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みずいらず
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「────む゛、ぐち、ぐ……こわ、こわい、こわい゛よ」
ボロボロと涙を流し始めた兄。震える指先で、腰を掴んだ手を剥がそうとしている。しかし、俺の力に勝てるはずもない。腰を引き、亀頭で前立腺を抉った。ひぎ、といつもの彼からは想像もできないほどの醜い声を上げ、目を見開く。
「あ゛っ、あーッ、……!」
そのまま勢いよく性器を叩きつけると、彼のものから液体が噴き出した。プシプシと漏れ出るそれに、俺は唖然とする。兄は背中を逸らせた後、糸が切れたように脱力した。茫然と空虚を眺めており、その瞳には恐ろしいほど色がない。浅く呼吸を繰り返す彼の腹とシーツには、滴ったそれが跡を残す。
「あっ、ぅ……ぼ、ぼく……」
やっと正気を取り戻したのか、下半身へ手を伸ばし、粗相した部分へ触れる。湿ったそれに眉を歪め、可哀想になるほど顔を赤らめた。
「うそ、ぼく、ぼく……」
きっと尿を漏らしたと思い込んでいるのだろう。だが、臭いもしないそれは間違いなく潮吹きだった。俺は初めて見たその光景と羞恥に濡れる兄を一秒でも見逃すまいと、瞬きせず脳裏に焼き付ける。
ごめんなさい、そんなつもりじゃなくて。弱々しい声音をこぼし、両手で顔を覆い隠す兄を見た俺は、動きを再開した。
その度に、彼の先端から液体が溢れ出る。目の前に広がる光景に、満足げに微笑んだ。
兄はやだ、やだ、と首を振って抵抗していた。しかし、止まれるはずもない俺は、何度も彼の体内を往復する。前立腺から結腸まで亀頭を滑らせると、兄が全身を震わせた。だめ、だめ、だめ。何度も鋭い声が漏れ、静寂が支配する部屋に響く。
「あ゛、も、だめ゛、ッむく、ちくん、だめ……やだ、あ゛っ、とま……って、ぼく、こわ゛れちゃ────」
ガツガツと打ち付ける度に、声が途切れる。その言葉を唇で抑え込み、兄の口内へ舌を捩じ込んだ。上顎を撫でながら先端を最奥へ叩きつけると、彼の喉が痙攣した。まさか、また達したのだろうか。
────淫乱な兄だ。
ぼんやりとした脳内で、そんな下品な言葉を兄にぶつける。彼の体を作り変えたのは弟である自分なのに、兄に責任転嫁をしてしまいたくなる。
元々、そういう素質があったんだろう。だからこんなに善がるのだ。意地悪な考えが浮かんでは消える。
喉の奥で死んだ言葉と共に兄の唾液を飲み下した俺は、彼の中で射精する。兄の中に吐き出す行為は、脳が痺れるほどの快感だ。ビクビクと脈打つそれが、彼の誰にも触れられたことがないような場所に到達し、実らない受精をしようと試みる。そう考えただけで、胸が締め付けられた。
ふと、脳裏で自分たちを見つめる父が浮かんだ。兄に欲情する俺を見たら、父はどんな反応をするのだろうか。兄を殺すのだろうか。俺を殺すのだろうか。両方を殺すのだろうか。それとも俺が求めるなら、と黙認するのだろうか。
どんな反応でも、俺にとっては無価値だった。
ただ、兄であるカルベルは俺だけのもので、父のものではない。それが事実である。
「あっ、はっ、ぁ、……はぁっ、は……」
荒い呼吸を繰り返し、涙と唾液を垂らす兄を見ていると、時々思うことがある。今、声を出してしまったらどんな反応をするのだろうか、と。意地が悪い思考が麻痺した脳内を蠢く。彼の驚く顔を想像し、無意識に口元が緩んだ。
「無口くん」
艶やかで形の良い唇が動く。震える指先で頬を撫でられ、胸が跳ねた。その手はとても火照っていて、心地よい。頬擦りすると、兄が穏やかに微笑んだ。
「大好き」
そんな柔らかい声音を授かって良いような人間ではない。俺は醜くて蔑まれるべき人間なのだ。
けれど、その声に応えてしまいそうになった。俺も好きだ。愛してる。そう伝えたくて、きつく抱きしめた。肺が圧迫されたのか、兄がカエルの潰れたような声を漏らした。
「あはは、甘えんぼ」
後頭部に手を回され、頭を撫でられる。その仕草に母性を感じてしまい、落ち着いた欲が再び鎌首を擡げた。何かを感じ取ったのか、兄が慌てる。
「もうだめだよ。疲れちゃった。寝よう?」
