孤独な屋敷の主人について[完]

中頭かなり

文字の大きさ
上 下
34 / 35
秘密は柑橘の匂い

7

しおりを挟む
「あぅ、あ……っ、う゛ぅ……」

 はふはふと短く呼吸を繰り返す兄の頭を撫でる。薄い唇の隙間から見える舌が蠱惑的だ。

「……? ぼ、ぼく……? あれ……」

 射精した時とも、潮吹きした時とも違う感覚に混乱しているのだろう。兄がぼんやりとした瞳で下半身へ視線を投げる。手探りで自分の性器を触ろうとする彼は、とても幼く見えた。

「なに……?」

 萎えた性器へ指を這わせ、混乱しているカルベル。出さずに達することができた兄を褒めるため、頭を撫でる。戸惑った瞳が俺を見上げた。
 腰を揺らすと、彼は再び甘い声を漏らし始めた。

「あっ、あっ、……あぅ゛!」

 押し入り、最奥を叩く。バチュンと音が鳴り、彼の臀部と俺の股間がピッタリとくっつく。一番奥を感じたくて、びくつく腰を掴み押し付けた。

「────ッ……!」

 兄は目を見開き、声も出さずに喘ぐ。静かに涙を流し、体を小刻みに震わせた彼を抱きしめる。体を密着させたことで、更に性器が彼の体内へ入り込んだ。

「っ、お゛……!」

 苦しそうな声を上げる彼が愛しくて、我慢できずに腰を動かしてしまう。彼の入ってはいけない箇所に自身が侵蝕するたびに、脳の奥が焼けそうなほど興奮する。息が上がり、腰を打ちつける速度を落とすことができない。

「む、ぐち、ぐぅ゛……! だめ、だめ、ッ、……あっ!」
「……ッ!」

 潰れるほどの力で彼を抱きしめる。薄い体が腕の中で藻掻くたびに、締める力を強めた。そのまま、中に吐き出す。兄の腹の奥に自分の種を馴染ませるこの瞬間は、何よりも心地が良い。
 汗ばんだ体をカルベルから離し、口付けをする。震える舌が絡まり、強請るように唾液を啜られた。無意識に吸い付く彼が赤子のように見え、口角が上がる。

「ん、はぁ、は……ぁ……」

 唇を離し、兄を見下ろした。彼は疲労困憊という言葉通り、ぐったりとしていた。指先さえ動かせない彼の手を掴み、頬擦りをする。気がついたカルベルが穏やかに微笑んだ。

「無口、くん。すっごい、たくさん出たね。お腹、いっぱいだよ」

 掴んでいない反対の手で腹を緩やかに撫でる兄を見て、全身の汗が吹き出る。無垢な子供のように微笑む彼と発言の差に眩暈がした。

「……ねぇ、無口くん」

 返事をするように彼の手を握る。弱々しく握り返した細い指が、まるで小枝のようだ。

「こっちへ来て」

 青藤色の瞳が俺を捉える。いつもは綺麗に交わることのない視線が合致する瞬間、とてつもなく心臓が脈を打つ。本当に兄は目が見えていないのだろうか? もしかしたら盲目だと嘘をついて、俺を弄んでいるのかもしれない。そんな戯言がぐるぐると回る。ありえないことだとは分かっている。けれど、時々。本当にそんなことをふと考えてしまうのだ。
 目を弧にし、綺麗に笑む兄へ近づく。彼が首に腕を回し、抱きしめた。

「同じ、匂いだね」

 耳元で囁かれる。弟であるフォールが彼から受けた言葉と同じだが、しかし。その音には熱が孕んでいて、俺は優越感から声を上げて笑いたくなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

処理中です...