孤独な屋敷の主人について[完]

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みずいらず

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「怒っちゃったの? ぼく、なにか悪いこと、したかな?」

 回らぬ舌を必死に動かし、ごめんなさいと謝る彼を抱きしめる。体を強張らせた兄を誤解させたくなくて、背中を撫でた。
 いつもより興奮してしまい制御が効かなくなっていたことを反省し、俺は唇を噛み締める。口に出して謝罪したかったが声を出せばもっと彼を混乱させてしまうと思い、やりきれぬ気持ちを孕ませた。

「……怒ってない?」

 震える声を絞り出した彼の背中を何度も撫でる。良かったとひとりごちる兄が体を離し、軽くキスをした。

「無口くん、僕のこと嫌いにならないでね」

 無意識なのだろうが、しかし。媚びるような瞳で見つめられ、俺は庇護欲を掻き立てられ汗が滲んだ。嫌いになるわけがないと伝えたくて、その手の甲にキスを落とす。触れた感触に、兄が目を細めた。
 手を離し、そのまま臀部を揉む。ひゃ、と高い声を上げた彼が後頭部をシーツへ押し付けた。手に唾液を絡ませ、後孔を擽る。足先がビクンと震え、そこが締まった。

「あぅ、……っ、う……」

 未だに違和感があるのだろう。彼は額に汗を滲ませ、眉を顰めている。兄に苦痛を味合わせているのは自分なのだと自覚しつつ、その苦しそうな顔を堪能した。
 ────どんな表情も可愛い。
 きっと俺は余裕のない顔をしながら、それでもうっとりと蕩けただらしない表情で兄を見ているに違いない。不甲斐ない弟で申し訳ないとは思うが、彼のどんな仕草や表情にも欲を乱されるのだから仕方がないだろうとかぶりを振った。
 指を奥へ入れ込む。傷つけないようにとゆっくりと動かすが、同時に慣らしていない此処へ無理に性器をねじ込んでやりたいという願望もある。そうなったら、彼は怯えながら泣きじゃくるのだろうか。恐怖に濡れ、俺を蔑んだ目で見つめるのだろうか。

「あ゛、あー……ッ、あ……」

 前立腺を抉ると、兄が舌を出し喘いだ。的確にそこだけを虐めると、真白い体に汗が滲み、朱に染まる。彼へ快感だけを与えたくて、指を動かす。腰が浮き、彼が悶えだした。口の端から漏れる短い喘ぎが、まるで麻薬のように脳を溶かす。もっと、もっと悦んでほしい。俺だけに縋ってほしい。そう思いながら、彼の震える腹へキスを落とし、そのまま臍へ舌を入れ込む。

「あっ、あっ、いやっ、やだ、っ! そこっ、やっ……!」

 舌を動かすたびに、ぬちぬちと音が出た。もっと奥。彼の内部へ触れられたら、と狂気じみたことを考えてしまう。けれど、本当に触れてみたかった。後孔から内臓へ触れるだけでは飽き足らず、こんな部位からも彼の中へ触れてみたい。
 血の繋がった弟にそんなことを思われている兄がとても哀れに思え、内心自分を蔑む。
 硬い指先がふやけるまで彼の前立腺を抉っていると、内部が小刻みに収縮し始めた。体が震え、兄の喘ぎが鋭くなる。
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