枯れ桜

時谷 創

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11話 半身

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助かった……?

バタッ

枯れた桜が沈黙したのを確認すると、全身の力が抜けて地面に倒れこんだ。

「梓ならできると思っていたよ!」

気が付くと、真っ暗な空間の上を宙に浮いていて、目の前に樹の姿があった。

「私は一体……樹がいるって事は私死んじゃったのかな……」

昨日離れ離れになってまだ日にちは経ってないが、長い時間離れていた気がする。

「何言ってるんだよ。梓のおかげでみんな助かったんだよ!」

「みんなが助かった…? 
 でもここがどこだか分からないし、やっぱり私死んじゃったんじゃ」

「いつまでも寝ぼけてるんじゃないって。
 みんなお前が目を覚ますのを待っているんだぞ?
 ほら、俺の手を握って強く念じるんだ。みんなの元に戻るんだって」
「みんなの元に戻る…ね」

私はその場で立ち上がり、樹の手を握り締めると樹、香織、委員長、
先生みんなの顔を思い浮かべる。

するとポーっと一筋の明るい日差しが差し込み、眩しさで目を瞑ると
突然体が浮き上がった。

「何だかすごく暖かい…」

包み込まれる暖かな光に目を瞑ると、しだいに意識が遠のいていった。

「梓! 梓!」

誰の声?

それに凄い力。

誰かが私の手を強く握っている。

私はゆっくりと目を開けるとそこには香織の姿があった。

「香織…?」

「あ、目を覚ましましたね!」

声の方に目を向けてみると、委員長の顔が見て取れた。

「委員長…。ここはどこ? 桜は一体どうなったの?」

「ここは榊総合病院の病室だ。遠野の頑張りのおかげで助かったんだよ」

「先生も来てくれたんだ。私、桜の前で倒れてそのまま入院になったのかな…」

「何寝ぼけてるんだ、梓。
 香織がここにいるって事は救い出す事に成功したって事だろ?」

「えっ?」

今の声。

さっき夢の中で聞いたばかりだが、どこか懐かしい声。

私はベッドからゆっくりと起き上がって声の主に目を向ける。

「樹…」

そこには満面の笑顔を浮かべた、私の兄であり、半身でもある
遠野 樹の姿があった。
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