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ナセリの話
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◇
別部署に勤めている研究員からタブレットを受け取る。中には今日から担当する虫の情報が入っている。どうやらムカデの幼虫だそうだ。ムカデは毒があると聞いたことがある。しかし、彼らにそういう心配はいらないらしい。
名前はセルジュ。性格は大人しく、あまり気性は荒くないそうだ。
様々な情報を頭に入れながら、研究所へ向かう。憂鬱な気持ちを抑え込みながら、吐きかけたため息を飲み込んだ。
「……!」
研究所内へ入った僕は、磨かれた床を這う生き物を見て唾液を嚥下した。ウネウネと体を動かした彼は、無数の脚を蠢かせながらこちらへ近づく。迫り来る恐怖に脚が震えた。手のひらに滲んだ汗を拭うことができないまま、一歩後ろへ退く。
「は、っ……初め、まして、セルジュ。ぼ、僕はナ、セリ。よ、よろしく……」
絡まる舌を必死に動かし、言葉を溢す。しかし、そんな僕を気にしていないのか、セルジュは脚元に近づいてきた。彼が距離を詰めるたびに、心臓が高鳴る。
「あ……の……」
やがて彼が脚首に絡まる。そのままずるずると体を這い上がってきた。息が儘ならなくなり、肩で呼吸を繰り返す。
セルジュが胸元から首元へ到達し、顔に近づいた。身体中に巻きつかれ、身動きが取れない。無数の脚が蠢く感覚が全身に広がる。
黒々とした瞳と見つめ合い、無理に笑顔を作った。
「せ、るじゅ」
首にぐるりと巻き付いた彼は、絞めるような仕草をした。 拒絶しようと身を動かすと、首に絡まっていたセルジュが力を込める。頸動脈を抑えられ、命の危機を感じた。口の中に唾液が溢れ、汗が滲む。震えが止まらなくなり、グッと唇を噛み締めた。
彼にバレないように監視カメラへ視線を投げた。どうやら、警護班は助けてくれないようだ。一筋の光さえ断ち切られた僕の浅い呼吸が、静かな研究所に響く。
「セルジュは、に、人間が嫌い、なの……かな?」
震えた声を絞り出した途端、また首を絞められた。ヒィと悲鳴を漏らし、手に持っていたタブレットを落とす。
けたたましい音が響き、その音に更に汗が滲んだ。
「ごめんね、もう、余計なこと、喋らないから……あっ」
彼の脚が耳に入り込む。カサカサとした不快な音が聞こえ、鳥肌がたった。唇を噛み締め、手のひらを握る。鼓膜を破られたらどうしよう。それ以上侵入されたら、どうなっちゃうんだろう。全身の血が冷え、心臓がバクバクと脈を打った。目の前が歪み、立っている脚が震えだす。
「せ、……せる、じゅッ……」
口を強制的に開かれ、舌を引っ張り出される。ダラダラと唾液が顎を伝い、溢れていく。歯列をなぞられ、品定めするように口内を撫で回す。舌の付け根を押され、嘔吐反射で前屈みになる。吐く寸前で脚がサッと退き、口内に胃液の苦味が広がった。
「はぁッ、はぁ……ッ、ぅ゛……」
唾液を何度も嚥下し、涙で歪んだ視界に映るセルジュを縋るように見つめる。セルジュはクリクリとした瞳でこちらを見つめていた。解放して欲しくて身じろぎをした寸前、ぎゅうと体を締め付けられ肺が圧迫される。「お願い、やめて」。悲痛な声は自分でも驚くほど震えていた。緩やかになる力に、胸を撫で下ろす。額から伝った汗が床に落ちた。セルジュがそれを脚で拭う。
「あ、ありがとう……」
紛れもなく僕を追い詰めているのは彼だが、現れる優しさに頬が緩む。
別部署に勤めている研究員からタブレットを受け取る。中には今日から担当する虫の情報が入っている。どうやらムカデの幼虫だそうだ。ムカデは毒があると聞いたことがある。しかし、彼らにそういう心配はいらないらしい。
名前はセルジュ。性格は大人しく、あまり気性は荒くないそうだ。
様々な情報を頭に入れながら、研究所へ向かう。憂鬱な気持ちを抑え込みながら、吐きかけたため息を飲み込んだ。
「……!」
研究所内へ入った僕は、磨かれた床を這う生き物を見て唾液を嚥下した。ウネウネと体を動かした彼は、無数の脚を蠢かせながらこちらへ近づく。迫り来る恐怖に脚が震えた。手のひらに滲んだ汗を拭うことができないまま、一歩後ろへ退く。
「は、っ……初め、まして、セルジュ。ぼ、僕はナ、セリ。よ、よろしく……」
絡まる舌を必死に動かし、言葉を溢す。しかし、そんな僕を気にしていないのか、セルジュは脚元に近づいてきた。彼が距離を詰めるたびに、心臓が高鳴る。
「あ……の……」
やがて彼が脚首に絡まる。そのままずるずると体を這い上がってきた。息が儘ならなくなり、肩で呼吸を繰り返す。
セルジュが胸元から首元へ到達し、顔に近づいた。身体中に巻きつかれ、身動きが取れない。無数の脚が蠢く感覚が全身に広がる。
黒々とした瞳と見つめ合い、無理に笑顔を作った。
「せ、るじゅ」
首にぐるりと巻き付いた彼は、絞めるような仕草をした。 拒絶しようと身を動かすと、首に絡まっていたセルジュが力を込める。頸動脈を抑えられ、命の危機を感じた。口の中に唾液が溢れ、汗が滲む。震えが止まらなくなり、グッと唇を噛み締めた。
彼にバレないように監視カメラへ視線を投げた。どうやら、警護班は助けてくれないようだ。一筋の光さえ断ち切られた僕の浅い呼吸が、静かな研究所に響く。
「セルジュは、に、人間が嫌い、なの……かな?」
震えた声を絞り出した途端、また首を絞められた。ヒィと悲鳴を漏らし、手に持っていたタブレットを落とす。
けたたましい音が響き、その音に更に汗が滲んだ。
「ごめんね、もう、余計なこと、喋らないから……あっ」
彼の脚が耳に入り込む。カサカサとした不快な音が聞こえ、鳥肌がたった。唇を噛み締め、手のひらを握る。鼓膜を破られたらどうしよう。それ以上侵入されたら、どうなっちゃうんだろう。全身の血が冷え、心臓がバクバクと脈を打った。目の前が歪み、立っている脚が震えだす。
「せ、……せる、じゅッ……」
口を強制的に開かれ、舌を引っ張り出される。ダラダラと唾液が顎を伝い、溢れていく。歯列をなぞられ、品定めするように口内を撫で回す。舌の付け根を押され、嘔吐反射で前屈みになる。吐く寸前で脚がサッと退き、口内に胃液の苦味が広がった。
「はぁッ、はぁ……ッ、ぅ゛……」
唾液を何度も嚥下し、涙で歪んだ視界に映るセルジュを縋るように見つめる。セルジュはクリクリとした瞳でこちらを見つめていた。解放して欲しくて身じろぎをした寸前、ぎゅうと体を締め付けられ肺が圧迫される。「お願い、やめて」。悲痛な声は自分でも驚くほど震えていた。緩やかになる力に、胸を撫で下ろす。額から伝った汗が床に落ちた。セルジュがそれを脚で拭う。
「あ、ありがとう……」
紛れもなく僕を追い詰めているのは彼だが、現れる優しさに頬が緩む。
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