異世界に落っこちたおっさんは今日も魔人に迫られています!R18版

水野酒魚。

文字の大きさ
上 下
45 / 73

*第四十話 礼にはおよびません

しおりを挟む
「……僕の母様かあさまは、もう死んじゃったけれど、僕は母様のことが大好きだった。だから、君がお母さんを食べた人を探したい、その人が憎いって気持ちはわかるよ。あのね、もし、良かったら君のお母さんを食べた人を、一緒に探してあげようか?」

イリスは、シャルを案ずるようにそっと手を差し出す。その手に気付かないように、シャルは放心して独り言をり返した。

「嘘、だ……うそ……うそ、だ……っ」
「……とりあえず、彼には頭を冷やしていただきましょう。アルダー様、彼を鍵のかかる部屋へ」
「わかった」

 アルダーはシャルの身体を担ぎ上げ、窓のない倉庫に彼を連れて行く。シャルは不思議と大人しく、連行されていく。

「……さて、タイキ様も。お疲れでございましょう? まずはお休み下さい」
「うん。流石に疲れた……あ……その前に風呂入りたい。治癒ちゆ魔法も、かけて欲しい」

 どっと疲労が全身を包む。身体はあちこちヒリヒリと痛む。それでも絶対に風呂に入りたい。どうしても、全身のけがれを洗い流したかった。

「かしこまりました。用意させますね。お湯の用意が出来る間に、治癒魔法もおかけします」
「うん。ありがとな、シーモス」
「……礼にはおよびません。申し訳ございません。わたくしの責任です。……私が、奴隷の証を外してしまったばかりに……」

 口惜くちおしげに、シーモスは唇を噛む。その遊色の瞳が、泣き出しそうに揺れている。ああ、コイツにはわかってしまうのか。何が起こったのか、が。

「……アンタのせいじゃねーよ。俺が……俺が外してくれって言ったんだからさ」

 なんで? なんでアンタが泣くんだ。苦しかったのも、辛かったのも、みんな自分だ。自分のせいなのだ。
 そう思った途端に、涙が引っ込んでしまった。泰樹たいきはどうにか、ぼんやりと笑う。

「……アンタたちは、助けに来てくれた。絶対にアンタやイリスやアルダーが助けてくれるってわかってたから……だから、耐えられた。大丈夫。俺は大丈夫」

 その笑顔を見つめて、イリスは不安を隠せないようにつぶやいた。

「……タイキ?」
「うん?」
「苦しかったら、ね。無理しちゃダメだよ?」
「……ああ。どうしようもなくなったら、誰かに聞いてもらうからさ」

 ああ、早く風呂に入りたい。……一人に、なりたい。



「…………」

 大きなベッドに、一人横になる。
 シーツは清潔で、柔らかく、良い香りがする。
 眠りを誘うはずの環境に身を置いても、一向に眠れない。
 何度も寝返りを打って、目をつぶって、頭を空っぽにする。
 それでも、眠りはなかなか訪れない。
 風呂場で、一人になった途端。嗚咽おえつがこみ上げてきた。泣いても泣いても、まだ苦しくて苦しくて。腹の中から陵辱りようじよく痕跡こんせきをかき出す度、くやしくて悔しくて。

「……はあっ……」

 ため息をもらす。腕で視界を覆うと、少しだけ心が安まる。
 シーモスの治癒魔法で、身体中の傷はえている。それでもまだ、身体の中に異物が混ざっているような気がする。

「……っ」

 変、だ。多分、もう、俺は壊れているのだ。
 だから、犯されても、輪姦まわされても、気持ちのどこかがしんと静まりかえっている。
 罪悪感、苦痛、快楽、焦燥感。そんなモノの底の方に、冷え切った心があって、そこまで潜ってしまえば、もう、何も感じない。
 無意識に、下半身に手を伸ばす。どうせそれだけではイけないとわかっていて、性器をもてあそぶ。

