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恋煩い
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「シルヘル……銃の扱い方は、ジェスに教わってくれ」
「えー! ルタ、約束が違うよ!」
「彼女の方が、きっとうまく教えることができるよ」
後ろの方から歩み寄ったジェスが「私で我慢しなさい」と微笑む。シルヘルは頬を膨らませて抗議の声を上げていたが、納得したのか了承の返事をした。
ルタはシルヘルの小さな頭を撫で、無理に笑みを作って彼女を宥めていた。その表情に腹の奥が疼き、煮えるのが分かる。無意識に鼻息が荒くなり、それを押し殺した。
────今、犯したらどうなるのだろう。
欲が体内で巡り、ぐつぐつと音を立て沸騰する。俺の熱視線に気がついたのか、ルタが目を伏せた。
「シルヘル。ルタに迷惑をかけるな」
シルヘルの頭を撫でると、ルタの呼吸が乱れる。汗をダラダラとかきながら、シルヘルをゆっくりと俺から引き離した。同時に、後ろにいたルパートが「そろそろ切り上げよう」と声をあげる。
ルタが「じゃあ、僕はこの辺で。いい子にしてるんだよ」と告げ、シルヘルをジェスに渡し、頬を引き攣らせた。下手な笑みだなと思いつつ、彼の肩に手を置く。指先に力を込め、自分の方へ引き寄せた。ルタの身が強張るのを感じる。
「じゃ、じゃあね、ジェス。シルヘル。また、今度……」
縺れた舌を必死に動かし平静を装った彼の異変に、ジェスは不審がっていたが、シルヘルの「バイバイ」という声音につられ、彼女も手を振った。何か言いたげな雰囲気を醸し出していたが、踵を返し、Aエリアへ帰っていく。
俺たちもその様子を見届け、Bエリアに帰った。
「ルタ」
落ち合った場所から数メートル離れた時点で、ルタが途端にふらりと体をぐらつかせた。
ルタの肩に置いていた手を外し、頬を撫でる。冷えたそこは色を無くし、じっとりと湿っていた。
「ぅ゛、お、ぇっ……」
緊張の糸が切れたのか、ルタが前のめりになり胃液を吐き出す。口の端に垂れた唾液を拭ってやり、抱き寄せる。
「ルタ、余計なことを言わなかったんだな。いい子だな」
労わるように頭を撫でる。嗚咽を漏らしながら蹲った彼に、バグシが手を伸ばし支えた。ゼェゼェと掠れた呼吸を繰り返すルタが、震えた声を漏らす。
「いいこに、いいこにする、から」
「お願いだから、誰にも手を出さないで」。恐怖からくる震えで舌足らずになったルタが、途切れとぎれに呟く。「可愛いな、ルタ」。思わずひとりごちた俺を、バグシが一瞥する。
「早く帰ろう。みんなが待ってるぞ」
穏やかに微笑み、手を引く。ルタは眉を歪め、今にも泣き出しそうだ。足取りが重いのか、それとも地面に踏ん張っているのか、その体は動かない。曇る表情は、今から再び訪れる地獄に絶望している様子だ。彼の恐怖がひしひしと伝わり、血が躍る。
帰ったら一番最初に俺が抱きたいな。服を着たままの彼に、押し入りたい。衣類を剥ぎ、その尊厳を壊したい。自分が供物であると再確認させ、逃れられない運命なのだと教えてやりたい。
想像をするだけでワクワクした。鼻歌を歌い出したい気分になり、意図せずに頬が緩む。
まるで初恋のうぶな気持ちに似ている。俺は彼の冷たい手を、汗ばんだ手のひらで握り込んだ。
「えー! ルタ、約束が違うよ!」
「彼女の方が、きっとうまく教えることができるよ」
後ろの方から歩み寄ったジェスが「私で我慢しなさい」と微笑む。シルヘルは頬を膨らませて抗議の声を上げていたが、納得したのか了承の返事をした。
ルタはシルヘルの小さな頭を撫で、無理に笑みを作って彼女を宥めていた。その表情に腹の奥が疼き、煮えるのが分かる。無意識に鼻息が荒くなり、それを押し殺した。
────今、犯したらどうなるのだろう。
欲が体内で巡り、ぐつぐつと音を立て沸騰する。俺の熱視線に気がついたのか、ルタが目を伏せた。
「シルヘル。ルタに迷惑をかけるな」
シルヘルの頭を撫でると、ルタの呼吸が乱れる。汗をダラダラとかきながら、シルヘルをゆっくりと俺から引き離した。同時に、後ろにいたルパートが「そろそろ切り上げよう」と声をあげる。
ルタが「じゃあ、僕はこの辺で。いい子にしてるんだよ」と告げ、シルヘルをジェスに渡し、頬を引き攣らせた。下手な笑みだなと思いつつ、彼の肩に手を置く。指先に力を込め、自分の方へ引き寄せた。ルタの身が強張るのを感じる。
「じゃ、じゃあね、ジェス。シルヘル。また、今度……」
縺れた舌を必死に動かし平静を装った彼の異変に、ジェスは不審がっていたが、シルヘルの「バイバイ」という声音につられ、彼女も手を振った。何か言いたげな雰囲気を醸し出していたが、踵を返し、Aエリアへ帰っていく。
俺たちもその様子を見届け、Bエリアに帰った。
「ルタ」
落ち合った場所から数メートル離れた時点で、ルタが途端にふらりと体をぐらつかせた。
ルタの肩に置いていた手を外し、頬を撫でる。冷えたそこは色を無くし、じっとりと湿っていた。
「ぅ゛、お、ぇっ……」
緊張の糸が切れたのか、ルタが前のめりになり胃液を吐き出す。口の端に垂れた唾液を拭ってやり、抱き寄せる。
「ルタ、余計なことを言わなかったんだな。いい子だな」
労わるように頭を撫でる。嗚咽を漏らしながら蹲った彼に、バグシが手を伸ばし支えた。ゼェゼェと掠れた呼吸を繰り返すルタが、震えた声を漏らす。
「いいこに、いいこにする、から」
「お願いだから、誰にも手を出さないで」。恐怖からくる震えで舌足らずになったルタが、途切れとぎれに呟く。「可愛いな、ルタ」。思わずひとりごちた俺を、バグシが一瞥する。
「早く帰ろう。みんなが待ってるぞ」
穏やかに微笑み、手を引く。ルタは眉を歪め、今にも泣き出しそうだ。足取りが重いのか、それとも地面に踏ん張っているのか、その体は動かない。曇る表情は、今から再び訪れる地獄に絶望している様子だ。彼の恐怖がひしひしと伝わり、血が躍る。
帰ったら一番最初に俺が抱きたいな。服を着たままの彼に、押し入りたい。衣類を剥ぎ、その尊厳を壊したい。自分が供物であると再確認させ、逃れられない運命なのだと教えてやりたい。
想像をするだけでワクワクした。鼻歌を歌い出したい気分になり、意図せずに頬が緩む。
まるで初恋のうぶな気持ちに似ている。俺は彼の冷たい手を、汗ばんだ手のひらで握り込んだ。
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