アルデリク家の兄弟

中頭かなり

文字の大きさ
上 下
8 / 23
弟の話

2

しおりを挟む
「……これ以上は、無理だよ」
「さっき、ちゃんと慣らしただろ」
「無理なものは無理だ。初めてだからきっと痛いに決まってる。兄ちゃんの反応を見たら、分かるだろ」

 快感のあまり、所々が上擦った声になってしまう。しかし、父は然程気にしていない様子だった。

「じゃあ、俺が慣らしてやるよ」

 父の方へ視線を投げる。深爪の無骨な指をくいくいと意味ありげに動かす姿を見て、唇を歪めた。絶対に兄へ触れさせたくなくて、腰を深く挿入する。ティエリが喉を反らせ、目を見開いた。はくはくと口を開閉させ声にならない音で喘ぐ兄。内部がキツく締まり、思わず前のめりになる。

「ぅ……ッ、いだ、い……」

 ティエリがボロボロと涙を流しながら俺の腕に爪を立てる。しかし、指先には力が籠っていない。いや、俺が興奮のあまり痛みを感じていないだけなのかもしれない。
 奥へ侵入させた性器をゆっくりと引き抜く。その度に兄が喉を反らせ喘いだ。とても可哀想に見え、早く射精せねばと腰を動かすが、しかし勿体無いという感情も芽生える。

「どうだ? 気持ちいいか?」

 この言葉は俺に向けてではない。ティエリに向けてだ。虚ろな瞳を彷徨わせた兄は、掠れた声で何かを呟いた。乾いた唇が妙に艶かしくて、彼の中に収めた性器が疼く。
 父がソファから立ち上がり、兄の前髪を掴んだ。グイと引っ張られ、痛みに顔を歪ませる。

「答えろ」
「き、も、ちいいです」
「やめろよ、父さん」

 ティエリを痛めつけているのは俺も変わらないのに、父に対して抵抗してみる。フンと鼻を鳴らし、ソファへ帰っていく彼の背中を見届け、なるべく早く腰を動かした。
 「もう、終わるから」。覆い被さり、彼の耳元で囁く。「あと少しだけ、我慢して」。彼は何も答えない。ただ苦しそうに喘ぎながら啜り泣くだけだ。
 興奮が絶頂に達する。彼の最奥に性器を叩きつけ、射精した。



 父が兄を殴るようになったのは、再婚相手であるティエリの母が別の男と浮気し、出ていった数日後だ。最初の頃は血眼になって母を探し回っていたが、この街から姿を消したと理解した途端、裏切られたという怒りが兄に降り注いだ。
 俺と兄は、血が繋がっていない。俺は父の連れ子で、兄は母の連れ子だった。二人が再婚したのは兄が九歳、俺が七歳の頃だ。初めての兄弟、そして新しい母に胸が高鳴っていたことが今でも鮮明に思い出せる。
 この平屋で、俺たちは穏やかな日々を過ごしていた。
 けれど、そんな日々は、母の浮気によって破壊された。父曰く、前々から不審な点は多々あったらしい。仕事の帰りが遅くなり、家事も儘ならない時もあったし、休日出勤だと言い張り、休みの日に外へ出掛けてたりしていた。
 その都度、父の苛立ちや不安が俺たちには手に取るように伝わっていた。喧嘩も絶えなかったし、父が母を殴りつける場面も見てきた。子供部屋へ駆け込み、ティエリと寄り添いながら嵐が過ぎるのを待ったりした。
 母が出ていった日の朝、俺はとうとうこの日が来たか、と何故か冷静に思った。意外だったのは、母が兄を連れて行かなかったと言う点だ。浮気をしていても、息子だけは愛していた彼女だ。母の中で「息子さえも捨てて自由の身になりたい」と言う感情が芽生えてしまったのだろう。そう思うたびに、居た堪れない気持ちになるのだ。

「あの売女にそっくりだ」

 口癖のように父が呟くたびに、いよいよ俺はこの家がまともじゃなくなると思った。
 ティエリは母のしでかしたことを理解し、ひどく混乱していた。同時に、母の代わりになろうとしていた。父に負担をかけまいと、家事を請け負っていた。
 しかし、献身的な兄に対し、父の苛立ちは膨らむ一方だった。兄の料理にケチをつけるところから始まった。焦げてる、味が薄い、不味い。決してケチをつけるレベルの料理ではないのに、彼は事あるごとに兄の料理を貶した。兄はその都度、料理を作り直しては罵倒を受ける。その繰り返しをしていた。
 言葉のナイフが暴力に変わり出したのは、数週間もかからなかった。
 「その顔が気に入らない」。そう告げ、兄を殴った父は罪悪感を抱いていない目をしていた。

「やめて!」

 鋭く叫び、止めに入った俺の制止で、ティエリの頬に二発目が飛んで来ることはなかった。父は俺を一瞥し、ようやく我にかえったのか、振り上げていた拳を下ろした。
 父は、殆ど怒りの矛先を俺に向けることはなかった。言葉遣いが昔より乱暴にはなったけど、それでも兄より酷い仕打ちは受けなかった。
 兄はことあるごとに暴力を受けていた。あの女に似ているから、というどうしようもない理由で殴られるティエリは、抵抗らしい抵抗を見せなかった。
 きっと、これは彼にとっての罪滅ぼしなのだろう。自分の母が犯した失態を、身をもって受け止めているのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

尻で卵育てて産む

高久 千(たかひさ せん)
BL
異世界転移、前立腺フルボッコ。 スパダリが快楽に負けるお。♡、濁点、汚喘ぎ。

公開凌辱される話まとめ

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 ・性奴隷を飼う街 元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。 ・玩具でアナルを焦らされる話 猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。

バイト先のお客さんに電車で痴漢され続けてたDDの話

ルシーアンナ
BL
イケメンなのに痴漢常習な攻めと、戸惑いながらも無抵抗な受け。 大学生×大学生

過ちの歯車

ニューハーブ
BL
私は子供の頃から、何故か同性に気に入られ沢山の性的被害(自分は被害だと認識していない)を 経験して来ました、雑貨店のお兄さんに始まり、すすきののニューハーフ、産科医師、ラブホのオーナー 禁縛、拘束、脅迫、輪姦、射精管理、などなど同性から受け、逆らえない状況に追い込まれる、逆らえば膣鏡での強制拡張に、蝋攻め、禁縛で屋外放置、作り話ではありません!紛れもない実体験なのです 自分につながる全ての情報を消去し、名前を変え、姿を消し、逃げる事に成功しましたが、やもすると殺されていたかも知れません。

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

無理やりお仕置きされちゃうsubの話(短編集)

みたらし団子
BL
Dom/subユニバース ★が多くなるほどえろ重視の作品になっていきます。 ぼちぼち更新

変態村♂〜俺、やられます!〜

ゆきみまんじゅう
BL
地図から消えた村。 そこに肝試しに行った翔馬たち男3人。 暗闇から聞こえる不気味な足音、遠くから聞こえる笑い声。 必死に逃げる翔馬たちを救った村人に案内され、ある村へたどり着く。 その村は男しかおらず、翔馬たちが異変に気づく頃には、すでに囚われの身になってしまう。 果たして翔馬たちは、抱かれてしまう前に、村から脱出できるのだろうか?

処理中です...