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白紙に黒
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◇
「死んでるのか?」
男たちがすでにいなくなった部屋の中。ぐちゃぐちゃになったルタの肩を蹴り、ゴドフリーが笑った。ルタは蹴られたにも関わらず、ぴくりとも動かない。ただ浅く呼吸をしながら、遠い目でどこかを見ている。口の端から嘔吐物(といってもほぼ胃液と性液だ)を吐いていて、俺はそれを親指で拭った。
「生きてるよ。多分、これが副作用だな」
意識が朦朧として動かないルタの前髪を掻き上げる。頬を軽く叩いても、彼はなにも反応をしなかった。動かしたくても体がいうことを聞かないのか、指ひとつさえも、神経が通っていないように固まっている。
「隊長」
話しかけても、スカイブルーの瞳はこちらを見ない。隣にいたバグシが「本当に大丈夫か?」と心配げな声をあげた。
先程まで甘えながら行為を迫るルタに、鼻の下を伸ばして腰を振っていた男とは思えない彼に片眉を上げつつ「大丈夫だって」と返す。
「息だってしてる。薬の影響でハイになって、一気に落ちただけだって。よくあることだ」
肩を竦めると、バグシは「だからこそ、大丈夫かって聞いてんだよ」と唇を曲げる。
「使い続けたら、廃人になったりしないか?」
「そうなる前に、薬を継続的に使って、ずっとハイにさせとけばいいだろ」
バグシの言葉に被せるように、ゴドフリーが笑いながら言った。悪趣味なその提案に、俺は意図せず笑う。バグシは「冗談でもそういうこと言うなよ」と若干不満げだった。
「まぁ、だよな。俺、どっちかというとこっちのルタの方が好みだから、定期的に堕としてくれると助かる」
ゴドフリーがルタの足を掴み、ぐいと引き寄せた。抵抗を見せないルタは、まるで綿が詰まっていないぬいぐるみのように軽々と引き摺られる。
ニタニタと笑うゴドフリーは腰を屈め、グッとルタの首に手をかける。手の甲に血管が浮き出るほどの力を込め、首を絞めた。指の全てが、薄い皮膚に食い込んでいる。ルタの目に、徐々に光が帰ってきた。微かに震える手で、ゴドフリーの指を取ろうと必死に引っ掻いている。
「ッ、はっ、はっ」
舌をだらりと出し藻掻くルタの唇へ吸い付いたゴドフリーは、目を細めうっとりとしていた。呼吸ができず、苦しそうにしているルタが愛しいのか、さらに指先に力を込めている。
本当に悪趣味だなと思いつつ「やめとけよ、死ぬぞ」と制した。
「俺がルタを殺すわけないだろ。こんなに愛しているのに」
口の周りを唾液で濡らしたゴドフリーが、いやに悦に浸った笑みで俺を見る。彼の下でやっと肺に酸素を取り込むことが出来たらしいルタは、ぐったりとしながら胸元を大きく上下させた。
「なぁ? ルタ」
無骨でカサついた指が、ルタの頬を撫でる。うんともすんとも言わない彼は、ただひたすらに茫とした瞳をしていた。
再びルタの首に手をかけたゴドフリーを見つめ、ルタが正気に戻るのは何時間後なのだろうかと耽った。
「死んでるのか?」
男たちがすでにいなくなった部屋の中。ぐちゃぐちゃになったルタの肩を蹴り、ゴドフリーが笑った。ルタは蹴られたにも関わらず、ぴくりとも動かない。ただ浅く呼吸をしながら、遠い目でどこかを見ている。口の端から嘔吐物(といってもほぼ胃液と性液だ)を吐いていて、俺はそれを親指で拭った。
「生きてるよ。多分、これが副作用だな」
意識が朦朧として動かないルタの前髪を掻き上げる。頬を軽く叩いても、彼はなにも反応をしなかった。動かしたくても体がいうことを聞かないのか、指ひとつさえも、神経が通っていないように固まっている。
「隊長」
話しかけても、スカイブルーの瞳はこちらを見ない。隣にいたバグシが「本当に大丈夫か?」と心配げな声をあげた。
先程まで甘えながら行為を迫るルタに、鼻の下を伸ばして腰を振っていた男とは思えない彼に片眉を上げつつ「大丈夫だって」と返す。
「息だってしてる。薬の影響でハイになって、一気に落ちただけだって。よくあることだ」
肩を竦めると、バグシは「だからこそ、大丈夫かって聞いてんだよ」と唇を曲げる。
「使い続けたら、廃人になったりしないか?」
「そうなる前に、薬を継続的に使って、ずっとハイにさせとけばいいだろ」
バグシの言葉に被せるように、ゴドフリーが笑いながら言った。悪趣味なその提案に、俺は意図せず笑う。バグシは「冗談でもそういうこと言うなよ」と若干不満げだった。
「まぁ、だよな。俺、どっちかというとこっちのルタの方が好みだから、定期的に堕としてくれると助かる」
ゴドフリーがルタの足を掴み、ぐいと引き寄せた。抵抗を見せないルタは、まるで綿が詰まっていないぬいぐるみのように軽々と引き摺られる。
ニタニタと笑うゴドフリーは腰を屈め、グッとルタの首に手をかける。手の甲に血管が浮き出るほどの力を込め、首を絞めた。指の全てが、薄い皮膚に食い込んでいる。ルタの目に、徐々に光が帰ってきた。微かに震える手で、ゴドフリーの指を取ろうと必死に引っ掻いている。
「ッ、はっ、はっ」
舌をだらりと出し藻掻くルタの唇へ吸い付いたゴドフリーは、目を細めうっとりとしていた。呼吸ができず、苦しそうにしているルタが愛しいのか、さらに指先に力を込めている。
本当に悪趣味だなと思いつつ「やめとけよ、死ぬぞ」と制した。
「俺がルタを殺すわけないだろ。こんなに愛しているのに」
口の周りを唾液で濡らしたゴドフリーが、いやに悦に浸った笑みで俺を見る。彼の下でやっと肺に酸素を取り込むことが出来たらしいルタは、ぐったりとしながら胸元を大きく上下させた。
「なぁ? ルタ」
無骨でカサついた指が、ルタの頬を撫でる。うんともすんとも言わない彼は、ただひたすらに茫とした瞳をしていた。
再びルタの首に手をかけたゴドフリーを見つめ、ルタが正気に戻るのは何時間後なのだろうかと耽った。
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