3 / 70
003
しおりを挟む『おい坊や、気は確かか?』
はあ!?
しゃべったな、今確実にしゃべったな!
それでも怖くて耳を疑いたくなったが、やっぱり聞こえてしまう。
こっ……この……場所だったか。
ふうっと、溜め息を吐きながら。
「この木だよな……ぜったい??」
俺は腰掛けている木に思いをはせる。
水飴を食べ終わったあとの割りばしを口にくわえながら、そっと掌を幹に当てる。
木は生きているって言うもんな。あれ?……水だったっけか。
とにかく精霊が宿っている……んだよな。(きっと…)
周りの子らとはうまく話せない代わりに、人間じゃない生物とはいつか意思の疎通が叶うと実は信じていて。
この公園の便所のそばの日陰った所に子供たちから忌み嫌われている、見た目がすこぶる気持ち悪い木があり、「呪いの木」と名付けられている。
その姿はまるで西洋のホラー映画に登場するような、不気味な形容を成している。
体のどこかに耳や口があって薄気味悪い声で、しゃべり出すんじゃないかと。
姿かたちが醜いからと、呪われていると決めつけられて物やボールをぶつけられていた。ときには親の仇と言わんばかりに蹴とばされることも見受けられた。
公園内には他にもたくさんの木が植樹されているが、その一本だけはどの季節にも葉が茂ることはなく、いつも枯れているように見えていたからだ。
勿論思いやりの心を持った優しい子供はその限りではないし、俺もそこまで酷いことはしたことがない。姿が気味悪くて、気持ち悪いと思うことはあるけど。だれも居ない時にこっそりと、
彼に優しく、「俺は……おまえを悪く言わないし、ボールをぶつけたりしないからな。呪わないでくれよな」って。
環境に恩を売っておけば、しっかり報いを受けて、大自然を味方に変えられる。
いつか、お年玉を貰いに行ったとき、祖母ちゃんが言っていたっけ。
お年寄りって……なんでこうも恩返しの話ばかり、孫にしたがるんだろうな。
まあ、いっこうに返事なんて返って来やしないんだが。
大人たちだって、ペットや花壇に向かって話しかけるじゃないか。
言葉を知らない彼らにさ。
俺のとった行動は異常でも何でもないはず。
偏屈でもなければ、変人でもない。
なのにどうして……俺ばかり異質扱いされんだよ。
いつもここら辺で顔をぶるっと震わせて現実に戻ろうとする。
感傷に浸ると遊び時間がなくなるから、深く考えないようにな。
だけど……。
寿命は儚いが──いっそのことトンボにでも生まれてよ。
すいすいと地上のやつらを見下ろして。
生涯、畑のミステリーサークルでも眺めて暮らせりゃ幸せだったのになって。
『……そう声を掛けてやったのか? 一見、優しそうに思えるがエグイ言葉を向けておることに気づいておらぬな』
うわっ! この木が怒ったんだろうか。
「だから誰だよ、あんたは!? さっき目の前をわざとらしく遮ったやつだろ?」
確かに周囲からは疎いと囁かれているさ。だが──。
その実、そこまで鈍くは無いんだよっ!
──先程からずっとだ──
何者かが俺にまとわりついている。
木の精か。それとも気のせいか。
そんな神秘的な現象への憧れが、これまでに無かったと言えば嘘になるが。
ていうか、なに熱くなってんだろうな俺は。
きっと何かの聞き違いさ。蝉たちが沢山鳴いてるもんな。
たぶんだけど……近所の役員の人が肝試しの準備でもされているのではないかと、思う次第だ。それで悪戯心が出て、からかっているに違いない。
ゆ、幽霊なんか信じないぞ。
フレンド申請したおぼえもないぞ。あっち行けよ。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

『お前を異世界に配置する』
ゼルダのりょーご
ファンタジー
主人公レオ。14歳男。
14の夏に突然死が訪れた。
目の前に現れた女神は彼に告げる。
「お前を異世界に配置する」
配置されなければならない理由は身勝手で自己中心的であった。
彼に死をもたらせたのは、この女神だったから。
レオの「死」はもう動かせない事実。
彼は、コワ可愛い女神をゆるして異世界に旅立つ。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる