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*第二十二.五話 また封印しておきましょうね
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「……とりあえず、わかんねーつーなら教えるから。ほら、貸してみ?」
「ここでは落ち着きませんから。お部屋に参りましょう? 撮るべきモノもございませんし」
コイツと一緒に、部屋に行きたくない。心のどこかで、そう感じる。しかし、断る理由が見つからない。仕方なしにシーモスを連れて、客間に戻る。
「……それで? 何がわかんねーんだ?」
「タイキ様。この、スマホ。もしかして『動く画』を撮れるのでは有りませんか?」
シーモスは複製したスマホを取り出して、カメラを起動する。
「ああ。動画も撮れる。動画の方が保存容量食うからそんなに長時間は撮れねーけどな」
カメラアプリをビデオモードにして、シーモスを撮影してやる。撮ったばかりの動画を再生すると、シーモスは「なるほど。これは……面白いものですね」とうなった。
「どう言う原理なのかは、俺にはわかんねーからその辺のことは聞かないでくれ」
「ええ、それは自分で考えます。これで、タイキ様を試しに撮ってみても?」
その位なら良いだろう。泰樹がうなずくと、シーモスはスマホを構えた。
「タイキ様、ほら、笑って下さいませ」
「まったく、俺なんか撮っても面白くもなんともねーだろ」
泰樹は照れたように、ふいとレンズから視線を背ける。
「……タイキ様。今は思い出して下さっても、よろしゅうございますよ」
シーモスが、不意につぶやいた言葉。それと同時に、一気に脳裏に蘇る、苦い記憶。
媚薬に浮かされ、良いようにもてあそばれた、あの夜。
「あ、あっ、あ……ぁあ?!?!」
どうして、なんで、忘れていたのだろう。あまりにもひどい記憶で、脳みその防衛本能とやらが働いたのか。
「……シーモス、てめぇ!!」
「申し訳ございません、タイキ様。貴方の記憶の一部を、封印させていただいておりました」
シーモスにも、流石に自分がやったことが泰樹を追い詰めると解っているのだろう。だからこそ、あの夜の記憶を封じた。
「……っ!」
腸が煮えくりかえる。身体の芯が、熱い。怒りで、脳みそがじんと痺れてくるような気がする。泰樹はそれを言葉にすることが出来ずに、シーモスの襟首を掴んだ。
一発殴ってやりたい。いや、一発では気が済まない。あんな、風に。薬を使って、人を良いようにしたことを後悔させてやりたい。
奥歯が欠けそうなほど、歯を食いしばる。
知らずのうちに泣けてきた。
「……なんで、記憶、戻したんだ……っ」
「忘れていらっしゃった方が、よろしかったですか?」
「……っ」
わからない。振り上げた拳をどうして良いのかも。記憶の中で、あの時確かに。シーモスの口車に乗って、それをねだったのは、『自分』なのだ。
襟を掴んでいた力が緩む。怒りと羞恥と後悔で、視界がぐるぐる揺れる。
「……ねえ、タイキ様。貴方が悔やむことなど、何もないのです。私は満足し、タイキ様は帰り道を見つける。これは良い取り引きだとお思いになりませんか?」
「とり、ひき……?」
シーモスの声が、耳元に聞こえる。それは甘く、柔らかく、愛の告白でもするように熱っぽい。
「はい。私がタイキ様を元の世界にお戻しするお手伝いをいたします。そのかわりに……ね?」
耳にかかる吐息。ああ、何を、言っているんだ、コイツは。
「私にも、多少の見返りが有っても、よろしいでしょう?」
「……もし、俺が、イヤだと言ったら?」
答えはわかっていても、問わずにはいられない。泰樹は絶望に沈む顔で、つぶやいた。
「貴方は一生、この『島』で暮らすのです。何もかもを諦めて」
シーモスは微笑む。華やかに。コイツは本気だ。泰樹がうんと言わなければ、元の世界に返す約束など捨ててしまうつもりだ。
「……俺に、何をしろ、って?」
「聞き分けの良い方は、大好きですよ」
泰樹は初めて、この世界に落ちてきたことを恨んだ。この『島』に落ちたことを憎んだ。
服を脱ぐように、と言われた。それを動画に撮られていることに気が付いた。だが、何だか素人モノのAVみてーだな。などと、他人事のように思う。
「……ほら、脱いだぞ」
素っ裸でベッドに腰掛ける。震えているのは肌寒さのせいでは無い。逆らいたくても逆らえない。喉元まで、腹立たしさが詰まって吐きそうだ。
「そう、でございますね。まずはご自分で楽しんでいただけますか? これ、差し上げますので」
そう言って、シーモスは小びんを寄越す。
「媚薬?」
表情を殺した泰樹は、つまらなそうに聞いた。いっそ、その方が良かったかも知れない。それなら、全てを媚薬のせいに出来るから。
「いいえ。今度こそ、本物の潤滑剤です」
「……」
泰樹は黙って、小びんのフタを開けた。トロリと粘つく液体を自身に落として、自慰を始める。
こんな状況で、こんな気持ちで、勃つ訳がない。何度やっても反応しないモノを、やけになって擦った。
「……う、っ……ひ、ぐっ……っ」
情けなくて、悔しくて。後から後から、涙があふれてくる。どうして。どうして俺がこんな目に。
「タイキ様。泣かないで下さいませ」
いつの間に側に寄ってきたのか。シーモスが、流れる涙を拭う。そのまま、顔を捕まえられて、自然に口付けられた。
少しでも拒絶しようとする歯列をなぞられ、そのままベッドに押し倒される。
――くそっ……コイツ、キス、上手い……
「……んっ……んう……っ」
流されまいとするのに。キスだけで蕩けそうだ。触れあわせる柔らかな舌が、甘い。ああ、キスってこんな気持ちの良いモノ、だったっけ?
すっかり夢中なって、行為に溺れる。
「ぁ……は、あ……っあ、あ……」
唇が離れていく。それが名残惜しくて、舌先で追ってしまう。
「タイキ様。たくさん、たくさん、気持ちよくして差し上げますから、ね?」
そんな宣言と共に、シーモスはキスの雨を降らす。同時に胸の先端、小さな粒に軽く爪を立てられ、弾かれる。
「……ん……っ」
こね回され、舌先で踊られる内に、それはぴんと尖り甘いしびれを伝え始めた。
「あ、……乳首、さわんな、よぉ……そんなトコ、感じねぇ、から……っ」
「そうですか? ではここで、もっと気持ちよくなっていただけるように、練習しましょうね?」
「ひ、ぁ……っ!」
ああ、やっぱ俺、おかしいんだ。キスされて乳首いじられただけなのに、こんなに気持ちいいなんて。
「なあ、シーモス。……チンコさわって……欲しい……頼むから、イかせて……」
コイツが触れてくれたら、あっさりイけそうな気がする。もう、いい。気持ちよくなって、それで家に帰れるなら。一体何が問題なんだ?
