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5話 ライター
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確かに昨日今日で変わるものじゃないし、考えすぎね。
それに樹がそんな目に合う事をするとも思えないし。
沈んだ気持ちを奮い立たせるように大きく背伸びをし、深呼吸する。
「ふぅー。それじゃそろそろ家に帰るかな」
先ほどの告白生徒達の姿もなく、静まり帰った校舎裏をゆっくりと歩き、
校門から外に出ていく。
いつもと同じ通学路の風景。
でも、隣には樹の姿はない。
樹、どこ行ったの?
校舎裏になぜ形見のライターがあったの?
ライターを見つめていると、また嫌な想像が脳裏に過る。
「駄目だ。私が落ち込んでちゃ、樹が帰ってくる望みが遠のいちゃう!」
その場で頭をフルフルと振り、気持ちを強く持つとスマホを取り出す。
「もしもし、お母さん? 樹は家に帰ってきてない?」
「うん。帰ってきてないわ。心当たりのある場所で見かけた人がいないか
聞いてみても誰も見ていないって。
それで今、浦添署まで来ててこれから話をしようかと思ってたところなの」
「相談は早い方がいいもんね。それなら私も今から浦添署に向かうね」
「分かった。車に気を付けてね」
母親の言葉に明るく答えて、電話を切ると続けてスマホのコール音がなった。
「樹!?」
すぐに着信を確認すると画面には「高垣 香織」と表示されていた。
「もしもし、香織? どうかしたの?」
「無事家に帰ったかなって思って電話したの。今もう家?」
「あ、ううん。さっきまで学校にいて担任の前田先生と話をしてて、
今から浦添署に向かうところ」
「前田先生と話をしてたんだ。先生、梓の事お気に入りだから心配だなー。
変な事されたりしなかった?」
「先生は良い人だよ。気さくに相談にのってくれるし、
樹の事も真剣に考えてくれてたし」
「まあ先生は良い人だけど一応独身だし、男は狼って言うから梓も気を付けてね。
サッカー部の東みたいに暴走されても困るしね」
「あはは、私はまだ誰かと付き合うとかそう言う気持ちはないから心配のし過ぎよ」
「それならいいけど…。ちなみに学校で何か見たりしなかった?」
「何かって? さすがに学校内では不審人物とかは…。
あ、裏庭に行ったら樹が大事にしている形見のライターが落ちてたよ。
なんであんなところに落ちてたんだろ」
「まさか学校内で不審人物に襲われる事はないだろうし、
ただ落としてしまっただけじゃないかしら?」
「そうね。特に傷とかもついてなかったし。
それじゃ心配してくれてありがとね」
「愛する梓のためなら例え火の中、水の中よ。
何か動きがあったらまた電話してね」
香織に分かったと答えると一呼吸置いて電話を切る。
「それじゃ浦添署に向かうなら…国道の方に抜ければいいわね」
ハンバーガー屋やアクセサリーショップなどに寄り道している生徒達を横目に
私は浦添署に向けて黙々と足を運ぶ。
それに樹がそんな目に合う事をするとも思えないし。
沈んだ気持ちを奮い立たせるように大きく背伸びをし、深呼吸する。
「ふぅー。それじゃそろそろ家に帰るかな」
先ほどの告白生徒達の姿もなく、静まり帰った校舎裏をゆっくりと歩き、
校門から外に出ていく。
いつもと同じ通学路の風景。
でも、隣には樹の姿はない。
樹、どこ行ったの?
校舎裏になぜ形見のライターがあったの?
ライターを見つめていると、また嫌な想像が脳裏に過る。
「駄目だ。私が落ち込んでちゃ、樹が帰ってくる望みが遠のいちゃう!」
その場で頭をフルフルと振り、気持ちを強く持つとスマホを取り出す。
「もしもし、お母さん? 樹は家に帰ってきてない?」
「うん。帰ってきてないわ。心当たりのある場所で見かけた人がいないか
聞いてみても誰も見ていないって。
それで今、浦添署まで来ててこれから話をしようかと思ってたところなの」
「相談は早い方がいいもんね。それなら私も今から浦添署に向かうね」
「分かった。車に気を付けてね」
母親の言葉に明るく答えて、電話を切ると続けてスマホのコール音がなった。
「樹!?」
すぐに着信を確認すると画面には「高垣 香織」と表示されていた。
「もしもし、香織? どうかしたの?」
「無事家に帰ったかなって思って電話したの。今もう家?」
「あ、ううん。さっきまで学校にいて担任の前田先生と話をしてて、
今から浦添署に向かうところ」
「前田先生と話をしてたんだ。先生、梓の事お気に入りだから心配だなー。
変な事されたりしなかった?」
「先生は良い人だよ。気さくに相談にのってくれるし、
樹の事も真剣に考えてくれてたし」
「まあ先生は良い人だけど一応独身だし、男は狼って言うから梓も気を付けてね。
サッカー部の東みたいに暴走されても困るしね」
「あはは、私はまだ誰かと付き合うとかそう言う気持ちはないから心配のし過ぎよ」
「それならいいけど…。ちなみに学校で何か見たりしなかった?」
「何かって? さすがに学校内では不審人物とかは…。
あ、裏庭に行ったら樹が大事にしている形見のライターが落ちてたよ。
なんであんなところに落ちてたんだろ」
「まさか学校内で不審人物に襲われる事はないだろうし、
ただ落としてしまっただけじゃないかしら?」
「そうね。特に傷とかもついてなかったし。
それじゃ心配してくれてありがとね」
「愛する梓のためなら例え火の中、水の中よ。
何か動きがあったらまた電話してね」
香織に分かったと答えると一呼吸置いて電話を切る。
「それじゃ浦添署に向かうなら…国道の方に抜ければいいわね」
ハンバーガー屋やアクセサリーショップなどに寄り道している生徒達を横目に
私は浦添署に向けて黙々と足を運ぶ。
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