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しおりを挟む「ぽかぽか草どこなの?」なにを口走っているんだ、俺は。なんの記憶だ?
涙目になっているのは分かるんだ。
みっともなく鼻水も垂らしているだろう。
味気のなくなった割りばしを噛みしめながら。
背筋がゾクゾクとして、凍り付いていくようだ。
呪いか祟り……。
周囲一帯が白いモヤに包まれて行く。
言いたくない台詞が脳裏をかけ巡る。
「……生まれてごめん」さっきまで胸に輝いていた太陽がみるみる沈んでいく。
誰にも気づかれたくないよ。──涙目になる俺なんかを。
自分でも大嫌いなんだソイツは。
鏡なんか大嫌いなんだ俺は。
センチメンタルなんか大嫌いなんだよ。
俺は、けっして孤独なんかじゃない。淋しんぼなんかじゃない……。
──だけど。確かに、日々、悶々としていたよ。
生まれて此の方、一度も嬉しいことなかったもん。
水飴せんべいなんか、下の下の駄菓子で真実のスイーツじゃないもん。
楽しいことプレゼントされてないもん。
意地悪しかプレゼントされてないもん。
風邪引かないもん。
仲間外れしか引かないもん。
人当たりは良くないもん。
挨拶ほとんどしないもん。
お風呂に入ってないもん。
頭、洗ってないもん。
顔、洗わないもん。
歯、磨かないもん。
「忍者とUFOは買いだもんっ」
もう、英語の授業中に世界地図のことを「便所と寝床」って訳さないから許して。
ただ人前で涙を堪え続けただけなのに、涙腺キレ男とか言われ続けたもん。
蹴られても、なじられても、言い返せないことが罪?
服を全部取られて、女子便に閉じ込められても泣くもんか。
そんなやつらに聞かせてやる声などない。
俺の内側のなにも知る権利を与えてやらないだけだ。
俺の声は俺だけのものだ。
俺の気持ちも、本音も、思考のすべてが俺だけのものだ。
分けてやるもんか。
話すもんか。
聞かせてやるもんか。
俺の声は俺だけのもんだ。
俺は、俺とだけ話すんだ、悪いかっ!
自分の機嫌ぐらい、自分でとれるんだよ。
だからお前らの何かも、一切、受け取るつもりはねぇんだよ!
罪なんて犯してないよ。
前科ひとつもないもん。
子供が駄々をこねるように、後ろ暗い気持ちを抱えて。
普段の行いが悪かったのだろうか、と反省しながらも否定をする。
内向的な性格が浮き彫りになってくる。
夏に水飴せんべいに、たった二十円使っただけでしょ。
食う権利も奪うのかよ?
自分は何も悪くはない。
悪行を重ねてきたつもりなどないと首を横にふり、断固否定する。
だが、ほとんど声にはならない。
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