枯れ桜

時谷 創

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3話 裏庭

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キーンコーンカーンコーン

香織のおかげで授業に取り組み、化学、国語などの授業を終えると、
香織はお姉さんの病院へ、私は学校の裏庭に咲いている桜を見に行く事にした。

「ほんとここの桜は綺麗よねー」

私の住んでいる町には幾つかの名所があって、
ここ大槻学園と町の中心部にある中央公園。

そして香織のお姉さんが入院している榊総合病院が有名だったりする。

「気温が暖かくて季節を勘違いするなら分かるけど、
 まだまだ肌寒いし、ほんとどうなっているのかしら」

誰もいない裏庭を見渡していると、少し離れたところに若い桜の木があった。

「あれ? こんなとこにあったっけ?」

他の桜と比べても背丈の小さいし、整然と植林された他の桜とは違い、
ここだけポツンと植えられている。

不思議に思いながらも桜の木の様子を伺っていると、
木の根元にライターが落ちていた。

誰かここで煙草を吸っていた? …いや違う。

「これは樹が持っていたお父さんの形見のライターだ…」

ただ落としたと言う感じじゃない。

何かを伝えたいと言う気持ちみたいのが伝わってくる。

やはり樹の身に何がおきたの?

「遠野さん」

声が聞こえてきた方に目を向けてみると、学級委員長の芳野の姿があった。

「こんなところでどうした? 帰らないの?」 

このタイミングで現れたのは偶然?

それとも裏庭を歩く私の様子を伺っていた?

分からない。

でもあまり余計な事は言わない方がいい気がする。

「ううん、何でもない。桜が綺麗だから少し見ていただけ。
 今日は用事があるからこれで帰るね」

「了解です。最近何かと物騒だから気を付けてくださいね。
 何かあったら相談してください」

委員長はそう言うと笑顔を浮かべて、剣道部の方へと歩いて行った。
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