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王子の秘密
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◇
目の前にフォールとあの男が居た。亜麻色の髪をした男は床に寝ており、その艶やかで柔い髪を散らせている。上にはフォールが覆い被さっていて、耳元へ口を寄せて何か楽しげに会話をしている。相手の男は擽ったいと身を捩るが、それをフォールが意地悪に追いかけていた。
────なんだこれ。
声が出ないことに気がつく。そこでようやく、ここが夢であることを知った。彼らが愉快げにクスクスと笑い合っているが、声はまるで水中にいるときのように音が振動せず、耳に届かない。
やがてフォールが男の服の中へ手を忍ばせた。隙間からあらわになった腹が見える。晒されたそこは心配になるほど真白く、それでいてきめ細やかだった。男は照れくさそうに顔を背けていた。その肌にフォールが歯を立てる。喉を仰け反らせ喘ぎ、亜麻色の髪を揺らす男の目は潤んでいて肉欲を唆られた。
真っ赤な舌が、陶器のような肌を這う。組み敷かれた男がビクビクと痙攣した。震える指先でフォールの頬を包み、緩やかに撫でる仕草はまるで母性を孕んだ女神のようで、見ているだけで眩暈がした。
相反してフォールは愛おしげに男へ視線を投げていたが、その目は執着に塗れていた。
もし仮に俺がこの場で、一秒でも亜麻色の髪をした男の肌に触れたら首をへし折られるのではないかというほどの瞳をしている。
何がそこまで、彼を狂わせているのだろう。そして、彼を狂わせるこの男の正体は一体何なのだろう。
目の前で舌を絡め合わせる二人を、ぼんやりとした視界の中で捉えていた。艶やかな唇が重なり合い、形を変えるたびにどうしようもない感情に襲われる。
粘り気のある音が、鮮明に鼓膜を撫でる。赤い舌が蛇のように見え、俺は唇を舐めた。
目の前にフォールとあの男が居た。亜麻色の髪をした男は床に寝ており、その艶やかで柔い髪を散らせている。上にはフォールが覆い被さっていて、耳元へ口を寄せて何か楽しげに会話をしている。相手の男は擽ったいと身を捩るが、それをフォールが意地悪に追いかけていた。
────なんだこれ。
声が出ないことに気がつく。そこでようやく、ここが夢であることを知った。彼らが愉快げにクスクスと笑い合っているが、声はまるで水中にいるときのように音が振動せず、耳に届かない。
やがてフォールが男の服の中へ手を忍ばせた。隙間からあらわになった腹が見える。晒されたそこは心配になるほど真白く、それでいてきめ細やかだった。男は照れくさそうに顔を背けていた。その肌にフォールが歯を立てる。喉を仰け反らせ喘ぎ、亜麻色の髪を揺らす男の目は潤んでいて肉欲を唆られた。
真っ赤な舌が、陶器のような肌を這う。組み敷かれた男がビクビクと痙攣した。震える指先でフォールの頬を包み、緩やかに撫でる仕草はまるで母性を孕んだ女神のようで、見ているだけで眩暈がした。
相反してフォールは愛おしげに男へ視線を投げていたが、その目は執着に塗れていた。
もし仮に俺がこの場で、一秒でも亜麻色の髪をした男の肌に触れたら首をへし折られるのではないかというほどの瞳をしている。
何がそこまで、彼を狂わせているのだろう。そして、彼を狂わせるこの男の正体は一体何なのだろう。
目の前で舌を絡め合わせる二人を、ぼんやりとした視界の中で捉えていた。艶やかな唇が重なり合い、形を変えるたびにどうしようもない感情に襲われる。
粘り気のある音が、鮮明に鼓膜を撫でる。赤い舌が蛇のように見え、俺は唇を舐めた。
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