4 / 12
4話 Ph
しおりを挟む
さて委員長にはああ言ったけど、やっぱりあの桜が気になる。
一体どうすれば……そうだ。
今日化学の授業で酸性とかアルカリ性の話をしてたんだ。
もしかしたらあの桜の周辺を調べれば…。
恐ろしい仮説は信じたくなかったが、化学の授業、そして担任でもある
前田先生にそれとなく話をすれば何かわかるかもしれない。
そう思った私は化学室まで足を運ぶ事にした。
ガラガラ…
「失礼します」
「お、遠野じゃないか。こんな時間にどうした? 樹の話か?」
「あ、えっと。樹は家に帰ってから母と相談しようと思っています。
今回はそれではなくて、今日化学の授業で酸性とかアルカリ性の話を
してたじゃないですか? それで裏庭で咲きほこる桜の土壌を調べたら
何か変化とかあるのかなーって思って」
「ああ、あの桜な。早咲きと遅咲きとバラバラなのは俺も気になってたんだよ。
でも授業の事に興味を持ってくれるのは先生としては嬉しいな」
先生に準備するから少し待っててくれと言われ、化学室の扉から離れると、
廊下の壁にもたれかかり、ふーっと息を吐いた。
化学室に行く前に母親からメールが来ていたが、やはり樹は帰ってなくて、
樹が立ち寄りそうな場所を探しているが、見つからないらしい。
父親を早くに亡くしてる事もあって、家族に心配をかける事はしてこなかったし、
やはり樹の身に何かあったんだろう。
そんな事を考えていると前田先生が姿を現し、一緒に裏庭の方へ向かう事になった。
化学室のある特別棟から裏庭へ行くには、人通りの少ない本校舎裏を
ぐるっと回らなければならないのだが、先生は気を使ってくれているのか
色々な話をしながら、気を紛らわせてくれる。
そんな時、
「体育祭の時にペアになってからずっと気になっていました!
俺と付き合ってください!」
裏庭まであと一歩の所で男性の声が響き渡り、目を向けてみると、
校舎裏でサッカー部らしき部員と女子生徒が向かい合っていた。
「若いっていいな」
「あはは。でもあまり熱く告られても困る時もありますけどね」
「さすが遠野、経験者は語るってやつか?」
「そんなのじゃないですよ。それより早く裏庭まで行きましょう」
にやりとしている先生を手で追いやって裏庭へと向かう。
「さて、どこの土を測定するかな?」
「あ、あそこの若い桜の木の所でお願いします」
「了解。それじゃこれで測るとするか」
先生はそう言ってポケットから先の尖った器具を取り出した。
「拡大鏡…ですか?」
「いや、今はいいのがあるんだよ。これは電池も不要、
測る時間も何と一分間刺すだけ。しかも安価ときたもんだ」
「そんな優れものがあるんですね。
どこかの業者とかから仕入れたりするんですか?」
「いや、Amazom」
「あはは、amazomですか。今はあそこで何でも手に入りますもんね」
「でも買いすぎには注意しないとな」と先生は笑うと、測定器を土に差し込み、
1分間計測する。
「桜は弱酸性が良いと言われているが、ここの土はアルカリ性みたいだな。
業者なら肥料とか中和するだろうけど」
「アルカリ性ですか。あの……よく推理小説で何か埋められていて、
土壌のphが変わるとかあるけど、聞きますけど……」
「遠野は樹の事を心配しているんだろうが、昨日今日ですぐ変わるものでもないし、
特に掘った形跡もないからそれはないと思うぞ」
「そうですよね。何か頭の中がぐるぐるしちゃって、
変な想像ばかりしてしまっています」
「今は仕方ないかもな。とりあえず遠野は母親と相談して、
警察に捜索願を出すかどうか考えた方がいいかもな」
先生の言葉にこくんと頷くと、先生と一緒に校舎裏の方に歩いていく。
「あ、遠野は先帰ってもらえるか?
俺はちょっと気になる事があるから、裏庭にもう一回行ってみるよ」
「分かりました。何か分かったら連絡頂いてもいいですか?」
「了解。それじゃ気を付けて帰るんだぞ!」
先生は笑顔でそう言うと、裏庭の方へと歩いていく。
一体どうすれば……そうだ。
今日化学の授業で酸性とかアルカリ性の話をしてたんだ。
もしかしたらあの桜の周辺を調べれば…。
恐ろしい仮説は信じたくなかったが、化学の授業、そして担任でもある
前田先生にそれとなく話をすれば何かわかるかもしれない。
そう思った私は化学室まで足を運ぶ事にした。
ガラガラ…
「失礼します」
「お、遠野じゃないか。こんな時間にどうした? 樹の話か?」
「あ、えっと。樹は家に帰ってから母と相談しようと思っています。
今回はそれではなくて、今日化学の授業で酸性とかアルカリ性の話を
してたじゃないですか? それで裏庭で咲きほこる桜の土壌を調べたら
何か変化とかあるのかなーって思って」
「ああ、あの桜な。早咲きと遅咲きとバラバラなのは俺も気になってたんだよ。
でも授業の事に興味を持ってくれるのは先生としては嬉しいな」
先生に準備するから少し待っててくれと言われ、化学室の扉から離れると、
廊下の壁にもたれかかり、ふーっと息を吐いた。
化学室に行く前に母親からメールが来ていたが、やはり樹は帰ってなくて、
樹が立ち寄りそうな場所を探しているが、見つからないらしい。
父親を早くに亡くしてる事もあって、家族に心配をかける事はしてこなかったし、
やはり樹の身に何かあったんだろう。
そんな事を考えていると前田先生が姿を現し、一緒に裏庭の方へ向かう事になった。
化学室のある特別棟から裏庭へ行くには、人通りの少ない本校舎裏を
ぐるっと回らなければならないのだが、先生は気を使ってくれているのか
色々な話をしながら、気を紛らわせてくれる。
そんな時、
「体育祭の時にペアになってからずっと気になっていました!
俺と付き合ってください!」
裏庭まであと一歩の所で男性の声が響き渡り、目を向けてみると、
校舎裏でサッカー部らしき部員と女子生徒が向かい合っていた。
「若いっていいな」
「あはは。でもあまり熱く告られても困る時もありますけどね」
「さすが遠野、経験者は語るってやつか?」
「そんなのじゃないですよ。それより早く裏庭まで行きましょう」
にやりとしている先生を手で追いやって裏庭へと向かう。
「さて、どこの土を測定するかな?」
「あ、あそこの若い桜の木の所でお願いします」
「了解。それじゃこれで測るとするか」
先生はそう言ってポケットから先の尖った器具を取り出した。
「拡大鏡…ですか?」
「いや、今はいいのがあるんだよ。これは電池も不要、
測る時間も何と一分間刺すだけ。しかも安価ときたもんだ」
「そんな優れものがあるんですね。
どこかの業者とかから仕入れたりするんですか?」
「いや、Amazom」
「あはは、amazomですか。今はあそこで何でも手に入りますもんね」
「でも買いすぎには注意しないとな」と先生は笑うと、測定器を土に差し込み、
1分間計測する。
「桜は弱酸性が良いと言われているが、ここの土はアルカリ性みたいだな。
業者なら肥料とか中和するだろうけど」
「アルカリ性ですか。あの……よく推理小説で何か埋められていて、
土壌のphが変わるとかあるけど、聞きますけど……」
「遠野は樹の事を心配しているんだろうが、昨日今日ですぐ変わるものでもないし、
特に掘った形跡もないからそれはないと思うぞ」
「そうですよね。何か頭の中がぐるぐるしちゃって、
変な想像ばかりしてしまっています」
「今は仕方ないかもな。とりあえず遠野は母親と相談して、
警察に捜索願を出すかどうか考えた方がいいかもな」
先生の言葉にこくんと頷くと、先生と一緒に校舎裏の方に歩いていく。
「あ、遠野は先帰ってもらえるか?
俺はちょっと気になる事があるから、裏庭にもう一回行ってみるよ」
「分かりました。何か分かったら連絡頂いてもいいですか?」
「了解。それじゃ気を付けて帰るんだぞ!」
先生は笑顔でそう言うと、裏庭の方へと歩いていく。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ルッキズムデスゲーム
はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』
とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。
知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。
逢魔ヶ刻の迷い子3
naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。
夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。
「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」
陽介の何気ないメッセージから始まった異変。
深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして——
「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。
彼は、次元の違う同じ場所にいる。
現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。
六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。
七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。
恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。
「境界が開かれた時、もう戻れない——。」
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
とあるアプリで出題されたテーマから紡がれるストーリー
砂坂よつば
ホラー
「書く習慣」というアプリから出題されるお題に沿って、セリフや行動、感情などが入りストーリーが進む為予測不可能な物語。第1弾はホラー×脱出ゲーム風でお届け!
主人公のシュウ(19歳)は目が覚めるとそこは自分の部屋ではなかった。シュウは見事脱出するのことができるのだろうか!?彼の運命は出題されるお題が握るストーリーの幕開けです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる