線を置けばいいのか?
眼下を見ると背筋が凍りそうだから、前を見ていようか。
ちょうど木の枝に腰掛けていた時の感じになった。
すると、ぬうっと女神ってやつの半身が俺の顔に近づくのを感じた。
「うおっ! し、白い……。霊じゃないのか。あんたナニモンだよ」
『お前は頭が悪い方か? 説明を繰り返したくはないが。私は神の一族で、神々の住む世界からやって来た』
う~ん。確かにそれは聞いたな。──にしても、頭の良し悪しは関係ないだろ。
驚愕してるんだよこっちは。
そりゃあ良い方かと聞かれれば、悪い方だと即答できるぐらいだ。
俺はやつを睨むでもなく、見た。そしてコクンと肯いた。
『私の世界は、人間が死んだ後に辿り着く天国のようなものだ。神や天国という世界観が嫌いなら、単なる「異世界」と思えばいい』
「嫌いとは言ってないけど。なんで急に優しくなったの?」
『や、優しくした覚えなどないっ!』
うん? なぜか声がうわずったぞ。
「そうなのか、お、怒んなくてもいいじゃん」
『ただ下界を見渡せば、寺社仏閣が多い街並みだから。お前が好まぬイメージなら行きたがらない。そう考えただけだ、勘違いするな』
咳ばらいをした後、すこし語気を強める。
物言いは厳しい感じだけど。
それを人は気遣いと言うのですよ、女神様。
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