枯れ桜

時谷 創

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10話 対決

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「そんなもので俺をどうにかできると思うなよ!」

桜は大きく目を見開き、枝を触手のように伸ばしてこちらに向けてきた。

「んっ!」

襲い来る枝を杭で払いのけると、それを構えながら前に一歩進んだ。

「攻撃を避けるだけじゃ何の解決にもならんぞ!」

桜は今度は複数の枝をこちらに伸ばし、捌ききれないと判断した私は、
杭を木に向けて投げて、地面に転がり込んだ。

駄目だ。

杭が当たった所は少しひびがはいるが、桜は動じる気配はない。

攻撃できるものもなくなり、桜の攻撃を避けるのも限界がある。

一体どうすれば…。

何か手が無いか辺りを見回すと、シュッと言う音が聞こえたのと同時に、
桜が伸ばした枝が体に巻き付け、縛りつけられてしまう。

「ぐっ…離しなさい…」

「お前の命には何か不思議な強さが感じられる。
 その力を取り込めば、私の力も以前の強さを取り戻すだろう」

桜は私の体を縛ったまま、引き寄せにかかる。

私はそれを逃れるために体を捻ったりするが全く動じる気配がない。

もうダメなのだろうか…。

私ではどうにもならなかった。

樹、ごめんね…。

目を瞑ると樹が諦めるなと言う真剣な表情が思い浮かぶ。

コトッ

地面で何か音がしたので目を開いてみてみると、
父さんの形見のライターが落ちていた。 

「父さんのライターがポケットから落ちたんだ…」

ライター… ライター!?

相手は木! 木ならば火に弱いはず!

私は体を捻って腕を伸ばし、地面からライターを拾い上げる。

「お前、今何を拾った?」

「父さんの形見のライター…よ!」

ライターの蓋を開くと、火をつけ、縛られた枝に近づける。

「グァァァァ!」

枝にライターを近づけるだけでどれくらい被害を与えられるか不安ではあったが、
思いのほか効果があり、縛られた木の枝が次々と燃え上がった。 

「……まだ本体には影響には影響は及ばない。燃えた部分を切り離せば……」

目を瞑って苦しんでいる桜に「イケる!」と判断した私は、
体についた枝を焼き切り、すぐさま桜に駆け寄ると、
幹にある目玉を火で炙った。

「グゥゥゥ!!」

「やめろ! 私への攻撃をやめれば、香織と同じように力を与えて、
 永遠の命を保証しようぞ!」

「永遠の命なんていらない! お前が被害を与えたみんなを返して!」

ライターを枯れた桜全体を炙るとさらに勢いよく燃え上がり、
しばらくすると幹にあった目玉も消えて完全に沈黙した。
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