枯れ桜

時谷 創

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9話 榊総合病院

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浦添署を出ると表には野次馬の姿があり、
警察が建物に近づかないよう指示していた。

浦添署の中をちらっと確認してみるが、大きな物音はせず、
香織が追ってくる様子もない。

委員長が作ってくれたチャンス。

これを生かさないと大変な事になってしまう!

私はすぐに駆け出し、榊総合病院に向かった。

「何か浦添署の方であったみたいよ」

病院の敷地内まで来ると患者と思われる人物の声が聞こえてきた。

浦添署の事はここまで話が来てるみたいだ。

すぐに病院の桜の元に向かって、何とかしなければ。

不安な表情で話をしている患者を横目に、裏手の丘に向かった。

裏手の丘に辿り着くと、患者の姿がもなくひっそりと静まり帰っていた。

「と言うよりこの雰囲気…桜が人を遠ざけているようね」

不気味なほど静まりかえった空間、痛いほど張り詰めた空気。

丘の上で辺りを見渡すと、枯れかけた桜の木の姿が確認できた。

「あれね」

静かに桜に歩み寄るが、私には武器がある訳でもなく、
小説や漫画のような能力もない。

一体どうすれば、枯れかけた桜を鎮めることができるのだろうか。

そんな事を思っていると、桜の幹に大きな目玉が現れ、話しかけてきた。

「人間よ、よく逃げずに来たな」

「私が逃げたら委員長がこの町が。
 ううん、香織の正気も取り戻さなければならない」

「取り戻すと言っても、どうするつもりだ? 
 お前には何の力もないだろう?」

「確かに私には何の力もない。でも、諦める訳にはいけないの」

私はそう言うと、地面に差し込まれた鉄の杭を引き抜く。
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