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第ニ章 忙しない夏休み
図書館と不審な事件
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まずは状況の整理だった。
現状呪われているのは、俺とソラだ。
俺はピアノ呪いが進行しているが、ソラの虹の呪いは進行していない。
そしてカジの持っている文集「漣」にあるとってつけた様な三大の呪い。
虹の呪い。ピアノの呪い。記憶が消えるという呪い。
そして十五年前の二人の女性の変死体。
これが関連しているのは間違いない。
ここまではカジが最初に見せた資料と変わらない。
ここから引き出そうにもアプローチの仕方が分からない。
「久江。十五年前の事件、ここの学校の卒業生なら知っているよな? 何か詳しいことは分からないのか」
「風間君の言う通りで、必死に思い出そうとしてんだけど、あんまり記憶に残っていなくて、だってたぶん私の二つ下の子達だから、直接関係無かったからあんまり覚えていない」
「そうか」
「案外当てにならないのね北ちゃん」
「ひどい!」
ホシの辛辣な言葉に久江が「うう」と涙目になる。打たれ弱さも子供だな。
とは言え人間の記憶もあまり当てにならないのが事実である。たとえ残っていても、それが本当か判断する術が無い。
これだけじゃ全然足りない。
「きっかけはカジの言っていた十五年前の事件のはず。けどこれネットでヒットしないんだ」
「そうなの。ソラ君」
ホシがソラに顔を近づけてき、ソラのスマホをじっと見つめる。
「お前はスマホ持ってないのか。あと近いだろ」
「えー。いいじゃん別に」
「アレはほっといて私にも見せて響ちゃん」
どさくさに紛れて俺に顔を近づけてくるカジ。
「近い。お前も持っていないのか」
「私はそんな近代的なもの持っていない!」
「だとしても近い!」
両手を使ってカジを引き剥がそうとするが、ものすごい力で迫ってくる。こっちはかなり本気なのに、全然へこたれない。全く調べる暇がない。
「やっぱり出ないですね」
「そうか」
「ああっ!」
「きゃあ!」
俺とソラは立ち上がってスマホを確認する。カジが派手に横転し、ホシが前に転がる。それを無視し、ソラと目を合わせながら、何もヒットしない検索画面を見続ける。
「変ですね」
「確かにな」
俺のスマホとソラのスマホを交互に見つつ確認する。
不思議なことに何もヒットしないのだ。
何も表示されない。
「市内の図書館には十五年前の新聞があるかも。ナッチャンの以外の内容もあるかも」
そう提案したのは久江だった。
「なるほど」
「確かに、かなり揃っていますからね」
「じゃあ。早速行くか」
「そうだね」
俺とソラが頷き、久江が立ち上がり、準備して玄関に向かう。
「ちょっと」
「待って」
カジが俺の肩をソラがホシの肩を同タイミングでで掴まれた。
「ああ?」
「どうしたのですか?」
「ああ。じゃない!! 何私をほったらかしにして!」
「無視しないで!」
二人が真剣な顔して、怒っている。でも調べるのにめちゃくちゃ邪魔だったし。二人とも全く調べる気なかったから。
「ヘイヘイ」
仕方ないので、ポンポンとカジの頭を軽く叩いた。
「へ?」
カジは頭を軽く押さえた後、ぼわっと顔を赤くした。
想像以上に効き目があった。
「ソラちゃん!」
その光景を見たホシが便乗して、目がキラキラさせながらソラに眼差しを送る。
「え。風間君。どうしたらいい?」
見たままで動揺している模様。俺は適当にスルーしようと思ったが、あとあと騒がれる方が面倒だ。
俺はソラにアイコンタクトでさっき俺がしたのと同じようにしろと合図する。ソラは軽く頷き、ホシの頭を軽くたたいた。
ホシはカジと同じく顔を真っ赤にしたのだった。
「なんだこれ」
図書館に到着。
今図書館の受付でカジが十五年前の新聞の有無を聞いている。
その間、俺と久江とソラとホシは空いているテーブルを探し、無事確保する。
「不思議ですね。ネットの検索に引っかからないのは」
「そうだな。当時はネット環境が出来てから間もないから、無かったかもしれない」
「それだけの理由ならいいんですけど」
ソラがボソッと呟く。
「それはどういう意味だ?」