「ん……ぁ……あ……」

 後の穴にまで手を伸ばす。そう言えば、自分でいじったこと無かったな……ぼんやりそんな風に思いながら、指先で入り口の縁をたどる。

「んうぅ……く……っ」

 つぷりと人差し指を沈める。痛みはないけれど違和感はある。そのまま中を探るように動かすと、異物を押し出そうと内壁が収縮しゆうしゆくした。

「あ、ああ……」

 二本目の指を入れてみる。最初の一本よりは抵抗なく入っていく。ぐちゅぐちゅと音を立ててかき回すたびに、脳みそが溶けていくようだった。

「は、はあ、はあ、は……っ」

 夢中でほじくり返す。自分のいいところを探して、刺激して、高めていく。
 でもやっぱり、達するにはほど遠い。

「なん……でぇ……?」

 絶望的な気分になりながらも、手を止められない。三本目まで入れても、まだ足りなくて。

「たす……けて……」

 か細い声でつぶやいた瞬間だった。

「タイキ様?」

 その声で、びくん!と身体がね上がった。

「お休みになっていらっしゃらないのですか? どうかなさいましたか?」

 扉の向こうの声は、シーモスのものに違いない。彼のぬめらかな声を聞いただけで、ぞくぞくと快感が背筋をけ上がる。

「シーモスぅ……」

 返事をしたつもりだが、ちゃんとした言葉になっていたかどうかわからない。

「はい、どうなさいました?」

 優しい口調で問われて、胸の奥がきゅっと潰れそうになる。

「シーモス……」

 名前を呼ぶと、涙が出た。

「はい、何でしょう?」
「助けてぇ……」
「!」
「俺もうダメなんだ……耐えられねえんだよ……こんなんじゃ眠れねーんだ。もう嫌だよ……苦しいんだよ……っ」

 泰樹が泣きながら訴えると、シーモスが戸惑ったような気配が伝わってくる。

「タイキ様……? わたくしでよろしいのでしょうか?」
「頼むよ……もう誰でもいいからぁ……」

 言い終わらないうちに、ドアノブが回った。
 鍵をかけていなかったらしい。扉が開かれ、シーモスが現れる。

「失礼します」

 彼は一言断って、ベッドの方へ近づいてくる。泰樹は半身を起こして、彼の方を見た。

「……もう、好きにしていいから。アンタの好きにして、いいから……っ」
「タイキ様……申し訳ございません。今は……あなたを慰めることしかできません……」
「うん……」

 小さくうなずいてみせると、シーモスが困ったような笑みを浮かべる。そして次の瞬間には真剣な表情に戻った。

「ですが、せめてものお手伝いをさせていただきます。それが私の義務だと……心得ておりますから」
「……ありがと」

 シーモスがベッドの端に腰かける。

「失礼いたします。脚を開いてくださいませ」

 言われるまま、泰樹は素直に言うことをきく。膝を立てさせられ、その間に彼が割り込んできた。

「んっ……」

 ぬるりとしたものが股間に触れた。舌だ。そう認識した途端、ゾクッとするほどの快感が立ち上る。

「あっ、あぁっ」

 ぴちゃ、という音が耳に届くたび、期待感が高まる。やがてその先端が後孔に触れてきた。

「ひ、あ……んっ」

 優しく中に入り込んできたそれは、指よりも柔らかく温かかった。

「あ、ああ、あうぅ……っ」

 浅いところで抜き差しされると、もっと奥まで欲しくなって切なくなる。

「くっ、ふう、くぅぅ……!」

 いつの間にか泰樹は両手で尻をつかみ、自ら押しつけるようにして揺らしていた。

「あ……いい、そこ、気持ちいい……! 気持ちいいよぉ……!!」
「ここですね? わかりました。存分に感じてくださいませ」
「ああっ……いぃ……! すごっ……! あぁあぁっ……あぁあああ……!!」

 絶頂を迎えながら、泰樹は思う。
 もう俺は壊れているのだ。そして、もう二度と元に戻ることはないだろう。茹でられてしまった卵はもう元には戻らない。
 もう、それでもいい。このまま、壊れてしまおう。
 だって、この世界に来てからというもの、ずっと壊れっぱなしだ。今更、これ以上壊れたところで、同じことじゃないか。
 だから、どんなひどい目にあっても平気だ。何をされても、何も感じない。
 ……そうだろ? 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...