僕、無口くんと一緒に寝るの楽しみ。目を弧にし幼子のように微笑む彼に負け、俺は体を退かせた。
ボロボロと涙を流し始めた兄。震える指先で、腰を掴んだ手を剥がそうとしている。しかし、俺の力に勝てるはずもない。腰を引き、亀頭で前立腺を抉った。ひぎ、といつもの彼からは想像もできないほどの醜い声を上げ、目を見開く。
「あ゛っ、あーッ、……!」
そのまま勢いよく性器を叩きつけると、彼のものから液体が噴き出した。プシプシと漏れ出るそれに、俺は唖然とする。兄は背中を逸らせた後、糸が切れたように脱力した。茫然と空虚を眺めており、その瞳には恐ろしいほど色がない。浅く呼吸を繰り返す彼の腹とシーツには、滴ったそれが跡を残す。
「あっ、ぅ……ぼ、ぼく……」
やっと正気を取り戻したのか、下半身へ手を伸ばし、粗相した部分へ触れる。湿ったそれに眉を歪め、可哀想になるほど顔を赤らめた。
「うそ、ぼく、ぼく……」
きっと尿を漏らしたと思い込んでいるのだろう。だが、臭いもしないそれは間違いなく潮吹きだった。俺は初めて見たその光景と羞恥に濡れる兄を一秒でも見逃すまいと、瞬きせず脳裏に焼き付ける。
ごめんなさい、そんなつもりじゃなくて。弱々しい声音をこぼし、両手で顔を覆い隠す兄を見た俺は、動きを再開した。
その度に、彼の先端から液体が溢れ出る。目の前に広がる光景に、満足げに微笑んだ。
兄はやだ、やだ、と首を振って抵抗していた。しかし、止まれるはずもない俺は、何度も彼の体内を往復する。前立腺から結腸まで亀頭を滑らせると、兄が全身を震わせた。だめ、だめ、だめ。何度も鋭い声が漏れ、静寂が支配する部屋に響く。
「あ゛、も、だめ゛、ッむく、ちくん、だめ……やだ、あ゛っ、とま……って、ぼく、こわ゛れちゃ────」
ガツガツと打ち付ける度に、声が途切れる。その言葉を唇で抑え込み、兄の口内へ舌を捩じ込んだ。上顎を撫でながら先端を最奥へ叩きつけると、彼の喉が痙攣した。まさか、また達したのだろうか。
────淫乱な兄だ。
ぼんやりとした脳内で、そんな下品な言葉を兄にぶつける。彼の体を作り変えたのは弟である自分なのに、兄に責任転嫁をしてしまいたくなる。
元々、そういう素質があったんだろう。だからこんなに善がるのだ。意地悪な考えが浮かんでは消える。
喉の奥で死んだ言葉と共に兄の唾液を飲み下した俺は、彼の中で射精する。兄の中に吐き出す行為は、脳が痺れるほどの快感だ。ビクビクと脈打つそれが、彼の誰にも触れられたことがないような場所に到達し、実らない受精をしようと試みる。そう考えただけで、胸が締め付けられた。
ふと、脳裏で自分たちを見つめる父が浮かんだ。兄に欲情する俺を見たら、父はどんな反応をするのだろうか。兄を殺すのだろうか。俺を殺すのだろうか。両方を殺すのだろうか。それとも俺が求めるなら、と黙認するのだろうか。
どんな反応でも、俺にとっては無価値だった。
ただ、兄であるカルベルは俺だけのもので、父のものではない。それが事実である。
「あっ、はっ、ぁ、……はぁっ、は……」
荒い呼吸を繰り返し、涙と唾液を垂らす兄を見ていると、時々思うことがある。今、声を出してしまったらどんな反応をするのだろうか、と。意地が悪い思考が麻痺した脳内を蠢く。彼の驚く顔を想像し、無意識に口元が緩んだ。
「無口くん」
艶やかで形の良い唇が動く。震える指先で頬を撫でられ、胸が跳ねた。その手はとても火照っていて、心地よい。頬擦りすると、兄が穏やかに微笑んだ。
「大好き」
そんな柔らかい声音を授かって良いような人間ではない。俺は醜くて蔑まれるべき人間なのだ。
けれど、その声に応えてしまいそうになった。俺も好きだ。愛してる。そう伝えたくて、きつく抱きしめた。肺が圧迫されたのか、兄がカエルの潰れたような声を漏らした。
「あはは、甘えんぼ」
後頭部に手を回され、頭を撫でられる。その仕草に母性を感じてしまい、落ち着いた欲が再び鎌首を擡げた。何かを感じ取ったのか、兄が慌てる。
「もうだめだよ。疲れちゃった。寝よう?」
僕、無口くんと一緒に寝るの楽しみ。目を弧にし幼子のように微笑む彼に負け、俺は体を退かせた。
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