「何その意味深な言葉」
「気になる。気になる!」
俺を含めた三人がテーブルから身をのり出す。
反対に後ろに仰け反る様に身を引くソラ。
「そこまで特別な事ではないです。けど何となく嫌な感じがするのです」
「前に言っていた。本能的何やらか」
「そんな感じです」
いまいち理解できない。
ソラは特に顔に出さない。淡々と話すから時より不安に感じる。
だがそれ以上、ソラについて考えることを遮られた。
「なーに私をホッといて大事そうな会話してるの?」
カジが図書館では出してはいけない大声で走ってきたあと、テーブルの上にドンと新聞を叩きつけた。
「ナッチャン。ここ図書館」
「ふん。知らない! 折角取りに行ったのに、これじゃ私が除け者みたい」
「アンタはそれがお似合いよ」
「とりあえず、一応15年前の事件の一週間分の新聞を用意したよ」
「そうか」
「ありがとう」
「ちょっと無視かい!」
相変わらずの会話を一通り展開した後に、カジが新聞を一通り渡した。
俺はバサッと新聞を開く。ひたすら並ばれた文字列に多少の不快感を催しながらも、関連の記事を探していく。
ざっと見渡し地方欄の所に例の事件が載っていた。
眺めてみるとオカルト研が持っていた記事と全く一緒だった。
他のページを捲ってみるがそれらしき記事はない。
「これだ!」
カジが叫びながら、記事を指さした。
俺を含め、全員の注目が集まる。カジが見ているのは十月十二日、次の日の記事だ。
だがほぼ文章は同じ内容だった。唯一違うのは二人の名前が載っていた。
「音凪栄海。澄浦希」
当然知らない。知らないのだが。
「のぞみ?」
声に出しながら、ホシを覗くと慌てて顔の前で手を振る。
「違う違う。というか『のぞみ』の名前なんて日本を探せばいっぱいいるし、それに漢字が違うし」
「そうか」
「えー。怪しい」
「また文句あるの銀髪娘!」
「別に」
「キー!」
二人の間に火花が散りまくりである。本当に馬が合わない。まあ、基本無視だけど。
「それで知っているか?」
「知らないね」
「知らない」
「んー。生まれていないから、僕らが知っていると逆に怖い気がする」
高校生四人組は全くわからない。
「となると久江?」
見た目が一番年下に見える最年長の保健医に目を向けるが
彼女はに眉間に皺を寄せて、新聞とにらめっこしている。
「んー。引っ掛かるような。引っ掛からないような」
首を左右交互に傾けて絞り出そうとしてはいる。
要するに分からないのだろう。
ソラみたいに深層心理に訴えかけるものがあるような意味合いで言われても、結局は当てにならない。
他の日の記事を探す。
だが内容はほぼ変わらない。進展がないや謎のままだとかそういった言葉で締められている。警察もお手上げ状態か。
次の日の記事もとりあえず見てみるか。
とはいっても、それ以外は経済や政治、スポーツ、特に情報はない。その次の日の新聞を手に取る。その事件の内容はない。バサバサと捲ってみるがそれらしいのは無かった。そろそろ飽きて来たので、他の人の様子を伺う。全員新聞とにらめっこだ。自然体で黙々とページを捲るソラ。背中を丸め食いつくように見るカジ。相変わらずの眉間に皺を寄せる久江に、肩肘と頬杖でダルそうにするホシ。
ホント何故ここまでキャラが濃い面子が集まったのだろう。
新聞読むだけでここまでバラバラなのか。本当にどういう巡り会わせなのか。全く意味が分からない。
「あ、響ちゃんサボり!」
カジと目が合う。相変わらずの察知能力だよ。
「ヘイヘイ」
続けて残り三人が顔を上げてくるので、適当に返事して新聞に目を落とす。
「ん?」
一つの記事に目が止まる。
行方不明の女子生徒見つかる。
十月十四日晩、土偶川の岸にて横たわっている女性を散歩中の男性が発見した。
すぐに市内の病院に運ばれた。昏睡状態ではあったが命に別状はない。
女性は十月十二日に行方不明になり、両親が捜索願を出していた。
十月十二日はあの事件と同じ日だ。関連性が無いとは言い切れない。もっと情報がないのかと、次の日とその次の日の新聞を開いた。
「……あ」
最初は、これはそういうものかと思っていたけど、ゆっくり考えていくと、おかしいことに気がついた。
記事の内容がおかしいわけではない。もっと物理的におかしな状況が広がっていた。