「駄目ですよ、タイキ様。タイキ様は今日から私の、愛玩物です。私が良いと言うまで、達したりなさらないで下さいね?」
シーモスの指が、後の門に触れてくる。そこはイヤだと言う代わりに、泰樹は唇を噛む。
「ここでも、もっと楽しんでいただけるようにして差し上げます」
うながされるまま足を開き、さらされる秘部にシーモスは遠慮無く潤滑剤を塗り込める。
「……っ! そこ、イヤだっ……へ、へんになる、からっ」
「大丈夫ですよ。たくさん、へんになってくださいね」
細く整った指が一本、括約筋を開かせて体内に入り込んでくる。それは優しいが、容赦もためらいもなく泰樹のなかを暴いていく。
「っ……やめろ、よぉ……っなか、かきまぜ、んな……っ」
まだ狭い内壁がひくりと震えて、指先を迎え入れる。それが、弱い場所を指がかすめていく度に、どうしようもなく物足りなさがつのって。
「あ、あぁ……ソコっ……! こりこり、すんなぁ……!」
知らなかったし、知りたくも無かった。自分が、こんなに快楽に流されやすいなんて。
「ふふふ。タイキ様は、素質がござますよ。その内、こちらだけでイけるようになられるかも。……ほら、もう2本増やして差し上げましょうね」
「ひぃ……ぅ……! あ、あ、……っ!」
3本の指の不規則な動きに、翻弄される。
たっぷりと時間をかけて、馴らされて。でも、まだ、後に受ける刺激だけではイききれない。とろん、と欲望に負けた瞳が、シーモスを見つめる。
「は、あ、ぁ……イきてぇ、よぉ……っも、げんかい、だから……っ」
泰樹の自身はとっくの昔によだれを垂らして、硬く血液を集めていた。
「そんな時は、おねだりして下さい。タイキ様。ちゃんとおねだりできたら、ご褒美を差し上げますよ?」
「は、ぐ、……し、シーモス、いじわる、すんなよぉ……お願い、だからぁ……イかせて……! アンタの、好きにして良い、からぁ……っ」
シーモスは泰樹を犯す手を止めて、唇に薄く悦に入った笑みを浮かべた。
「残念ですが、そそりませんね。もっとどこをどうして欲しいのか、具体的におっしゃっていただかないと」
体内をまさぐっていた指が、完全に離れていく。泰樹は涙目になりながら、思わずその手を取った。
「あ、あ、……まっ、て……言う、言うから……! ち、チンコ触って……それに、ケツも、もっと、奥までぐちょぐちょに、なるまで触って……気持ち良く、して、……ください……っ」
「……まあ、及第点といたしましょう。タイキ様がこうして、お顔を真っ赤にしておっしゃっているのですから。良く出来ました。ご褒美を受け取って下さい」
苦笑いを浮かべながら、シーモスは泰樹を腹ばいにさせて腰を上げるように言う。
よろけながらどうにか従った泰樹の背後から、すでに怒張していたモノを挿し入れる。体内は待ちわびていたようにひくついて、ソレを迎え入れた。
「あ、あ、あ! あひぅ……っ! ごり、ごりっ……きもち、いひ……っあ、ああっ……!」
根元までたっぷり飲み込ませて、腰ごと揺さぶるように抽挿する。同時に前側で期待に震えるモノを撫でてやると、それはあっけなく吐精した。
「いま、やめ、……イってる、イって、る、……からぁ……!」
敏感になりすぎた内壁は、びくびくと噛みつくように絡みついてくる。シーモスは、その最奥にたっぷりと射精した。
「ああ、タイキ様のお尻はとても素敵ですね……。これから、たくさん可愛がって差し上げますからね」
「ひ、ぅ、うぅん……っ! あ、あ、あ、……! ひ、ぁ……っ」
イったばかりの身体を、さらに責められる。泰樹は、シーモスの声など聞こえないかのようにただひたすら声を上げ続けた。
「今夜の記憶は、また封印しておきましょうね」
「……なんで?」
激しい交わりの後、体力の限界を感じながら横たわる泰樹に、シーモスは優しく微笑んだ。
「私、タイキ様には出来るだけ快活に過ごしていただきたいのです。タイキ様が私を見て、ご不快になられないように。私を憎んだり恨んだりなさらないように。それから、私たちの関係を、イリス様にはお知らせしないように」
自分がひどいことをしている、と言う自覚はシーモスにもあるようだ。これは完全に私の我が儘です。と彼は言う。
その横顔を見つめていた泰樹は、ふっと息をついて、唇を噛んだ。
「……いいよ。記憶は封印しなくて」
泰樹のつぶやきに、シーモスは驚いたように振り向いた。
「でも、その代わり。一つ、一つだけ、約束してくれ。俺が自分の世界に帰るときは……アンタとこうやって……その、寝た事は、忘れさせてくれ。それまでは、俺のこと、アンタの好きにして良いからさ。イリスにも、もちろん言わねーから」
抱かれるより、記憶いじられる方がムカつくから。と泰樹は言う。シーモスは気持ちを整理するように、ゆっくりと瞬きをした。
「……解りました。その時が参りましたら、必ず」
「頼んだぜ」そうつぶやいて、泰樹は目をつぶる。すぐに、穏やかな寝息が聞こえ始めた。
「ここでは落ち着きませんから。お部屋に参りましょう? 撮るべきモノもございませんし」
コイツと一緒に、部屋に行きたくない。心のどこかで、そう感じる。しかし、断る理由が見つからない。仕方なしにシーモスを連れて、客間に戻る。
「……それで? 何がわかんねーんだ?」
「タイキ様。この、スマホ。もしかして『動く画』を撮れるのでは有りませんか?」
シーモスは複製したスマホを取り出して、カメラを起動する。
「ああ。動画も撮れる。動画の方が保存容量食うからそんなに長時間は撮れねーけどな」
カメラアプリをビデオモードにして、シーモスを撮影してやる。撮ったばかりの動画を再生すると、シーモスは「なるほど。これは……面白いものですね」とうなった。
「どう言う原理なのかは、俺にはわかんねーからその辺のことは聞かないでくれ」
「ええ、それは自分で考えます。これで、タイキ様を試しに撮ってみても?」
その位なら良いだろう。泰樹がうなずくと、シーモスはスマホを構えた。
「タイキ様、ほら、笑って下さいませ」
「まったく、俺なんか撮っても面白くもなんともねーだろ」
泰樹は照れたように、ふいとレンズから視線を背ける。
「……タイキ様。今は思い出して下さっても、よろしゅうございますよ」
シーモスが、不意につぶやいた言葉。それと同時に、一気に脳裏に蘇る、苦い記憶。
媚薬に浮かされ、良いようにもてあそばれた、あの夜。
「あ、あっ、あ……ぁあ?!?!」
どうして、なんで、忘れていたのだろう。あまりにもひどい記憶で、脳みその防衛本能とやらが働いたのか。
「……シーモス、てめぇ!!」
「申し訳ございません、タイキ様。貴方の記憶の一部を、封印させていただいておりました」
シーモスにも、流石に自分がやったことが泰樹を追い詰めると解っているのだろう。だからこそ、あの夜の記憶を封じた。
「……っ!」
腸が煮えくりかえる。身体の芯が、熱い。怒りで、脳みそがじんと痺れてくるような気がする。泰樹はそれを言葉にすることが出来ずに、シーモスの襟首を掴んだ。
一発殴ってやりたい。いや、一発では気が済まない。あんな、風に。薬を使って、人を良いようにしたことを後悔させてやりたい。
奥歯が欠けそうなほど、歯を食いしばる。
知らずのうちに泣けてきた。
「……なんで、記憶、戻したんだ……っ」
「忘れていらっしゃった方が、よろしかったですか?」
「……っ」
わからない。振り上げた拳をどうして良いのかも。記憶の中で、あの時確かに。シーモスの口車に乗って、それをねだったのは、『自分』なのだ。
襟を掴んでいた力が緩む。怒りと羞恥と後悔で、視界がぐるぐる揺れる。
「……ねえ、タイキ様。貴方が悔やむことなど、何もないのです。私は満足し、タイキ様は帰り道を見つける。これは良い取り引きだとお思いになりませんか?」
「とり、ひき……?」
シーモスの声が、耳元に聞こえる。それは甘く、柔らかく、愛の告白でもするように熱っぽい。
「はい。私がタイキ様を元の世界にお戻しするお手伝いをいたします。そのかわりに……ね?」
耳にかかる吐息。ああ、何を、言っているんだ、コイツは。
「私にも、多少の見返りが有っても、よろしいでしょう?」
「……もし、俺が、イヤだと言ったら?」
答えはわかっていても、問わずにはいられない。泰樹は絶望に沈む顔で、つぶやいた。
「貴方は一生、この『島』で暮らすのです。何もかもを諦めて」
シーモスは微笑む。華やかに。コイツは本気だ。泰樹がうんと言わなければ、元の世界に返す約束など捨ててしまうつもりだ。
「……俺に、何をしろ、って?」
「聞き分けの良い方は、大好きですよ」
泰樹は初めて、この世界に落ちてきたことを恨んだ。この『島』に落ちたことを憎んだ。
服を脱ぐように、と言われた。それを動画に撮られていることに気が付いた。だが、何だか素人モノのAVみてーだな。などと、他人事のように思う。
「……ほら、脱いだぞ」
素っ裸でベッドに腰掛ける。震えているのは肌寒さのせいでは無い。逆らいたくても逆らえない。喉元まで、腹立たしさが詰まって吐きそうだ。
「そう、でございますね。まずはご自分で楽しんでいただけますか? これ、差し上げますので」
そう言って、シーモスは小びんを寄越す。
「媚薬?」
表情を殺した泰樹は、つまらなそうに聞いた。いっそ、その方が良かったかも知れない。それなら、全てを媚薬のせいに出来るから。
「いいえ。今度こそ、本物の潤滑剤です」
「……」
泰樹は黙って、小びんのフタを開けた。トロリと粘つく液体を自身に落として、自慰を始める。
こんな状況で、こんな気持ちで、勃つ訳がない。何度やっても反応しないモノを、やけになって擦った。
「……う、っ……ひ、ぐっ……っ」
情けなくて、悔しくて。後から後から、涙があふれてくる。どうして。どうして俺がこんな目に。
「タイキ様。泣かないで下さいませ」
いつの間に側に寄ってきたのか。シーモスが、流れる涙を拭う。そのまま、顔を捕まえられて、自然に口付けられた。
少しでも拒絶しようとする歯列をなぞられ、そのままベッドに押し倒される。
――くそっ……コイツ、キス、上手い……
「……んっ……んう……っ」
流されまいとするのに。キスだけで蕩けそうだ。触れあわせる柔らかな舌が、甘い。ああ、キスってこんな気持ちの良いモノ、だったっけ?
すっかり夢中なって、行為に溺れる。
「ぁ……は、あ……っあ、あ……」
唇が離れていく。それが名残惜しくて、舌先で追ってしまう。
「タイキ様。たくさん、たくさん、気持ちよくして差し上げますから、ね?」
そんな宣言と共に、シーモスはキスの雨を降らす。同時に胸の先端、小さな粒に軽く爪を立てられ、弾かれる。
「……ん……っ」
こね回され、舌先で踊られる内に、それはぴんと尖り甘いしびれを伝え始めた。
「あ、……乳首、さわんな、よぉ……そんなトコ、感じねぇ、から……っ」
「そうですか? ではここで、もっと気持ちよくなっていただけるように、練習しましょうね?」
「ひ、ぁ……っ!」
ああ、やっぱ俺、おかしいんだ。キスされて乳首いじられただけなのに、こんなに気持ちいいなんて。
「なあ、シーモス。……チンコさわって……欲しい……頼むから、イかせて……」
コイツが触れてくれたら、あっさりイけそうな気がする。もう、いい。気持ちよくなって、それで家に帰れるなら。一体何が問題なんだ?
「駄目ですよ、タイキ様。タイキ様は今日から私の、愛玩物です。私が良いと言うまで、達したりなさらないで下さいね?」
シーモスの指が、後の門に触れてくる。そこはイヤだと言う代わりに、泰樹は唇を噛む。
「ここでも、もっと楽しんでいただけるようにして差し上げます」
うながされるまま足を開き、さらされる秘部にシーモスは遠慮無く潤滑剤を塗り込める。
「……っ! そこ、イヤだっ……へ、へんになる、からっ」
「大丈夫ですよ。たくさん、へんになってくださいね」
細く整った指が一本、括約筋を開かせて体内に入り込んでくる。それは優しいが、容赦もためらいもなく泰樹のなかを暴いていく。
「っ……やめろ、よぉ……っなか、かきまぜ、んな……っ」
まだ狭い内壁がひくりと震えて、指先を迎え入れる。それが、弱い場所を指がかすめていく度に、どうしようもなく物足りなさがつのって。
「あ、あぁ……ソコっ……! こりこり、すんなぁ……!」
