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弟の話
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「……これ以上は、無理だよ」
「さっき、ちゃんと慣らしただろ」
「無理なものは無理だ。初めてだからきっと痛いに決まってる。兄ちゃんの反応を見たら、分かるだろ」
快感のあまり、所々が上擦った声になってしまう。しかし、父は然程気にしていない様子だった。
「じゃあ、俺が慣らしてやるよ」
父の方へ視線を投げる。深爪の無骨な指をくいくいと意味ありげに動かす姿を見て、唇を歪めた。絶対に兄へ触れさせたくなくて、腰を深く挿入する。ティエリが喉を反らせ、目を見開いた。はくはくと口を開閉させ声にならない音で喘ぐ兄。内部がキツく締まり、思わず前のめりになる。
「ぅ……ッ、いだ、い……」
ティエリがボロボロと涙を流しながら俺の腕に爪を立てる。しかし、指先には力が籠っていない。いや、俺が興奮のあまり痛みを感じていないだけなのかもしれない。
奥へ侵入させた性器をゆっくりと引き抜く。その度に兄が喉を反らせ喘いだ。とても可哀想に見え、早く射精せねばと腰を動かすが、しかし勿体無いという感情も芽生える。
「どうだ? 気持ちいいか?」
この言葉は俺に向けてではない。ティエリに向けてだ。虚ろな瞳を彷徨わせた兄は、掠れた声で何かを呟いた。乾いた唇が妙に艶かしくて、彼の中に収めた性器が疼く。
父がソファから立ち上がり、兄の前髪を掴んだ。グイと引っ張られ、痛みに顔を歪ませる。
「答えろ」
「き、も、ちいいです」
「やめろよ、父さん」
ティエリを痛めつけているのは俺も変わらないのに、父に対して抵抗してみる。フンと鼻を鳴らし、ソファへ帰っていく彼の背中を見届け、なるべく早く腰を動かした。
「もう、終わるから」。覆い被さり、彼の耳元で囁く。「あと少しだけ、我慢して」。彼は何も答えない。ただ苦しそうに喘ぎながら啜り泣くだけだ。
興奮が絶頂に達する。彼の最奥に性器を叩きつけ、射精した。
◇
父が兄を殴るようになったのは、再婚相手であるティエリの母が別の男と浮気し、出ていった数日後だ。最初の頃は血眼になって母を探し回っていたが、この街から姿を消したと理解した途端、裏切られたという怒りが兄に降り注いだ。
俺と兄は、血が繋がっていない。俺は父の連れ子で、兄は母の連れ子だった。二人が再婚したのは兄が九歳、俺が七歳の頃だ。初めての兄弟、そして新しい母に胸が高鳴っていたことが今でも鮮明に思い出せる。
この平屋で、俺たちは穏やかな日々を過ごしていた。
けれど、そんな日々は、母の浮気によって破壊された。父曰く、前々から不審な点は多々あったらしい。仕事の帰りが遅くなり、家事も儘ならない時もあったし、休日出勤だと言い張り、休みの日に外へ出掛けてたりしていた。
その都度、父の苛立ちや不安が俺たちには手に取るように伝わっていた。喧嘩も絶えなかったし、父が母を殴りつける場面も見てきた。子供部屋へ駆け込み、ティエリと寄り添いながら嵐が過ぎるのを待ったりした。
母が出ていった日の朝、俺はとうとうこの日が来たか、と何故か冷静に思った。意外だったのは、母が兄を連れて行かなかったと言う点だ。浮気をしていても、息子だけは愛していた彼女だ。母の中で「息子さえも捨てて自由の身になりたい」と言う感情が芽生えてしまったのだろう。そう思うたびに、居た堪れない気持ちになるのだ。
「あの売女にそっくりだ」
口癖のように父が呟くたびに、いよいよ俺はこの家がまともじゃなくなると思った。
ティエリは母のしでかしたことを理解し、ひどく混乱していた。同時に、母の代わりになろうとしていた。父に負担をかけまいと、家事を請け負っていた。
しかし、献身的な兄に対し、父の苛立ちは膨らむ一方だった。兄の料理にケチをつけるところから始まった。焦げてる、味が薄い、不味い。決してケチをつけるレベルの料理ではないのに、彼は事あるごとに兄の料理を貶した。兄はその都度、料理を作り直しては罵倒を受ける。その繰り返しをしていた。
言葉のナイフが暴力に変わり出したのは、数週間もかからなかった。
「その顔が気に入らない」。そう告げ、兄を殴った父は罪悪感を抱いていない目をしていた。
「やめて!」
鋭く叫び、止めに入った俺の制止で、ティエリの頬に二発目が飛んで来ることはなかった。父は俺を一瞥し、ようやく我にかえったのか、振り上げていた拳を下ろした。
父は、殆ど怒りの矛先を俺に向けることはなかった。言葉遣いが昔より乱暴にはなったけど、それでも兄より酷い仕打ちは受けなかった。
兄はことあるごとに暴力を受けていた。あの女に似ているから、というどうしようもない理由で殴られるティエリは、抵抗らしい抵抗を見せなかった。