ある一部分が四角に切り抜かれていた。何かの記事の部分だ。
「あ!」
他の所で似たような反応があった。たぶん理由は。
「新聞が切り抜かれている!」
予想通りのカジの反応に、変な安堵すらする。
けどこれは少々厄介な事態になった。
すぐに受付の人に報告すると、血相を変えて走ってきた。そして新聞を見るや大きく口を開けて固まった。
そしてキっと俺たちを何故か睨む。
「あんまり疑いたくないけど、念のために訊くけどあなたたちが切ったことは無いよね」
「ないです。なんならここの五人全員の荷物チェックしても構わないですよ」
「そう」
俺がある程度の威嚇を含めた声で言うと、それ以上は詮索するようなことはしなかった。
ただ事件らしいので、図書館が急きょ時間が一時間早く閉館してしまった。たぶん他の新聞の調査を行うことだろう。
外に出ると地面が少し濡れていた。
一雨来ていたらしい。
今は雲の隙間からうっすらと日が差し込んでいた。
「うー。なんか貧乏くじを引いた気分」
カジが腕を下にだらーんと伸ばして歩いていく。落ち込む姿が大袈裟だ。気持ちはわからないこともないが。
久江もソラもホシも似たような気持ちだろう。
俺だって例外ではない。
「でもこれってたぶん」
ボソッと無意識に言った言葉を俺は聞き逃さなかった。
それとなくソラに近づいてから、耳打ちする。
「どういうことだ?」
「ん? ああ。でも風間君なら薄々気づいているのではないですか?」
並んで歩きながら、チラッと視線を合わせてくる。
どうしてこうもみんな察しがいいのか。それにソラはむしろ天然だと思っていたのだが。
「たぶん誰かが妨害をしている」
「そうだね。でも一つ気になるのだけど、かなり中途半端だよね」
「確かに。切り取るなら関連の記事を全て切り取って、何一つ手がかりを残さないはずだが、事件直後の記事は残っていたからな」
「妙だね」
確かに妙だ。
中途半端だ。徹底的に手がかりを消すはずなのに、新聞の切り取りとか分かり易いのにした。
それに俺らが気づくまで図書館の人が気づかなかったことが妙だ。単に毎日チェックをしなかったのか、それとも俺らが来る直前に誰かが来たのか。普通に考えれば前者だが、後者もゼロとは言いにくい、だが後者だとそれはそれで問題だ。だれかが俺らの動きを把握しているかもしれない。
「むう」
俺の目の前に感じる空気の流れの違いに気づき、視点を手前に合わせると、口をへの字にして見つめるカジの姿が見えた。
「なに、二人でコソコソやってんの。私も混ぜて」
「お前来ると話が進まん」
「響ちゃん。私が来ても進んでいるじゃん」
「歩くことに関しての進むじゃねえ!」
勝手に漫才が始められる。よくもそんな馬鹿な発想ができるものだ。唐突過ぎてソラはキョトンとしているし。
「はいはい。バカはほっといて、キョウにソラ君、機嫌が優れない私が珍しく聞いてあげるから、さっき話していたこと洗いざらい教えなさい」
「お前は何で上から目線なんだよ」
「だってあんたの頼みに付き合ったんだから、それなりの結果を教えてもらうのが筋って」
「誰がバカって」
もう何度目か分からない取っ組み合いが始まりそうになり、俺は隣のソラを両手を使って軽く引っ張り二人の間に立たせる。
「ソラ?」
「ソラ君?」
ピタッと二人の手が止まる。
凄いな。かなり悪ふざけでやったつもりなのにここまで効果があるとは思ってもいなかった。
そのかわり真ん中に無理やり立たされたソラは、キョロキョロと二人の顔を見た後、正面の俺の顔をジトーと睨んでくる。
「理由も根拠も分からないですし、結果論で言えば正しいですけど、今後するときは一言言ってください!」
「おお。わかった」
初めてか。ソラがムスッと怒った表情を見せたのは。
両隣の二人は複雑そうな表情のままで、しばらくは声を出せないだろうし。
一人距離を置いて歩く久江に目をつける。
「久江。高校時代の友達に訊いてみるとかできないか」
「あー。その手があった……」
納得してから数秒程固まる久江。
「どうした」
「いやー。でもだいぶ前だから望み薄かも。努力はしてみるけどね」
仏頂面でぎこちない表情の久江。
珍しく反応が優れない。
状況が状況だから仕方ない。
「あー。もう辛気臭い!うりゃ!」
