永遠に君推し

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オメガに恋して

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「……彼はとにかく、色んな人間と遊びたがっていた。もちろん、性的な意味で。故に、僕とつがいであることを隠して欲しいと言われた。だから僕は、首輪を再び装着した。彼との関係を、もみ消すように」

 ルイが慣れた手つきで首輪を装着した。悲しげな瞳は伏せられたままだ。

「僕というつがいが居ながら、彼はアルファという立場を利用して、自由奔放に遊び回った。元々、彼を好きではなかったけれど、やはりつがいの立場から、その行動は不快に感じたんだ。だから────」

 彼が息を吸い込む。俺は黙って聞いていた。

「つがいを解消して欲しいって言ったんだ」

 つがいを解消? そんなことができるのか。俺はポカンと口を開けたまま、固まる。

「……けれど、彼は拒絶した。それどころか、暴力で僕を支配するようになったんだ」

 俺は夢を繰り返してきて、色んな死の場面に直面した。痛かったし、苦しかった。けれど、それまで以上の激痛が全身を襲った。耳鳴りがして、眩暈がした。気を抜いたらそのまま膝から崩れ落ちていたかもしれない。
 それほど、俺は激しい衝撃に襲われた。
 ────ルイを、暴力で支配する?
 口論があって、殴ったならまだ五億万歩譲って理解できる。(いや、実際のところ、全然理解できないが)しかし、暴力で彼を支配する? それは世間で言うところのDVじゃないか。

「別れてほしいと提案した僕を殴ってきたのが最初だった。その頃は、まだ彼も優しかった。「ごめん、感情的になりすぎた」って謝罪をしてくれた。けれど、それがどんどん日常的になってきて……」

 ルイはとうとう泣き出してしまった。俺は彼をすぐさま抱きしめる。こんなこと、許されてたまるか。好きな人は、優しく愛し、包み込み、労わるものなのだ。なのにこんな思いをさせるなんて。やはりあの福田という男をコテンパンに叩きのめすしかない。「そうだな、今すぐ行こうぜ」。脳内の天使が囁く。どうやら完全に寝返ったらしい天使にサムズアップする。よし、行こうぜ。

「……北埜くん、優しいね」

 その声で我に返る。脳内にいた叛逆の天使を手で払い、ルイを見つめる。彼は赤くなった目元を擦りながら鼻を啜っていた。

「北埜くんが彼氏だったら、良かったのにな……」
「やめてくれ、ルイ。その言葉は俺に効く」

 寝取られた挙句、そのセリフを吐かれたら、俺の性癖が歪んでしまいそうである。
 ルイから体を離し、見つめ合う。

「清泉。俺があいつにガツンと言ってやろうか?」
「だ、だめ、そんなことしないで!」

 慌てふためく彼に驚きを隠せない。きっと俺に事情を告げたこと自体、彼にとって不都合なのだろう。バレたら最後、再び殴られるのが目に見えているのだ。

「俺だって、弱っちいわけじゃない。清泉を絶対に守る」

 ルイの手を握り、訴えた。
 そうだ、今までそれこそ言葉通り、体を張って守ってきた。彼の盾になることなんて、余裕だ。
 しかし、彼には俺の決意は届いていないらしい。首を横に振り、額に汗を滲ませている。

「だめ、だめだよ……北埜くんを巻き込みたくない……」

 怯える彼は、まるで虐待されている犬のようだ。瞳を彷徨わせ、目に見えない恐怖に怯えている。
 ────クソ。こんな状況下に追い込んだ福田を絶対に許せない。
 俺は急いでポケットからスマホを取り出した。

「連絡先を交換しよう」
「え……」
「何かあったら必ず報告してくれ」
「だ、だめ……僕、スマホの中身、チェックされてて……」

 あの野郎、俺ですらルイのプライベートな部分に踏み込んだことないのに。ふざけた男だ、絶対に許さん。「やっぱり、殴りに行く?」。悪魔のような笑みを浮かべる天使が囁く。行きたいけどさぁ、ルイの立場が危うくなるのはさぁ、と眉を顰めた。

「で、でも……」

 彼がモジモジしながら、スマホを取り出した。

「使ってないアプリのメモ帳機能に、君の連絡先を書いてもいい? 何かあった時、連絡したいな……」

 控えめなトーンでそう言われ、俺は弾けたように大声で自分の電話番号を羅列した。「あ、あの……そんな大声じゃなくても、聞こえてるよ……」と、ルイが頬を緩める。
 やっぱり、ルイは泣き顔より笑った顔の方が美しいと、改めて思った。
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