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9話 時間
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『衣沙菜、落ち着いたか?』
席に戻ると直君から「コーヒーを飲んで落ち着け」と言われたため、
コーヒーを口にして、一息ついたところだった。
「うん。状況はまだよく分からないけど、頭は回るようになったかも」
『それなら、OKだ。それじゃ今分かってる事を整理してみよう』
1.天野先生が土砂崩れに巻き込まれたが、
なぜか場所と時間が巻き戻り、今こうして喫茶店で話をしている。
2.その事をマスターは認識していないが、俺と衣沙菜は認識できている。
3.先生は待ち合わせの15時より早くここに着くため、
14時くらいには家を出ていた。
4.今の時刻は12時55分のため、待ち合わせ自体を中止したり、
待ち合わせ場所を変更する事ができる。
『以上、現段階では4つの事が分かるな。衣沙菜は他に何か思いつくか?』
「そうだね……とりあえず時間が戻ったのは分かるけど、
同じ事がまた起きるのか、それとも起きないのかが分からないね」
『今が前回と同じ時間軸かって事だな。
それについては正直確かめようが無いが、マスターにこれから
天候が崩れるかを聞いて、崩れる可能性が高いと言った時は、
念のため待ち合わせ場所を学校に変更するのが得策かもしれないな』
「何も言わずに中止は変に思われるし、雨と時間の向こう側の物語では、
学校で会えた事になっているから、それが良いかもしれないね。
それじゃマスターに天気予報がどうなっているか聞いてみる」
直君に了承をもらうと、マスターの元に行き、天気予報について聞いてみた。
「ああ、お前に伝え忘れてたが、昼前の天気予報だと午後から崩れると言ってたな。
天気が心配なら天野先生の家の近くの学校に場所を変更したらどうだ?」
「天野先生の家って学校の近くだったんですか?」
「近くだったんですかってお前の方がよく知ってるだろ?
天野先生の家からここまで15分かかるとしたら、
学校までは5分とかからんからな」
先生の家って学校までそんな近かったんだ。
それなら待ち合わせ場所を変更するのも不自然じゃないし、
早めに先生の家に連絡もできるかもしれない。
「それなら天候の事も考えて待ち合わせ場所を学校に変更しようと思う。
今なら先生に連絡しても間に合うし、
俺が学校に行くのも余裕で間に合うだろう?」
「わしの足でも学校まで20分とかからんから余裕で間に合うだろうな。
あと例の花束はすぐ出せるようにしておいたから、ここを出る時に言ってくれよ」
「花束?」
今までにない情報だったのでつい聞き返してしまったが、
「最後に先生に渡すから用意して欲しい」と、直君のお父さんが用意させていたようだ。
「悪い悪い。ついうっかり忘れてしまって。
それじゃ花束は後でもらうから、先生に電話をかけてみるよ」
自分の席に戻って鞄から手帳を取り出すと、公衆電話に移動して
先生に電話をかける。
「もしもし、天野ですが」
先生に電話をかけると、天野先生の奥さんが電話に出た。
「もしもし、秋山ですが、先生はいらっしゃいますか?」
「あら、秋山君。いつもお世話になってるわね。
今かわるから少しお待ちくださいね」
先生の名前を呼ぶ声が聞こえると、しばらくして先生が電話に出た。
「おお、秋山。貴重な休みの日なのに、俺のために席を設けてくれるなんて
お前くらいだよ。ほんと教育者冥利につきるって感じだな」
『先生にお礼を言って、集合場所を学校にするように話をもって行ってくれ』
「分かった」と直君にアイコンタクトをして、会話を続ける。
「いえ、先生にはお世話になったので、個別にお礼を言わせて欲しかったんです。
それより集合場所なんですが、学校に変えてもらっても大丈夫ですか?」
「僕は別にいいが、学校だと秋山が遠くなるけど大丈夫なのか?」
「自分は大丈夫です。それより天気予報で午後から天気が
かなり悪くなると言ってたので、先生の家から近い学校にしようかなと」
「秋山は優しいな。細かい心配りまでできて将来がますます楽しみだよ。
分かった。それじゃ15時に学校に集合でいいか?」
『確か物語では先生の使っていた部屋で話をしてたから、そこで集合にしよう』
「はい。できれば先生が使っていた部屋でお願いしたいです」
「了解。それじゃ楽しみにしてるからな!」
先生は明るい声でそう言うと、電話を切った。
「享、その顔だと集合場所は無事変更できたみたいだな?」
マスターはグラスを拭きながらそう言って、にこやかに微笑んだ。
「はい! これで天気を気にせず先生に会えそうです」
「良かったな。お前の元気な顔を見るとわしも元気が出てくるよ。
ここを出る準備が出来たらいつでも言ってくれよな」
最初は色々手間取ったけど、今はマスターの優しさが凄く伝わってくる。
直君のお父さんの周りにはこんな温かい人がいて、
その子供の直君にも直君を慕うクラスメートや図書委員の仲間たちがいる。
優しい人には自然と優しい人が集まる。
それを証明してくれたようで、何だか私も嬉しくなってきた。
『よし、これで先生が土砂崩れにあう危険は回避できただろう。
後は席に戻ってこれからの行動を考え、学校に行く準備をしよう』
「マスター、今後の行動の整理と学校に行く準備をしてくるから、
花を用意しておいて」
