シュウガシラ

夏眠

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シュウガシラ

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 とある青年の一行が、お化け屋敷を町おこしのイベントとして位置づけているある田舎町へ遊びに出かけた。

 「廃病院」をモチーフにしたそのお化け屋敷は、本格的に怖いことで有名だった。

 開かないトイレの中で騒ぐ【何か】や、入場者にすがり付こうとするゾンビ風のナースたちなどといった具合に。

 お化け屋敷を出てはしゃぐ一行。

 「あー面白かった!」
 「俺はいまいちだったかな」
 「何言ってんだよ。お化け屋敷のなかで一番騒いでたくせに」
 「わー! それは言うな!!」

 皆で軽口を叩きあいながら歩いているうちに、グループの一人が最後尾を歩く青年の顔が真っ青に青ざめていることに気がついた。

 彼は、珍しく口数の少なかった仲間に対し、軽口を叩いた。

 「よっ!珍しく元気ないじゃん。さてはお化け屋敷が相当怖かったと見えますな」

 よほど具合が悪いのか、口元を押さえながら青ざめた顔の青年は答えた。

 「お前らのせいだぞ」

 「は? 何が?」

 「お前らが騒いでたせいだと思うけど、昨日の民宿でお前らがお化け屋敷の名前を叫ぶ度に、『ここはシュウガシラだ』って二階で叫ぶ人がいて、結局一晩中どなり声で眠れなかったんだぞ。おかげでだるいのなんの。」

 それを聞いた一同は互いに顔を見合わせた。
 そんな声など、眠れなかったという青年を除いて誰一人として聞いてなどいなかったからだ。

 ーーーーーーーー

 後日、古い地図を調べてみると、その場所にはかつて『シュウガシラ』という村があったことが判明した。

 ちなみに彼らの泊まった民宿も平屋で、二階など存在しないことも後日誰かがSNSに上げた写真から判明した。
 
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