孤独な屋敷の主人について[完]

中頭かなり

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秘密は柑橘の匂い

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「────この匂いを嗅ぐと、フォールが頭をよぎる」

 カルベルがポツリと呟く。体を離し、兄の顔を覗き込むように見つめた。彼は目を伏せ、顔を真っ赤にしている。時折舌なめずりをして、言葉を続けるかどうか迷っていた。その唇を親指で拭ってやる。言葉を続けろと催促すると、彼が口火を切った。

「……プレゼントしてくれた日を思い出して、胸がポカポカするんだ……でも……」

 目元が朱を帯びる。無意識な色っぽい表情は、額縁に入れて飾っておきたいほど美しい。

「今日の、気持ちよかった事も思い出しちゃうかも、しれない」

 僕って、ダメなお兄ちゃんだ。そうひとりごち、彼が唇を噛み締めた。俺は出そうになった声を喉の奥で殺し、額に唇を押し付けた。
 これから兄はこのオイルを使うたびに、フォールがオイルを渡した日と、無口くんに涙が出るほど虐められた日を思い出すのだ。
 とても、気分が良かった。少しでも兄と弟である「フォール」との記憶に入り込めたことに。
 その記憶をより深いものにしたくて、彼に固く張った性器を押し付ける。兄がビクンと体を揺らし、なんとも言い難い表情を見せた。
 淫楽に興じる自分が恥ずかしいのだろう。彼は目を泳がせる。
 そんなカルベルに、無理をしなくて良いと言いたくて手を伸ばす。その柔い体を抱きしめ、もう一度ベッドへ押し倒した。
 ズボンを脱ぎ、性器を取り出す。挿れて良いか問うように後孔にピタリと寄せると、兄の眉間にシワが寄る。恥ずかしそうに下半身へ視線を投げ、浅く呼吸を繰り返した。
 強く拒絶しない兄を見て、ほくそ笑む。今から訪れる悦びから逃げられない彼は、俺の好み通りに躾けられている。
 瓶を手に取り、傾ける。オイルを性器と後孔に垂らすと、カルベルの腹が震えた。

「……いい匂い……」

 複雑そうな顔をしながら頬を染め、額に汗を滲ませた兄がひとりごちる。声を出さないように笑い、後孔へ亀頭を捩じ込ませた。ぬぷりと入り込んだ性器に背中を撓ませ、漏れる喘ぎを殺すために口元を抑えるカルベルは色っぽい。

「ん゛、ぅっ……!」

 中の感覚を楽しむため、時間をかけゆっくりと挿入する。奥へ侵蝕するたびに、脳がぐわんと揺れる。締め付ける内部と兄の喘ぎに、吐き気を覚えるほどの興奮が渦巻く。
 意図せず逃げようとする白い腰を掴み、固定する。先ほど潮を吹いた兄の性器はくたりと萎えているが、その先端からは透明な液体が漏れていて、欲情を煽られた。

「っ、あ゛、ん!」

 カルベルの体が大袈裟に弾む。薄い肩が震え、目をきつく瞑り快感に耐えていた。きっと亀頭が前立腺を抉ったのだろう。気分を良くしゴリゴリと箇所を攻めると、兄が泣き出す。

「そご、だめ゛、ぉ゛っ、……やめ、て、おね、が……!」

 やめてと懇願するくせに、その腰は刺激を求めてカクカクと動いているし、内部は優しく愛撫するように俺を包んでいる。
 ────本当に淫乱な人だ。
 まるでさも彼が元よりそうであったかの如く脳内で罵倒し、笑む。調教してここまで溺れさせたのは自分であるのに、それを棚に上げてしまう俺は彼が言う通り「いじわる」なのだろう。

「むぐぢ、ぐっ、ぅ~……! だ、め゛、ッ────」

 しこりを潰すように腰を動かし続けると、カルベルが悲痛な声を出す。体を激しく痙攣させながらベッドシーツを握りしめ、涙を流す兄。体内の締め付けが強くなり、俺は危うく達しかけ、息を止める。
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