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恋煩い
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◇
「ルタ!」
翌日、俺たちはエリアの境目で落ち合った。ジェスはルタを見た瞬間に、声を張り上げる。こちらへ走り寄り、ルタに手を伸ばした。やがて俺を見て、眉を顰める。
「……なんであなたたちがいるの?」
ルタの後ろにいる俺やバグシ、ルパートを見て訝しげに呟いた。「いやぁ、ルタがいつ倒れるか分からないだろ。だから、もしものためにな」。ルタは俺の言葉通り、今にも倒れてしまいそうなほど顔色が良くない。それに、足取りが悪い。なんせ、先ほどまで犯されていた身だ。ふらつく彼の肩に力を込め、握りしめる。薄い体が激しく揺れ、震え出した。
「ルタ。話があるの。ちょっと向こうまで来て」
ルタの手を取り、ジェスが少し離れた場所へ移動した。俺たちは黙ってその様子を眺める。ジェスは何かを語りかけながら、俺たちへ視線を遣る。監視するような眼差しが気に入らないのか、じろりと睨んだ。訝しげな表情を崩さぬまま、顔を上げないルタと会話を続けている。やがて、ジェスがルタの顎に手を添えた。品定めするように彼の顔を確認し、アザのある場所を撫でる。「平気?」という言葉をかけているのだろう、彼女はルタの背中を撫で続けていた。
「おーい!」
何処かから声がした。俺は顔をそちらの方へ向ける。遠くから小さな影が走ってきた。シルヘルだ。俺は両手を広げ、彼女を抱き寄せた。「ルタは?」。足にしがみついた彼女に、あそこだよと指を差す。ジェスとルタが会話に気がついたのか、こちらを見た。
「シルヘル!」
途端、ルタが顔色を変え怒鳴り声を上げた。必死の形相でシルヘルの名前を呼ぶ彼を見て、背中にゾクリとした何かが走る。ドキドキと胸が高鳴り、汗が滲んだ。この場には似合わない感情はまるで恋のような昂りで、我ながら内心笑ってしまった。
ルタはというと顔色を一層悪くしている。肩で呼吸を繰り返し、何か言いたげに口を開閉させていた。隣のジェスに「どうしたの?」と心配されている。俺は小さく笑い、シルヘルの頭を撫でた。柔らかな髪が指の皮膚から伝わる。
「すまない、シルヘル。ルタはまだ体調が悪いんだ。銃の扱い方を教えてもらうのは、また今度にしよう」
「えぇー?」と、シルヘルが不服そうな表情を浮かべた。ルタは居ても立ってもいられないと言いたげにこちらをチラチラと見ている。不安げな彼を見て、口の中に唾液が滲む。
ジェスとの会話を切り上げたのか、ルタが小走りで俺たちへ近づいた。シルヘルの小さな手を取り、俺から引き剥がす。
「ルタ、痛いよ」
「ごめんね、シルヘル」
泣きそうな声音でそう言われ、ルタは焦りながら彼女の腕を撫でた。やがて膝をつき、シルヘルに視線を合わせる。
「ルタ!」
翌日、俺たちはエリアの境目で落ち合った。ジェスはルタを見た瞬間に、声を張り上げる。こちらへ走り寄り、ルタに手を伸ばした。やがて俺を見て、眉を顰める。
「……なんであなたたちがいるの?」
ルタの後ろにいる俺やバグシ、ルパートを見て訝しげに呟いた。「いやぁ、ルタがいつ倒れるか分からないだろ。だから、もしものためにな」。ルタは俺の言葉通り、今にも倒れてしまいそうなほど顔色が良くない。それに、足取りが悪い。なんせ、先ほどまで犯されていた身だ。ふらつく彼の肩に力を込め、握りしめる。薄い体が激しく揺れ、震え出した。
「ルタ。話があるの。ちょっと向こうまで来て」
ルタの手を取り、ジェスが少し離れた場所へ移動した。俺たちは黙ってその様子を眺める。ジェスは何かを語りかけながら、俺たちへ視線を遣る。監視するような眼差しが気に入らないのか、じろりと睨んだ。訝しげな表情を崩さぬまま、顔を上げないルタと会話を続けている。やがて、ジェスがルタの顎に手を添えた。品定めするように彼の顔を確認し、アザのある場所を撫でる。「平気?」という言葉をかけているのだろう、彼女はルタの背中を撫で続けていた。
「おーい!」
何処かから声がした。俺は顔をそちらの方へ向ける。遠くから小さな影が走ってきた。シルヘルだ。俺は両手を広げ、彼女を抱き寄せた。「ルタは?」。足にしがみついた彼女に、あそこだよと指を差す。ジェスとルタが会話に気がついたのか、こちらを見た。
「シルヘル!」
途端、ルタが顔色を変え怒鳴り声を上げた。必死の形相でシルヘルの名前を呼ぶ彼を見て、背中にゾクリとした何かが走る。ドキドキと胸が高鳴り、汗が滲んだ。この場には似合わない感情はまるで恋のような昂りで、我ながら内心笑ってしまった。
ルタはというと顔色を一層悪くしている。肩で呼吸を繰り返し、何か言いたげに口を開閉させていた。隣のジェスに「どうしたの?」と心配されている。俺は小さく笑い、シルヘルの頭を撫でた。柔らかな髪が指の皮膚から伝わる。
「すまない、シルヘル。ルタはまだ体調が悪いんだ。銃の扱い方を教えてもらうのは、また今度にしよう」
「えぇー?」と、シルヘルが不服そうな表情を浮かべた。ルタは居ても立ってもいられないと言いたげにこちらをチラチラと見ている。不安げな彼を見て、口の中に唾液が滲む。
ジェスとの会話を切り上げたのか、ルタが小走りで俺たちへ近づいた。シルヘルの小さな手を取り、俺から引き剥がす。
「ルタ、痛いよ」
「ごめんね、シルヘル」
泣きそうな声音でそう言われ、ルタは焦りながら彼女の腕を撫でた。やがて膝をつき、シルヘルに視線を合わせる。
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