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「きゃあ」
鋭い悲鳴が鼓膜に届き、弾けるように体が反応した。持っていたシャープペンシルを机に放り投げ、自室から飛び出す。勢いよく階段を駆け下り、リビングのドアを蹴破るように開けた。
「シュンくん、やめて」
母が部屋の隅で怯えるように蹲っている。その近くには弟であるシュンが立っていた。拳を握り締め、今にも母に殴りかかりそうな弟。そんな姿が視界に入り、背中に冷や汗がだらりと滲む。二人の間に割って入り、弟の前に立ち塞がった。
「シュン、どうしたんだよ」
「コイツが熱いお茶を出したんだ。俺は冷たいのが飲みたかったのに」
二人の間には水溜まりができており、コップが近くに転がっていた。母が小声で、ごめんね、と繰り返している。大きく深呼吸をして、自分よりも幾分か背の高い彼を見上げる。
「落ち着け、な? 母さんも悪気があったわけじゃないんだから。お茶なら僕が淹れるよ」
「……もういい」
怒りが収まらないのか、眉間に皺を寄せた弟がそう吐き捨てる。そのまま僕の手首を掴み、引き摺るようにリビングを出た。
「ユウキくん」
「大丈夫だから。リビングを汚してごめんね」
母が泣きじゃくりながら僕の名前を呼ぶ。悲痛なその声に、笑って返事をした。夕飯できたら呼んでと言い残し、シュンと一緒に二階へ上がる。
掴まれた手首が痛くて、僕はひどく穏やかな声で彼を宥めた。機嫌直せよ、とか。一人で歩けるから、とか。しかし、弟の沸騰した脳みそには浸透しないらしい。階段を登った彼は、自室へ僕を連れ込もうとした。グッと足に力を込め、なるべく一階に聞こえないよう小声で話す。
「お前の部屋じゃなくて、僕の部屋に行こう」
「……」
抵抗がよほど気に入らなかったのか、憎悪を孕んだ目で僕を睨む。
「だってさ、お前の部屋ローションもゴムも無いだろ。だから────」
「うるさい」
ドアが開き、そのまま部屋へ押し込まれる。勢いで足が縺れ、カーペットの上に転んでしまった。痛みに顔を顰めていると、弟が跨ってきた。首へ手をかけ、グッと力を込められる。
「黙っていうこと聞けよ」
ボソリと抑揚のない声でそう言われ、全身から力が抜ける。乱暴に口内へ舌を捩じ込まれ、僕は目を瞑った。
鋭い悲鳴が鼓膜に届き、弾けるように体が反応した。持っていたシャープペンシルを机に放り投げ、自室から飛び出す。勢いよく階段を駆け下り、リビングのドアを蹴破るように開けた。
「シュンくん、やめて」
母が部屋の隅で怯えるように蹲っている。その近くには弟であるシュンが立っていた。拳を握り締め、今にも母に殴りかかりそうな弟。そんな姿が視界に入り、背中に冷や汗がだらりと滲む。二人の間に割って入り、弟の前に立ち塞がった。
「シュン、どうしたんだよ」
「コイツが熱いお茶を出したんだ。俺は冷たいのが飲みたかったのに」
二人の間には水溜まりができており、コップが近くに転がっていた。母が小声で、ごめんね、と繰り返している。大きく深呼吸をして、自分よりも幾分か背の高い彼を見上げる。
「落ち着け、な? 母さんも悪気があったわけじゃないんだから。お茶なら僕が淹れるよ」
「……もういい」
怒りが収まらないのか、眉間に皺を寄せた弟がそう吐き捨てる。そのまま僕の手首を掴み、引き摺るようにリビングを出た。
「ユウキくん」
「大丈夫だから。リビングを汚してごめんね」
母が泣きじゃくりながら僕の名前を呼ぶ。悲痛なその声に、笑って返事をした。夕飯できたら呼んでと言い残し、シュンと一緒に二階へ上がる。
掴まれた手首が痛くて、僕はひどく穏やかな声で彼を宥めた。機嫌直せよ、とか。一人で歩けるから、とか。しかし、弟の沸騰した脳みそには浸透しないらしい。階段を登った彼は、自室へ僕を連れ込もうとした。グッと足に力を込め、なるべく一階に聞こえないよう小声で話す。
「お前の部屋じゃなくて、僕の部屋に行こう」
「……」
抵抗がよほど気に入らなかったのか、憎悪を孕んだ目で僕を睨む。
「だってさ、お前の部屋ローションもゴムも無いだろ。だから────」
「うるさい」
ドアが開き、そのまま部屋へ押し込まれる。勢いで足が縺れ、カーペットの上に転んでしまった。痛みに顔を顰めていると、弟が跨ってきた。首へ手をかけ、グッと力を込められる。
「黙っていうこと聞けよ」
ボソリと抑揚のない声でそう言われ、全身から力が抜ける。乱暴に口内へ舌を捩じ込まれ、僕は目を瞑った。
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