突然カジが久江の両脇を抱えて上に持ち上げた。
「あー! なっちゃん! 何ちょっと!」
「もう。やっぱり暗い! こういう時は明るくいるべきでしょ!」
カジが久江を持ち上げながら、先に走っていく。
「それはそうだけど、ちょっと怖いって!」
久江がアワワと口を広げ絶叫を上げている。
「あいつ。バカだな」
「それに関しては私も同感」
「いいんじゃないですか。暗いよりは」
結局分からないが、俯いても仕方ないということはあいつの行動で理解した。
「うあ。虹が見える!」
また聞いたことあるようなセリフだ。
けど見上げると、事実東の空に虹が浮き上がっていた。
本当に最近虹を含め、いい景色をよく見る気がする。そんなに多く見ると慣れてきて感動が薄れてしまうものだから、たまにのほうが良いが、綺麗な事には変わりない。
「こうも短期間に見れるとはな」
「確かに」
「いいじゃない。縁起がよさそうだし」
「そういう問題じゃない! そろそろ下ろして!」
「はいはい」
久江はやっと地面に下ろされた。そしてすぐさまカジを殴りつけるがするっと躱されてしまい。むすっとした顔を見せる。
「おいおい。前みたいに追いかけてくるのは勘弁してくれ」
「その時は私は腕にすがりつ」
「絶対にさせん」
「いつもこんな感じなのこの人」
「こんな感じだ」
ホシが指さす。
「僕は相変わらず見えないな」
そうだな。ちょっと悲しい感じになる。
「まあ見えなくてもいいし」
「前向き!」
ソラもこの状況でもポジティブに考えているのか。だからまだ悲観する必要もないか。とりあえずまだ一か月以上ある。その間に解呪すればそれでいい。
ゆっくりと進めばいいか。
心が少し楽なったので、映った虹を再度眺めた。
その瞬間、背筋にゾッとした寒気が走り、視界がぼやけた。
気のせいか。
一応後ろを振り返るが何もない。
向き直って虹を見る。
虹が見えなくなるなんてことまでは……。
気のせいか。
「早く行くよ!」
カジの声で前に振り向き、そして進んでいった。
現状呪われているのは、俺とソラだ。
俺はピアノ呪いが進行しているが、ソラの虹の呪いは進行していない。
そしてカジの持っている文集「漣」にあるとってつけた様な三大の呪い。
虹の呪い。ピアノの呪い。記憶が消えるという呪い。
そして十五年前の二人の女性の変死体。
これが関連しているのは間違いない。
ここまではカジが最初に見せた資料と変わらない。
ここから引き出そうにもアプローチの仕方が分からない。
「久江。十五年前の事件、ここの学校の卒業生なら知っているよな? 何か詳しいことは分からないのか」
「風間君の言う通りで、必死に思い出そうとしてんだけど、あんまり記憶に残っていなくて、だってたぶん私の二つ下の子達だから、直接関係無かったからあんまり覚えていない」
「そうか」
「案外当てにならないのね北ちゃん」
「ひどい!」
ホシの辛辣な言葉に久江が「うう」と涙目になる。打たれ弱さも子供だな。
とは言え人間の記憶もあまり当てにならないのが事実である。たとえ残っていても、それが本当か判断する術が無い。
これだけじゃ全然足りない。
「きっかけはカジの言っていた十五年前の事件のはず。けどこれネットでヒットしないんだ」
「そうなの。ソラ君」
ホシがソラに顔を近づけてき、ソラのスマホをじっと見つめる。
「お前はスマホ持ってないのか。あと近いだろ」
「えー。いいじゃん別に」
「アレはほっといて私にも見せて響ちゃん」
どさくさに紛れて俺に顔を近づけてくるカジ。
「近い。お前も持っていないのか」
「私はそんな近代的なもの持っていない!」
「だとしても近い!」
両手を使ってカジを引き剥がそうとするが、ものすごい力で迫ってくる。こっちはかなり本気なのに、全然へこたれない。全く調べる暇がない。
「やっぱり出ないですね」
「そうか」
「ああっ!」
「きゃあ!」
俺とソラは立ち上がってスマホを確認する。カジが派手に横転し、ホシが前に転がる。それを無視し、ソラと目を合わせながら、何もヒットしない検索画面を見続ける。
「変ですね」
「確かにな」
俺のスマホとソラのスマホを交互に見つつ確認する。
不思議なことに何もヒットしないのだ。
何も表示されない。
「市内の図書館には十五年前の新聞があるかも。ナッチャンの以外の内容もあるかも」
そう提案したのは久江だった。
「なるほど」
「確かに、かなり揃っていますからね」
「じゃあ。早速行くか」
「そうだね」
俺とソラが頷き、久江が立ち上がり、準備して玄関に向かう。
「ちょっと」
「待って」
カジが俺の肩をソラがホシの肩を同タイミングでで掴まれた。
「ああ?」
「どうしたのですか?」
「ああ。じゃない!! 何私をほったらかしにして!」
「無視しないで!」
二人が真剣な顔して、怒っている。でも調べるのにめちゃくちゃ邪魔だったし。二人とも全く調べる気なかったから。
「ヘイヘイ」
仕方ないので、ポンポンとカジの頭を軽く叩いた。
「へ?」
カジは頭を軽く押さえた後、ぼわっと顔を赤くした。
想像以上に効き目があった。
「ソラちゃん!」
その光景を見たホシが便乗して、目がキラキラさせながらソラに眼差しを送る。
「え。風間君。どうしたらいい?」
見たままで動揺している模様。俺は適当にスルーしようと思ったが、あとあと騒がれる方が面倒だ。
俺はソラにアイコンタクトでさっき俺がしたのと同じようにしろと合図する。ソラは軽く頷き、ホシの頭を軽くたたいた。
ホシはカジと同じく顔を真っ赤にしたのだった。
「なんだこれ」
図書館に到着。
今図書館の受付でカジが十五年前の新聞の有無を聞いている。
その間、俺と久江とソラとホシは空いているテーブルを探し、無事確保する。
「不思議ですね。ネットの検索に引っかからないのは」
「そうだな。当時はネット環境が出来てから間もないから、無かったかもしれない」
「それだけの理由ならいいんですけど」
ソラがボソッと呟く。
「それはどういう意味だ?」
「何その意味深な言葉」
「気になる。気になる!」
俺を含めた三人がテーブルから身をのり出す。
反対に後ろに仰け反る様に身を引くソラ。
「そこまで特別な事ではないです。けど何となく嫌な感じがするのです」
「前に言っていた。本能的何やらか」
「そんな感じです」
いまいち理解できない。
ソラは特に顔に出さない。淡々と話すから時より不安に感じる。
だがそれ以上、ソラについて考えることを遮られた。
「なーに私をホッといて大事そうな会話してるの?」
カジが図書館では出してはいけない大声で走ってきたあと、テーブルの上にドンと新聞を叩きつけた。
「ナッチャン。ここ図書館」
「ふん。知らない! 折角取りに行ったのに、これじゃ私が除け者みたい」
「アンタはそれがお似合いよ」
「とりあえず、一応15年前の事件の一週間分の新聞を用意したよ」
「そうか」
「ありがとう」
「ちょっと無視かい!」
相変わらずの会話を一通り展開した後に、カジが新聞を一通り渡した。
俺はバサッと新聞を開く。ひたすら並ばれた文字列に多少の不快感を催しながらも、関連の記事を探していく。
ざっと見渡し地方欄の所に例の事件が載っていた。
眺めてみるとオカルト研が持っていた記事と全く一緒だった。
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「これだ!」
カジが叫びながら、記事を指さした。
俺を含め、全員の注目が集まる。カジが見ているのは十月十二日、次の日の記事だ。
だがほぼ文章は同じ内容だった。唯一違うのは二人の名前が載っていた。
「音凪栄海。澄浦希」
当然知らない。知らないのだが。
「のぞみ?」
声に出しながら、ホシを覗くと慌てて顔の前で手を振る。
「違う違う。というか『のぞみ』の名前なんて日本を探せばいっぱいいるし、それに漢字が違うし」
「そうか」
「えー。怪しい」
「また文句あるの銀髪娘!」
「別に」
「キー!」
二人の間に火花が散りまくりである。本当に馬が合わない。まあ、基本無視だけど。
「それで知っているか?」
「知らないね」
「知らない」
「んー。生まれていないから、僕らが知っていると逆に怖い気がする」
高校生四人組は全くわからない。
「となると久江?」
見た目が一番年下に見える最年長の保健医に目を向けるが
彼女はに眉間に皺を寄せて、新聞とにらめっこしている。
「んー。引っ掛かるような。引っ掛からないような」
首を左右交互に傾けて絞り出そうとしてはいる。
要するに分からないのだろう。
ソラみたいに深層心理に訴えかけるものがあるような意味合いで言われても、結局は当てにならない。
他の日の記事を探す。
だが内容はほぼ変わらない。進展がないや謎のままだとかそういった言葉で締められている。警察もお手上げ状態か。
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「ん?」
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十月十二日はあの事件と同じ日だ。関連性が無いとは言い切れない。もっと情報がないのかと、次の日とその次の日の新聞を開いた。
「……あ」
最初は、これはそういうものかと思っていたけど、ゆっくり考えていくと、おかしいことに気がついた。
記事の内容がおかしいわけではない。もっと物理的におかしな状況が広がっていた。
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「あ!」
他の所で似たような反応があった。たぶん理由は。
「新聞が切り抜かれている!」
予想通りのカジの反応に、変な安堵すらする。
けどこれは少々厄介な事態になった。
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そしてキっと俺たちを何故か睨む。
「あんまり疑いたくないけど、念のために訊くけどあなたたちが切ったことは無いよね」
「ないです。なんならここの五人全員の荷物チェックしても構わないですよ」
「そう」
俺がある程度の威嚇を含めた声で言うと、それ以上は詮索するようなことはしなかった。
ただ事件らしいので、図書館が急きょ時間が一時間早く閉館してしまった。たぶん他の新聞の調査を行うことだろう。
外に出ると地面が少し濡れていた。
一雨来ていたらしい。
今は雲の隙間からうっすらと日が差し込んでいた。
「うー。なんか貧乏くじを引いた気分」
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俺だって例外ではない。
「でもこれってたぶん」
ボソッと無意識に言った言葉を俺は聞き逃さなかった。
それとなくソラに近づいてから、耳打ちする。
「どういうことだ?」
「ん? ああ。でも風間君なら薄々気づいているのではないですか?」
並んで歩きながら、チラッと視線を合わせてくる。
どうしてこうもみんな察しがいいのか。それにソラはむしろ天然だと思っていたのだが。
「たぶん誰かが妨害をしている」
「そうだね。でも一つ気になるのだけど、かなり中途半端だよね」
「確かに。切り取るなら関連の記事を全て切り取って、何一つ手がかりを残さないはずだが、事件直後の記事は残っていたからな」
「妙だね」
確かに妙だ。
中途半端だ。徹底的に手がかりを消すはずなのに、新聞の切り取りとか分かり易いのにした。
それに俺らが気づくまで図書館の人が気づかなかったことが妙だ。単に毎日チェックをしなかったのか、それとも俺らが来る直前に誰かが来たのか。普通に考えれば前者だが、後者もゼロとは言いにくい、だが後者だとそれはそれで問題だ。だれかが俺らの動きを把握しているかもしれない。
「むう」
俺の目の前に感じる空気の流れの違いに気づき、視点を手前に合わせると、口をへの字にして見つめるカジの姿が見えた。
「なに、二人でコソコソやってんの。私も混ぜて」
「お前来ると話が進まん」
「響ちゃん。私が来ても進んでいるじゃん」
「歩くことに関しての進むじゃねえ!」
勝手に漫才が始められる。よくもそんな馬鹿な発想ができるものだ。唐突過ぎてソラはキョトンとしているし。
「はいはい。バカはほっといて、キョウにソラ君、機嫌が優れない私が珍しく聞いてあげるから、さっき話していたこと洗いざらい教えなさい」
「お前は何で上から目線なんだよ」
「だってあんたの頼みに付き合ったんだから、それなりの結果を教えてもらうのが筋って」
「誰がバカって」
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「ソラ?」
「ソラ君?」
ピタッと二人の手が止まる。
凄いな。かなり悪ふざけでやったつもりなのにここまで効果があるとは思ってもいなかった。
