ナイくんの悲劇

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「は、はぁ、は、あ……、あー……」

 放たれたそれは、尿の臭いを漂わせていない。これはなんなのだろう、と意識を手放しかけている脳内で考える。
 彼は気絶しかけている僕を起こすように、結腸に包まれた性器を動かし始めた。
 再び、痛みと快楽が僕を支配する。

「ぎゃ、う゛! とまッでえ゛えぇ…ッ、お、おぐ、おぐ、こわい゛ぃ……っ!」

 みっちりと体内におさまったそれは、しかし更に奥へと侵食を試みる。腹を突き破られてしまうのではないかという恐怖が支配する。だが────。

「あ、っひ、あ゛、あぁっ、あ、っ、そこ、だめっ、ごりって、しない、でぇ゛っ!」

 恐怖で泣き出して、狂ってしまいたいのに、快楽を無理やり押し付けられ、強制的に感受させられ、喘いでいる僕がいる。善い部分を何度も硬い亀頭で愛撫され、無意識に腰を動かしてしまっている。その箇所を触って欲しくて、仕方がないと、体が反応している。
 僕は、頭がおかしくなったのかもしれない。こんなことをされて、喜んで、喘いで、身を委ねて。僕は、僕は、僕は────僕は、もう元には戻れないのかもしれない。

「お、ほっ!? ン、あぁ゛! あー……っ! い、ぐ、っ、また、い゛、ぐ、っ────!」

 視界が霞むと同時に、眩暈がするほどの快楽が全身を支配する。強制的に射精させたいのか、モンスターがしこりを嬲り続けている。目の前がチカチカと点滅を繰り返し、呼吸ができなくなった。

「~────……ッ!」

 背中を撓ませ、声も出せないまま射精する。折れていない方の手で、地面を引っ掻いた。

「は、はっ、は、ッ、は……」

 呼吸が上手くできず、必死に酸素を肺に送り込む。性器はすでに勃起しておらず、先端からちょろちょろと体液をこぼしているだけだった。射精したのかどうかさえ分からぬまま、しかし達した後のふわふわとした快楽に包まれる。

「ん、ああ゛あぁ、ッ!? い゛イった、イッたから、も、やめでぇ゛!」

 射精したばかりにも関わらず、モンスターは胎内にあるしこりを撫で続ける。まるで僕を嘲笑っているようだった。
 ────だめだ、これ以上は、本当に、頭がおかしく、な……。
 霞む視界の中、モンスターが愉快そうな表情を浮かべている。蠢く下腹部を見ながら、涙がポロリとこぼれ落ちた。

「お、どう、さ……だすげで……」

 父の背中が途切れゆく意識の中で浮かぶ。早く見つけ出してほしい、助けてほしい。この地獄から、早く、早く。



 僕はいつの間にか気絶していたらしい。目覚めると朝日が泉に差し込んでいた。反射した光が目を刺す。思わず顔を背けた。
 上半身を起こす。周りを見渡したが、モンスターはいない。まだ微睡を残す脳内で、あれは夢だったのかもしれないという淡い期待が滲んだ。しかし、全身の痛みが、その期待は幻だと現実を突きつける。
 足首を確認すると、手遅れなほど腫れ上がっている。動かそうとするが、全く反応しない。ズキズキと鈍い痛みが駆け、唾液を嚥下する。
 ふと、下腹部に違和感を覚えた。視線を投げ、そこを撫でてみる。

「う、そ……」

 勘違いではない。少し張っている。そう理解した途端、体に汗が滲んだ。呼吸が乱れ、目の前が歪む。途端に吐き気を覚え、それをなんとか堪える。
 ────どうして、こんなに早く……?
 僕の体は、確実に変化していた。震える指先で、腫れ物に触れるようにそこを撫でる。薄い皮膚越しに、そこに何かが居座っている。僕は自分の体が恐ろしくなり、ガクガクと震えた。
 ────きっと人間の常識では考えられない速度で成長するんだ。
 想像し、ゾッとした。脳裏を両親や友人たちが過ぎる。穏やかに微笑む彼らを思い出し、息を呑んだ。
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