きっと、これは彼にとっての罪滅ぼしなのだろう。自分の母が犯した失態を、身をもって受け止めているのだ。
「さっき、ちゃんと慣らしただろ」
「無理なものは無理だ。初めてだからきっと痛いに決まってる。兄ちゃんの反応を見たら、分かるだろ」
快感のあまり、所々が上擦った声になってしまう。しかし、父は然程気にしていない様子だった。
「じゃあ、俺が慣らしてやるよ」
父の方へ視線を投げる。深爪の無骨な指をくいくいと意味ありげに動かす姿を見て、唇を歪めた。絶対に兄へ触れさせたくなくて、腰を深く挿入する。ティエリが喉を反らせ、目を見開いた。はくはくと口を開閉させ声にならない音で喘ぐ兄。内部がキツく締まり、思わず前のめりになる。
「ぅ……ッ、いだ、い……」
ティエリがボロボロと涙を流しながら俺の腕に爪を立てる。しかし、指先には力が籠っていない。いや、俺が興奮のあまり痛みを感じていないだけなのかもしれない。
奥へ侵入させた性器をゆっくりと引き抜く。その度に兄が喉を反らせ喘いだ。とても可哀想に見え、早く射精せねばと腰を動かすが、しかし勿体無いという感情も芽生える。
「どうだ? 気持ちいいか?」
この言葉は俺に向けてではない。ティエリに向けてだ。虚ろな瞳を彷徨わせた兄は、掠れた声で何かを呟いた。乾いた唇が妙に艶かしくて、彼の中に収めた性器が疼く。
父がソファから立ち上がり、兄の前髪を掴んだ。グイと引っ張られ、痛みに顔を歪ませる。
「答えろ」
「き、も、ちいいです」
「やめろよ、父さん」
ティエリを痛めつけているのは俺も変わらないのに、父に対して抵抗してみる。フンと鼻を鳴らし、ソファへ帰っていく彼の背中を見届け、なるべく早く腰を動かした。
「もう、終わるから」。覆い被さり、彼の耳元で囁く。「あと少しだけ、我慢して」。彼は何も答えない。ただ苦しそうに喘ぎながら啜り泣くだけだ。
興奮が絶頂に達する。彼の最奥に性器を叩きつけ、射精した。
◇
父が兄を殴るようになったのは、再婚相手であるティエリの母が別の男と浮気し、出ていった数日後だ。最初の頃は血眼になって母を探し回っていたが、この街から姿を消したと理解した途端、裏切られたという怒りが兄に降り注いだ。
俺と兄は、血が繋がっていない。俺は父の連れ子で、兄は母の連れ子だった。二人が再婚したのは兄が九歳、俺が七歳の頃だ。初めての兄弟、そして新しい母に胸が高鳴っていたことが今でも鮮明に思い出せる。
この平屋で、俺たちは穏やかな日々を過ごしていた。
けれど、そんな日々は、母の浮気によって破壊された。父曰く、前々から不審な点は多々あったらしい。仕事の帰りが遅くなり、家事も儘ならない時もあったし、休日出勤だと言い張り、休みの日に外へ出掛けてたりしていた。
その都度、父の苛立ちや不安が俺たちには手に取るように伝わっていた。喧嘩も絶えなかったし、父が母を殴りつける場面も見てきた。子供部屋へ駆け込み、ティエリと寄り添いながら嵐が過ぎるのを待ったりした。
母が出ていった日の朝、俺はとうとうこの日が来たか、と何故か冷静に思った。意外だったのは、母が兄を連れて行かなかったと言う点だ。浮気をしていても、息子だけは愛していた彼女だ。母の中で「息子さえも捨てて自由の身になりたい」と言う感情が芽生えてしまったのだろう。そう思うたびに、居た堪れない気持ちになるのだ。
「あの売女にそっくりだ」
口癖のように父が呟くたびに、いよいよ俺はこの家がまともじゃなくなると思った。
ティエリは母のしでかしたことを理解し、ひどく混乱していた。同時に、母の代わりになろうとしていた。父に負担をかけまいと、家事を請け負っていた。
しかし、献身的な兄に対し、父の苛立ちは膨らむ一方だった。兄の料理にケチをつけるところから始まった。焦げてる、味が薄い、不味い。決してケチをつけるレベルの料理ではないのに、彼は事あるごとに兄の料理を貶した。兄はその都度、料理を作り直しては罵倒を受ける。その繰り返しをしていた。
言葉のナイフが暴力に変わり出したのは、数週間もかからなかった。
「その顔が気に入らない」。そう告げ、兄を殴った父は罪悪感を抱いていない目をしていた。
「やめて!」
鋭く叫び、止めに入った俺の制止で、ティエリの頬に二発目が飛んで来ることはなかった。父は俺を一瞥し、ようやく我にかえったのか、振り上げていた拳を下ろした。
父は、殆ど怒りの矛先を俺に向けることはなかった。言葉遣いが昔より乱暴にはなったけど、それでも兄より酷い仕打ちは受けなかった。
兄はことあるごとに暴力を受けていた。あの女に似ているから、というどうしようもない理由で殴られるティエリは、抵抗らしい抵抗を見せなかった。
きっと、これは彼にとっての罪滅ぼしなのだろう。自分の母が犯した失態を、身をもって受け止めているのだ。
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