私の言葉にマスターが頷くのと確認すると、
自分の席に戻って腰を下ろした。
席に戻ると直君から「コーヒーを飲んで落ち着け」と言われたため、
コーヒーを口にして、一息ついたところだった。
「うん。状況はまだよく分からないけど、頭は回るようになったかも」
『それなら、OKだ。それじゃ今分かってる事を整理してみよう』
1.天野先生が土砂崩れに巻き込まれたが、
なぜか場所と時間が巻き戻り、今こうして喫茶店で話をしている。
2.その事をマスターは認識していないが、俺と衣沙菜は認識できている。
3.先生は待ち合わせの15時より早くここに着くため、
14時くらいには家を出ていた。
4.今の時刻は12時55分のため、待ち合わせ自体を中止したり、
待ち合わせ場所を変更する事ができる。
『以上、現段階では4つの事が分かるな。衣沙菜は他に何か思いつくか?』
「そうだね……とりあえず時間が戻ったのは分かるけど、
同じ事がまた起きるのか、それとも起きないのかが分からないね」
『今が前回と同じ時間軸かって事だな。
それについては正直確かめようが無いが、マスターにこれから
天候が崩れるかを聞いて、崩れる可能性が高いと言った時は、
念のため待ち合わせ場所を学校に変更するのが得策かもしれないな』
「何も言わずに中止は変に思われるし、雨と時間の向こう側の物語では、
学校で会えた事になっているから、それが良いかもしれないね。
それじゃマスターに天気予報がどうなっているか聞いてみる」
直君に了承をもらうと、マスターの元に行き、天気予報について聞いてみた。
「ああ、お前に伝え忘れてたが、昼前の天気予報だと午後から崩れると言ってたな。
天気が心配なら天野先生の家の近くの学校に場所を変更したらどうだ?」
「天野先生の家って学校の近くだったんですか?」
「近くだったんですかってお前の方がよく知ってるだろ?
天野先生の家からここまで15分かかるとしたら、
学校までは5分とかからんからな」
先生の家って学校までそんな近かったんだ。
それなら待ち合わせ場所を変更するのも不自然じゃないし、
早めに先生の家に連絡もできるかもしれない。
「それなら天候の事も考えて待ち合わせ場所を学校に変更しようと思う。
今なら先生に連絡しても間に合うし、
俺が学校に行くのも余裕で間に合うだろう?」
「わしの足でも学校まで20分とかからんから余裕で間に合うだろうな。
あと例の花束はすぐ出せるようにしておいたから、ここを出る時に言ってくれよ」
「花束?」
今までにない情報だったのでつい聞き返してしまったが、
「最後に先生に渡すから用意して欲しい」と、直君のお父さんが用意させていたようだ。
「悪い悪い。ついうっかり忘れてしまって。
それじゃ花束は後でもらうから、先生に電話をかけてみるよ」
自分の席に戻って鞄から手帳を取り出すと、公衆電話に移動して
先生に電話をかける。
「もしもし、天野ですが」
先生に電話をかけると、天野先生の奥さんが電話に出た。
「もしもし、秋山ですが、先生はいらっしゃいますか?」
「あら、秋山君。いつもお世話になってるわね。
今かわるから少しお待ちくださいね」
先生の名前を呼ぶ声が聞こえると、しばらくして先生が電話に出た。
「おお、秋山。貴重な休みの日なのに、俺のために席を設けてくれるなんて
お前くらいだよ。ほんと教育者冥利につきるって感じだな」
『先生にお礼を言って、集合場所を学校にするように話をもって行ってくれ』
「分かった」と直君にアイコンタクトをして、会話を続ける。
「いえ、先生にはお世話になったので、個別にお礼を言わせて欲しかったんです。
それより集合場所なんですが、学校に変えてもらっても大丈夫ですか?」
「僕は別にいいが、学校だと秋山が遠くなるけど大丈夫なのか?」
「自分は大丈夫です。それより天気予報で午後から天気が
かなり悪くなると言ってたので、先生の家から近い学校にしようかなと」
「秋山は優しいな。細かい心配りまでできて将来がますます楽しみだよ。
分かった。それじゃ15時に学校に集合でいいか?」
『確か物語では先生の使っていた部屋で話をしてたから、そこで集合にしよう』
「はい。できれば先生が使っていた部屋でお願いしたいです」
「了解。それじゃ楽しみにしてるからな!」
先生は明るい声でそう言うと、電話を切った。
「享、その顔だと集合場所は無事変更できたみたいだな?」
マスターはグラスを拭きながらそう言って、にこやかに微笑んだ。
「はい! これで天気を気にせず先生に会えそうです」
「良かったな。お前の元気な顔を見るとわしも元気が出てくるよ。
ここを出る準備が出来たらいつでも言ってくれよな」
最初は色々手間取ったけど、今はマスターの優しさが凄く伝わってくる。
直君のお父さんの周りにはこんな温かい人がいて、
その子供の直君にも直君を慕うクラスメートや図書委員の仲間たちがいる。
優しい人には自然と優しい人が集まる。
それを証明してくれたようで、何だか私も嬉しくなってきた。
『よし、これで先生が土砂崩れにあう危険は回避できただろう。
後は席に戻ってこれからの行動を考え、学校に行く準備をしよう』
「マスター、今後の行動の整理と学校に行く準備をしてくるから、
花を用意しておいて」
私の言葉にマスターが頷くのと確認すると、
自分の席に戻って腰を下ろした。
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