嵐は突然やってくる

白うさぎ

文字の大きさ
上 下
97 / 252
第三章 二人の距離

しおりを挟む
「廉ちゃん!お話ししたの!?」
翌朝まだ7時というのに早番なのか出勤前の母親が病室に入ってきた。
「・・・・」
「廉くんおはよう。」
後から少し眠たげな、でも嬉しそうな直人さんが入ってきた。
「・・・・」
「昨日は少しだけ声聞かせてくれたんだけどね。廉くん、百合さんに昨日の質問してみたら?」
「・・・・」
何だっけ・・・質問。
寝たら忘れちゃったな・・・。
「廉くんみんなが悲しそうに見えてるみたいだよ。」
「あら・・・。廉ちゃんがお話ししてくれたらみんな喜ぶわよ?」
「・・・・なぜ・・・?」
「!!廉ちゃん!」
そう言ってハグされた。
二文字しかしゃべってないけど・・・。
「みんな廉ちゃんが大好きなの。だから少しずつでいいからこうやってお話ししてほしいのよ。」
「・・・・」
「廉くん、ついでに朝のチェックしちゃうね~。あ、まずお手洗い行っとこうね。」
朝のトイレは大切だ。
少し介助されつつ昨日のように歩いてトイレまで行く。
トイレを済ませて、ついでに顔を洗ってまた同じように戻る。
「廉ちゃん少しは歩けるのね!」
母親も少し落ち着いたのか、看護師の目になっている。
「よし、もしもししまーす。」
布団にもぐってしまったので、手だけ布団に入れてノールックで聴診する直人さん。
「うん、問題なし!廉くんどうする?ごはん頑張る?」
「・・・・」
「もう少し寝る?」
「・・・ねる」
「寝てるときにまた点滴するね」
「・・・・」
「じゃぁおやすみ、廉ちゃん。」
寝てても文句言われてないんだけど、勉強はしなきゃな・・・。
少し寝てから・・・。




またふんわりと翔さんの香りがした。
それも近くで。
「ごめんね。」
なんとなく起きる気になれず夢から覚めることは辞めた。



起きたらお昼になっていた。
「廉ちゃん、ご飯食べるよ~」
どうやら母親もここで食べる気らしい。
「ウインナー昨日食べたんだって?じゃーん、今日は甘い卵焼きも作ってきたわよ~!」
病院のご飯のペースト粥の上に小さく箸で分けた卵焼きを乗せてくれた。
「あんまりは胃がびっくりするから少しね。」
「・・・・」
スプーンを持ち少しだけ掬って口へ運ぶ。
「食べれた!!廉ちゃんすごい!!」
「・・・」
なんとなく最近はチャレンジしているんだけど、やっぱり胃にご飯が入ると腸が少し動いている気がして変な感じ。
「廉ちゃんのペースでいいのよ。そういえば冷蔵庫にすりリンゴがあったけど食べる?」
あ・・・忘れてた。食べなきゃな・・・
「どうぞ。」
「・・・・あまい・・・」
「うん、甘いわよね!リンゴがおいしい時期よね~。」
すりリンゴは全ては食べれなかったけど今日までは大丈夫だろうと、母親が夕飯までは置いておくと冷蔵庫へ戻してくれた。
さて・・・勉強しよう。
「廉ちゃん、点滴14時からね!!」
足りない栄養と水分のための点滴はまだまだ続きそうだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界一可愛い私、夫と娘に逃げられちゃった!

月見里ゆずる(やまなしゆずる)
ライト文芸
私、依田結花! 37歳! みんな、ゆいちゃんって呼んでね! 大学卒業してから1回も働いたことないの! 23で娘が生まれて、中学生の親にしてはかなり若い方よ。 夫は自営業。でも最近忙しくって、友達やお母さんと遊んで散財しているの。 娘は反抗期で仲が悪いし。 そんな中、夫が仕事中に倒れてしまった。 夫が働けなくなったら、ゆいちゃんどうしたらいいの?! 退院そいてもうちに戻ってこないし! そしたらしばらく距離置こうって! 娘もお母さんと一緒にいたくないって。 しかもあれもこれも、今までのことぜーんぶバレちゃった! もしかして夫と娘に逃げられちゃうの?! 離婚されちゃう?! 世界一可愛いゆいちゃんが、働くのも離婚も別居なんてあり得ない! 結婚時の約束はどうなるの?! 不履行よ! 自分大好き!  周りからチヤホヤされるのが当たり前!  長年わがまま放題の(精神が)成長しない系ヒロインの末路。

伊緒さんのお嫁ご飯

三條すずしろ
ライト文芸
貴女がいるから、まっすぐ家に帰ります――。 伊緒さんが作ってくれる、おいしい「お嫁ご飯」が楽しみな僕。 子供のころから憧れていた小さな幸せに、ほっと心が癒されていきます。 ちょっぴり歴女な伊緒さんの、とっても温かい料理のお話。 「第1回ライト文芸大賞」大賞候補作品。 「エブリスタ」「カクヨム」「すずしろブログ」にも掲載中です!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...