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クランシュベル家から離れて

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グラン様の部屋を出ると、ケイトさんがさっきよりも少し嬉しそうにしていた。

「ケイトさん、何か良い事でもあったんですか……?」

僕がグラン様と話をしている時はケイトさんは何もしていなかったはずだから、ケイトさんにとって良い事は無かったと思うけど、とりあえず気になるので聞いてみると「いえ、何もありませんでしたよ。」と笑いながらそう言った。……流石に何も無いは嘘だとは思うけど、言いたくないならそれでいいか。

そうしているといつの間にかもう城の扉の前に来ていた。

「すみません、キール様はまだお仕事が一段落ついていないようですので、お見送りは私一人でさせていただきます。」

「大丈夫です。見送りして貰えるだけでも嬉しいので。にしても、まだ一段落もついていないなんて第一王子様はやっぱり大変なんですね……。」

「そのようですね。」

そんな会話を少し続けていると城の扉が開かれた。

「ルナ・ホワイトベリル様、ファンズ・フローライト様、トルテ・アクアオーラ様。本日は急な招待にも関わらずクランシュベル城にお越し頂きありがとうございました。これからもお越し頂けると恐らくキール様も喜んで頂けると思いますので、是非ともよろしくお願い致します。」

「はい!こちらこそ本日はありがとうございました!是非こちらも───」


そう挨拶をしてクランシュベル城を離れた。
…今日は凄く楽しい日だった。久しぶりに外へちゃんと出たけど、もしかしたら前世を含めても今日が一番楽しかったかもしれない。
最初は断ろうかと思って、印象の為に招待に応じたけど、今思うと来て良かった。
ドルチェ様は凄く元気な方で少し苦手…かもしれないけど、グラン様は事前に聞いてた印象や、見た目以上に優しい方だったから。この本も貸してもらえて。にしても、最後に微笑んでくれた顔が頭から離れないな。すごく優しい顔だった。次会えるのは…二年後か。でも、よく考えてみれば二年後の舞踏会って、キール様が出るはず……。前世の記憶ではあの日の舞踏会にグラン様が居た覚えはないし…。
……じゃあ、これが、二つ目の変わっている点だ。これだけ変わってるなら、もしかして、レン・モニカが現れない可能性もある……?
それなら、僕が事故や事件に巻き込まれなければ、僕が死ぬ事はないかも……だけど。まだ、安心しちゃいけない。レン・モニカが現れるのは……僕が十四、十五の頃なはず。それまでにレン・モニカが現れなければ……。


「…ルナ様。着きましたよ。足元にお気をつけください。」

「!…あ、うん。ありがとう。」

考え込んでいたらもう家に着いていたようだ。時間が過ぎるのは早い。今日で鬱陶しいほど思い知らされた。
ファンズの手を取って馬車を降りる。

「今日はルナ様がとても楽しんでいたようで良かったです。私は久しぶりの同行でしたので最初は心配していたのですが、良かったです。」

と、トルテさん言う。心配してくれていたのは、やっぱりトルテさんだなと思う。いつものように優しい。

はぁ、…やっぱり久しぶりに外に出たから疲れたな。
外ってあんなに暑かったっけ?体もあんまり動かしてこなかったから、汗も結構かいてしまったし。



あーあ…早くまた、グラン様に会いたいな。
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