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恋煩い
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「どうだった?」
Bエリアに帰った俺は、バグシの小屋へ向かう。そこにはルタがぐったりと力なく横たわっていた。彼の耳元でバグシが何かを囁いている。手にはスープが入った椀があった。きっと、食事をとるように促しているのだ。ルタは時折、死体のように動かなくなり食事さえとらない。呼吸をしているかも怪しい時がある。
小屋に入ってきた俺に真っ先に声をかけたのはルパートだ。俺は息を吐き出しながらルタの元へ近づく。彼は光のない目をこちらに向けたかと思えば、ゆっくりと瞼を閉じた。
「……不審がってたな。俺の言い訳が下手すぎたってのもあるが、あいつは昔から鋭いんだ。明日、バレるかもしれない」
俺は膝をつき、ルタの体を起こす。食事中だぞ、とバグシに咎められたが気にせず、ルタに話しかけた。「ルタ。明日、ジェスとお前を会わせる」。その瞬間、彼がぴくりと体を揺らせた。瞼を微かに震わせ、俺を見上げる。何かを期待しているような瞳が癪に障った。
皮肉っぽく微笑み、耳元で囁く。
「ルタ。余計なことは口走るな。お前は今、体調が優れないっていう設定だ。何を問われても、体調が悪いと突き通せ」
続けて、こう言った。
「お前が妙なことを言った瞬間に、Aエリアを俺たちが占領する。まず、初めにシルヘルをいただくか」
ルタが目を見開いた。唇を戦慄かせ、顔を真っ青にさせている。額に滲んだ汗が、彼の動揺を物語っていた。
「あいつはまだ、初潮も来てないガキだ。きっと、俺好みのいい声で鳴く」
乾いた喉から、何か声を漏らそうと口を開閉させたルタが、震える手で俺にしがみついてきた。「やめてくれ」。風が吹けば消えてしまいそうなほど弱々しい声が鼓膜を撫で、息が上がる。もっといじめたくて、彼の頬を撫でた。
「どうしてだよ。ルタもAエリアの女を差し出すって言ってただろ? 今更、なんで拒絶するんだよ」
「あの場にいた、みんなが聞いていたことだ。言い逃れはできないぞ」。額に滲んだ汗を親指で拭ってやると、ルタが瞳を揺らがせた。「ルタ、特等席で見せてやるよ。シルヘルが泣き叫びながら、男を知るところを」。追い討ちをかけるように楽しげに語りかけると、彼が極寒の地に置き去りにされたかの如く震え出す。腕をぎゅうと握り、悲鳴に似た声を漏らした。
「言いません、言いません、言いません、言わないから、ジェスには、何も言わないから、やめて」
はぁはぁと呼吸を乱すルタが可哀想で哀れだ。「あの日に言ったことも、もう二度と口にしません。許してください、許してください、許してください」。頭を抱え項垂れる彼を見下ろす。変に気持ちが昂り、興奮を擽られた。今すぐに押し倒し、めちゃくちゃに暴きたい衝動に襲われた。
汗ばんだ手をルタの肩にかける。じっとりと撫でると、彼に緊張が走った。
「……ルタ。言うこと、聞けるよな?」
もう一度、念を押すように囁く。唇が耳輪に触れた。冷え切ったそこが煽情的だ。バグシが聞こえない程度の声で「悪趣味だ」とひとりごちる。バレたら困るのはお前もだろうと言いたかったが、それを飲み込む。
ルタは無我夢中に頭を縦に振る。言いません、言いませんと繰り返すルタを力強く抱きしめた。
「信じてるぞ、ルタ」
震える身をさすり、髪を撫でる。腕の中で弱々しく怯えるルタが愛しくて、頬に唇を寄せた。
Bエリアに帰った俺は、バグシの小屋へ向かう。そこにはルタがぐったりと力なく横たわっていた。彼の耳元でバグシが何かを囁いている。手にはスープが入った椀があった。きっと、食事をとるように促しているのだ。ルタは時折、死体のように動かなくなり食事さえとらない。呼吸をしているかも怪しい時がある。
小屋に入ってきた俺に真っ先に声をかけたのはルパートだ。俺は息を吐き出しながらルタの元へ近づく。彼は光のない目をこちらに向けたかと思えば、ゆっくりと瞼を閉じた。
「……不審がってたな。俺の言い訳が下手すぎたってのもあるが、あいつは昔から鋭いんだ。明日、バレるかもしれない」
俺は膝をつき、ルタの体を起こす。食事中だぞ、とバグシに咎められたが気にせず、ルタに話しかけた。「ルタ。明日、ジェスとお前を会わせる」。その瞬間、彼がぴくりと体を揺らせた。瞼を微かに震わせ、俺を見上げる。何かを期待しているような瞳が癪に障った。
皮肉っぽく微笑み、耳元で囁く。
「ルタ。余計なことは口走るな。お前は今、体調が優れないっていう設定だ。何を問われても、体調が悪いと突き通せ」
続けて、こう言った。
「お前が妙なことを言った瞬間に、Aエリアを俺たちが占領する。まず、初めにシルヘルをいただくか」
ルタが目を見開いた。唇を戦慄かせ、顔を真っ青にさせている。額に滲んだ汗が、彼の動揺を物語っていた。
「あいつはまだ、初潮も来てないガキだ。きっと、俺好みのいい声で鳴く」
乾いた喉から、何か声を漏らそうと口を開閉させたルタが、震える手で俺にしがみついてきた。「やめてくれ」。風が吹けば消えてしまいそうなほど弱々しい声が鼓膜を撫で、息が上がる。もっといじめたくて、彼の頬を撫でた。
「どうしてだよ。ルタもAエリアの女を差し出すって言ってただろ? 今更、なんで拒絶するんだよ」
「あの場にいた、みんなが聞いていたことだ。言い逃れはできないぞ」。額に滲んだ汗を親指で拭ってやると、ルタが瞳を揺らがせた。「ルタ、特等席で見せてやるよ。シルヘルが泣き叫びながら、男を知るところを」。追い討ちをかけるように楽しげに語りかけると、彼が極寒の地に置き去りにされたかの如く震え出す。腕をぎゅうと握り、悲鳴に似た声を漏らした。
「言いません、言いません、言いません、言わないから、ジェスには、何も言わないから、やめて」
はぁはぁと呼吸を乱すルタが可哀想で哀れだ。「あの日に言ったことも、もう二度と口にしません。許してください、許してください、許してください」。頭を抱え項垂れる彼を見下ろす。変に気持ちが昂り、興奮を擽られた。今すぐに押し倒し、めちゃくちゃに暴きたい衝動に襲われた。
汗ばんだ手をルタの肩にかける。じっとりと撫でると、彼に緊張が走った。
「……ルタ。言うこと、聞けるよな?」
もう一度、念を押すように囁く。唇が耳輪に触れた。冷え切ったそこが煽情的だ。バグシが聞こえない程度の声で「悪趣味だ」とひとりごちる。バレたら困るのはお前もだろうと言いたかったが、それを飲み込む。
ルタは無我夢中に頭を縦に振る。言いません、言いませんと繰り返すルタを力強く抱きしめた。
「信じてるぞ、ルタ」
震える身をさすり、髪を撫でる。腕の中で弱々しく怯えるルタが愛しくて、頬に唇を寄せた。
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