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第三章 二人の距離
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風太さんが水筒からコップにココアを入れる。
「翔~?廉くん今ホットのココアって平気なの?それとも冷ましたほうがいい?」
「・・・少し冷ましてあげたほうがいい。やけどしちゃうから・・・」
「そ。サンキュー。」
「じゃぁ廉くんその間にここ最近の珍事件をお話しするっす!」
そう言って風太さんが文さんと彼女である桜見明日香の天然事件を暴露して爆笑し始める。
「桜見ってそんなとこあるんだ!」
「そうっす!俺もびっくりしたっす!」
桜見さんがどうやらゆで卵をつくろうとして電子レンジでチンして爆発させたらしい。
もう一つは寝ぼけてスパッツと思って風太のパンツを履いて出かけようとしたようだ。
桜見さんふんわり女子だけどそこまでとは・・・。
「風太、それ暴露してもいいのか?」
黙っていた翔さんがいうと、悪びれもせず
「大丈夫っす!この話はここでしか話してないので洩れたらこの中の誰かっす」
意外と風太さんはしっかりしている・・・。
「さ、そろそろココア飲めるかな。」
窓の外へ視線をやっている俺に合わせて窓側に文さんが移動して、プラスチックのスプーンでココアを掬って口元に持ってくる。
風太さんが汚れないように持参したタオルを首元に置いてくれた。
ラッコを握ったまま口を少しだけ開ける。
「飲んだ飲んだ!!」
風太さんが嬉しそうに声をあげる。
「おいしい?」
何も言わない俺をみても風太さんはまだ喜んでいる。
結局3口飲んでストップしたんだけど、冷めたココアを流しに流して水筒に残ったあったかいココアは置いて帰ってくれた。
3人が面会から帰った後、机の上に置かれた水筒とにらめっこをしている俺。
「・・・・」
久々の特別なココアはとってもおいしくて癒された。
ラッコはまだ俺によってギュッと右手で握られている。
ピーターは俺の背もたれとして役立っている。
もう一度ココアを飲んでみたくなって、手に取ろうとした。
同時に病室の扉が開いた。
「廉くん、夕飯持ってきたよ~。」
直人さんが入ってきた。
19時・・・。今日は面会がさっき終わったから直人さんが取り置きを頼んだんだろうな・・・。
院長特権そこで使うのか。
トロトロのお粥、梅干しチューブ(おそらく直人さんの私物)、野菜スープであろうもの。
「あれ?水筒あの三人が持ってきたかな?飲む?」
そう言って少しだけまたコップについでくれた。
「今日は僕もここで食べようかと思ってね。」
そう言って母親が作ったであろう弁当を持ってきていた。
「廉くんも早く百合さんの手作り食べれるようになるといいね~」
あ、たこさんウインナー・・・食べたいな。って思っていると。
「ほら、廉くん一口だけだよ?胃がびっくりしちゃうからね。」
そう言ってたこさんウインナーの頭の部分を差し出された。
「いいよ、サービス。主治医は僕だからね。僕が許可してるんだから食べていいんだよ。怒らないよ?」
迷ったが、小さく一口だけかじる。
「おいしい?」
「・・・・」
もぐもぐゆっくり咀嚼する。
「廉くんは何も変わってないって思ってるかもしれないけど、廉くん少しずつコミュニケーション取れる時間増えてるんだよ。だから、今のままゆっくりでいいんだからね?焦らなくていいんだよ。」
直人さんは責めることもせず、俺のごはんの時間にゆっくり付き合ってくれた。
「翔~?廉くん今ホットのココアって平気なの?それとも冷ましたほうがいい?」
「・・・少し冷ましてあげたほうがいい。やけどしちゃうから・・・」
「そ。サンキュー。」
「じゃぁ廉くんその間にここ最近の珍事件をお話しするっす!」
そう言って風太さんが文さんと彼女である桜見明日香の天然事件を暴露して爆笑し始める。
「桜見ってそんなとこあるんだ!」
「そうっす!俺もびっくりしたっす!」
桜見さんがどうやらゆで卵をつくろうとして電子レンジでチンして爆発させたらしい。
もう一つは寝ぼけてスパッツと思って風太のパンツを履いて出かけようとしたようだ。
桜見さんふんわり女子だけどそこまでとは・・・。
「風太、それ暴露してもいいのか?」
黙っていた翔さんがいうと、悪びれもせず
「大丈夫っす!この話はここでしか話してないので洩れたらこの中の誰かっす」
意外と風太さんはしっかりしている・・・。
「さ、そろそろココア飲めるかな。」
窓の外へ視線をやっている俺に合わせて窓側に文さんが移動して、プラスチックのスプーンでココアを掬って口元に持ってくる。
風太さんが汚れないように持参したタオルを首元に置いてくれた。
ラッコを握ったまま口を少しだけ開ける。
「飲んだ飲んだ!!」
風太さんが嬉しそうに声をあげる。
「おいしい?」
何も言わない俺をみても風太さんはまだ喜んでいる。
結局3口飲んでストップしたんだけど、冷めたココアを流しに流して水筒に残ったあったかいココアは置いて帰ってくれた。
3人が面会から帰った後、机の上に置かれた水筒とにらめっこをしている俺。
「・・・・」
久々の特別なココアはとってもおいしくて癒された。
ラッコはまだ俺によってギュッと右手で握られている。
ピーターは俺の背もたれとして役立っている。
もう一度ココアを飲んでみたくなって、手に取ろうとした。
同時に病室の扉が開いた。
「廉くん、夕飯持ってきたよ~。」
直人さんが入ってきた。
19時・・・。今日は面会がさっき終わったから直人さんが取り置きを頼んだんだろうな・・・。
院長特権そこで使うのか。
トロトロのお粥、梅干しチューブ(おそらく直人さんの私物)、野菜スープであろうもの。
「あれ?水筒あの三人が持ってきたかな?飲む?」
そう言って少しだけまたコップについでくれた。
「今日は僕もここで食べようかと思ってね。」
そう言って母親が作ったであろう弁当を持ってきていた。
「廉くんも早く百合さんの手作り食べれるようになるといいね~」
あ、たこさんウインナー・・・食べたいな。って思っていると。
「ほら、廉くん一口だけだよ?胃がびっくりしちゃうからね。」
そう言ってたこさんウインナーの頭の部分を差し出された。
「いいよ、サービス。主治医は僕だからね。僕が許可してるんだから食べていいんだよ。怒らないよ?」
迷ったが、小さく一口だけかじる。
「おいしい?」
「・・・・」
もぐもぐゆっくり咀嚼する。
「廉くんは何も変わってないって思ってるかもしれないけど、廉くん少しずつコミュニケーション取れる時間増えてるんだよ。だから、今のままゆっくりでいいんだからね?焦らなくていいんだよ。」
直人さんは責めることもせず、俺のごはんの時間にゆっくり付き合ってくれた。
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