そのかわり真ん中に無理やり立たされたソラは、キョロキョロと二人の顔を見た後、正面の俺の顔をジトーと睨んでくる。
「理由も根拠も分からないですし、結果論で言えば正しいですけど、今後するときは一言言ってください!」
「おお。わかった」
初めてか。ソラがムスッと怒った表情を見せたのは。
両隣の二人は複雑そうな表情のままで、しばらくは声を出せないだろうし。
一人距離を置いて歩く久江に目をつける。
「久江。高校時代の友達に訊いてみるとかできないか」
「あー。その手があった……」
納得してから数秒程固まる久江。
「どうした」
「いやー。でもだいぶ前だから望み薄かも。努力はしてみるけどね」
仏頂面でぎこちない表情の久江。
珍しく反応が優れない。
状況が状況だから仕方ない。
「あー。もう辛気臭い!うりゃ!」
突然カジが久江の両脇を抱えて上に持ち上げた。
「あー! なっちゃん! 何ちょっと!」
「もう。やっぱり暗い! こういう時は明るくいるべきでしょ!」
カジが久江を持ち上げながら、先に走っていく。
「それはそうだけど、ちょっと怖いって!」
久江がアワワと口を広げ絶叫を上げている。
「あいつ。バカだな」
「それに関しては私も同感」
「いいんじゃないですか。暗いよりは」
結局分からないが、俯いても仕方ないということはあいつの行動で理解した。
「うあ。虹が見える!」
また聞いたことあるようなセリフだ。
けど見上げると、事実東の空に虹が浮き上がっていた。
本当に最近虹を含め、いい景色をよく見る気がする。そんなに多く見ると慣れてきて感動が薄れてしまうものだから、たまにのほうが良いが、綺麗な事には変わりない。
「こうも短期間に見れるとはな」
「確かに」
「いいじゃない。縁起がよさそうだし」
「そういう問題じゃない! そろそろ下ろして!」
「はいはい」
久江はやっと地面に下ろされた。そしてすぐさまカジを殴りつけるがするっと躱されてしまい。むすっとした顔を見せる。
「おいおい。前みたいに追いかけてくるのは勘弁してくれ」
「その時は私は腕にすがりつ」
「絶対にさせん」
「いつもこんな感じなのこの人」
「こんな感じだ」
ホシが指さす。
「僕は相変わらず見えないな」
そうだな。ちょっと悲しい感じになる。
「まあ見えなくてもいいし」
「前向き!」
ソラもこの状況でもポジティブに考えているのか。だからまだ悲観する必要もないか。とりあえずまだ一か月以上ある。その間に解呪すればそれでいい。
ゆっくりと進めばいいか。
心が少し楽なったので、映った虹を再度眺めた。
その瞬間、背筋にゾッとした寒気が走り、視界がぼやけた。
気のせいか。
一応後ろを振り返るが何もない。
向き直って虹を見る。
虹が見えなくなるなんてことまでは……。
気のせいか。
「早く行くよ!」
カジの声で前に振り向き、そして進んでいった。
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科学魔法と呼ばれる魔法が存在する【現代世界】
異世界から転生してきた【双子の兄】と、
兄の魔力を奪い取って生まれた【双子の妹】が、
国立関東天童魔法学園の中等部に通う、
ほのぼの青春学園物語です。
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【時系列】__
覚醒編(10才誕生日)→入学編(12歳中学入学)→合宿編(中等部2年、5月)→異世界編→きぐるい幼女編
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タイトル正式名・
【アンタッチャブル・ツインズ(その双子、危険につき、触れるな関わるな!)】
元名(なろう投稿時)・
【転生したら双子の妹に魔力もってかれた】
【完結】人前で話せない陰キャな僕がVtuberを始めた結果、クラスにいる国民的美少女のアイドルにガチ恋されてた件
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カクヨム、小説家になろうにも掲載しております。
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