知らなかったし、知りたくも無かった。自分が、こんなに快楽に流されやすいなんて。
「ふふふ。タイキ様は、素質がござますよ。その内、こちらだけでイけるようになられるかも。……ほら、もう2本増やして差し上げましょうね」
「ひぃ……ぅ……! あ、あ、……っ!」
3本の指の不規則な動きに、翻弄される。
たっぷりと時間をかけて、馴らされて。でも、まだ、後に受ける刺激だけではイききれない。とろん、と欲望に負けた瞳が、シーモスを見つめる。
「は、あ、ぁ……イきてぇ、よぉ……っも、げんかい、だから……っ」
泰樹の自身はとっくの昔によだれを垂らして、硬く血液を集めていた。
「そんな時は、おねだりして下さい。タイキ様。ちゃんとおねだりできたら、ご褒美を差し上げますよ?」
「は、ぐ、……し、シーモス、いじわる、すんなよぉ……お願い、だからぁ……イかせて……! アンタの、好きにして良い、からぁ……っ」
シーモスは泰樹を犯す手を止めて、唇に薄く悦に入った笑みを浮かべた。
「残念ですが、そそりませんね。もっとどこをどうして欲しいのか、具体的におっしゃっていただかないと」
体内をまさぐっていた指が、完全に離れていく。泰樹は涙目になりながら、思わずその手を取った。
「あ、あ、……まっ、て……言う、言うから……! ち、チンコ触って……それに、ケツも、もっと、奥までぐちょぐちょに、なるまで触って……気持ち良く、して、……ください……っ」
「……まあ、及第点といたしましょう。タイキ様がこうして、お顔を真っ赤にしておっしゃっているのですから。良く出来ました。ご褒美を受け取って下さい」
苦笑いを浮かべながら、シーモスは泰樹を腹ばいにさせて腰を上げるように言う。
よろけながらどうにか従った泰樹の背後から、すでに怒張していたモノを挿し入れる。体内は待ちわびていたようにひくついて、ソレを迎え入れた。
「あ、あ、あ! あひぅ……っ! ごり、ごりっ……きもち、いひ……っあ、ああっ……!」
根元までたっぷり飲み込ませて、腰ごと揺さぶるように抽挿する。同時に前側で期待に震えるモノを撫でてやると、それはあっけなく吐精した。
「いま、やめ、……イってる、イって、る、……からぁ……!」
敏感になりすぎた内壁は、びくびくと噛みつくように絡みついてくる。シーモスは、その最奥にたっぷりと射精した。
「ああ、タイキ様のお尻はとても素敵ですね……。これから、たくさん可愛がって差し上げますからね」
「ひ、ぅ、うぅん……っ! あ、あ、あ、……! ひ、ぁ……っ」
イったばかりの身体を、さらに責められる。泰樹は、シーモスの声など聞こえないかのようにただひたすら声を上げ続けた。
「今夜の記憶は、また封印しておきましょうね」
「……なんで?」
激しい交わりの後、体力の限界を感じながら横たわる泰樹に、シーモスは優しく微笑んだ。
「私、タイキ様には出来るだけ快活に過ごしていただきたいのです。タイキ様が私を見て、ご不快になられないように。私を憎んだり恨んだりなさらないように。それから、私たちの関係を、イリス様にはお知らせしないように」
自分がひどいことをしている、と言う自覚はシーモスにもあるようだ。これは完全に私の我が儘です。と彼は言う。
その横顔を見つめていた泰樹は、ふっと息をついて、唇を噛んだ。
「……いいよ。記憶は封印しなくて」
泰樹のつぶやきに、シーモスは驚いたように振り向いた。
「でも、その代わり。一つ、一つだけ、約束してくれ。俺が自分の世界に帰るときは……アンタとこうやって……その、寝た事は、忘れさせてくれ。それまでは、俺のこと、アンタの好きにして良いからさ。イリスにも、もちろん言わねーから」
抱かれるより、記憶いじられる方がムカつくから。と泰樹は言う。シーモスは気持ちを整理するように、ゆっくりと瞬きをした。
「……解りました。その時が参りましたら、必ず」
「頼んだぜ」そうつぶやいて、泰樹は目をつぶる。すぐに、穏やかな寝息が聞こえ始めた。
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