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 冷房が効き始める間も待たずに、秋斗が僕をベッドへ押し倒した。柔軟剤と汗の匂いが混じり、鼻腔を擽る。肩を押し返しながら、シャワーを浴びたいと申し出た僕を無視し、秋斗が首筋へ鼻を埋める。

「平気だよ」

 秋斗からは制汗剤の匂いがした。学生時代によく嗅いだ、爽やかな匂いに懐かしさを感じる。先ほどまで学生として部活動を勤しんでいたのだと思うと、下半身が疼いた。同時に、自分の浅はかさと醜さに絶望する。
 ────僕、ロリコンじゃん。
 あ、男の子だと呼び方が違うんだっけ? そんなことを思っていると、秋斗が首筋に吸い付いた。唇の端から小さな喘ぎが漏れる。
 薄い皮膚を厚い舌が舐め上げる。その度に腰が動いてしまい恥ずかしさで顔が赤くなった。

「……しょっぱい」

 耳元で囁かれ羞恥で背中に汗が滲んだ。やはりシャワーを浴びたいと言いかけた唇を、ゴツゴツとした手のひらが塞ぐ。まるで察しているかのような反応だ。
 再び舌が首筋を這った。鎖骨まで滑り、愛おしげにそこを舐め回す。時折吸い付く動作に、脳の奥がぼんやりとしてきた。

「服、脱いで?」

 やけに優しい声音が鼓膜を撫でる。僕はまともな思考もできないまま頷いた。のろのろと上半身を起こし、服を脱ぐ。秋斗も制服の襟元を緩め、スラックスを脱いだ。グレーの下着が視界に入り、不意に頬が染まる。

「ちょっと吸い付いただけなのに、もうとろとろになってんの?」

 秋斗の指先が、汗ばんだ僕の額を拭う。張り付いた髪の毛を掻き上げながら、笑った。小馬鹿にするような表情に、羞恥心をくすぐられる。
 年下に馬鹿にされたという怒りもあるが、同時に図星だったのだ。
 そう。僕は彼に押し倒され、首筋を舐められただけで堕ちそうになっていた。

「ち、違う!」
「でも、目が潤んでるし……なんかぼんやりしてるけど?」

 目元にキスをされ、体が跳ねた。秋斗に揶揄われるほど、情けない表情をしていたのかと思い知り顔を伏せる。

「ちょっと、暑さにやられただけ、だから」
「へぇ」

 脱ぎ終えた服を彼が掻っ攫った。そのままベッド脇へポイと放り投げる。再びベッドへ押し戻され、秋斗を見上げる形になった。
 見下ろす彼は、野兎を狙う狼のように恐ろしかった。唾液を音を立てて飲み込むと、秋斗が肩を揺らし笑った。

「すごい目だね」
「え?」
「怯えてるのに、興奮してる目だ。期待してるって、そう訴えかけてる」

 戯言だ。そんなこと。けれど、そうじゃないと自分がわかっていた。心臓が脈を打ち、鼓動を早める。
 何も言い返さない僕の胸元に、舌を這わせた。悲鳴のような声が溢れ、自分でも驚愕する。ちゅ、と音を立てて吸われると、足先が震えた。舌先で愛撫されるたびに、目の前がチカチカと点滅する。脳天からつま先まで電気が走ったように痺れた。
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