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恋煩い
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◇
「ん、ぁ゛、ッ……あ、ッぅ」
薄暗い部屋の中。窓から差し込む月明かりが血の気のない頬を照らしている。真白い腰を掴み、ガツガツと奥を抉ると、喉の奥から引き攣った悲鳴を漏らした。きつく瞑った目尻から涙が溢れる。苦しそうな表情に、腰が重くなった。
もっと苦しめて、追い詰めて、ルタの全てを穢したい。もっと、もっと。
「ひ、ぎッ、……、あ~……ッ、いッ、だ……」
無意識に、奥を攻めすぎたようだ。その鈍痛に彼が首を横に振った。やがて、俺の手に爪を食い込ませる。引き剥がそうと抵抗する仕草に、カッと頭に血がのぼった。瞬間、ルタを殴りつける。ガツンと鈍い音が響き、拳にジワリと痛みが滲んだ。草臥れたベッドに横たわった彼は、殴られた目元を押さえ、声にならない音を漏らしている。
「ごめん、痛かったな」
彼の手を無理やり剥がし、シーツに押しつけた。ルタの目元は赤くなり、いつも以上に潤んでいる。俺がずいと顔を近づけると、彼が怯えた表情を見せた。「ひっ」と引き攣った声を漏らし、顔を背けるルタ。腫れた部分へ舌を伸ばし、べろりと舐めると塩気が広がった。彼の汗と涙を味わいながら、ちゅっと音を立てて離れる。
「は、はっ、はッ……」
浅く呼吸を繰り返したルタは、体を震わせている。怖がってほしく無くて、唇を喰んだ。何度も柔らかいそこを啄み、恋人同士のように深く口づけをする。歯列を舐め、舌で口内を弄る。唾液を交換し合いながら、彼の頬を両手で包み込んだ。
「ッ、……はぁッ、ん、……んー……」
「ルタ、好きだ」
彼の背中に腕を回し、抱きしめる。耳元で何度も好きだと囁き、腰を揺らした。喉を反らせ喘ぐ彼の首筋に歯を立てる。ルタは俺の愛の呟きに返答はしなかった。ただ静かに悲鳴をあげ、涙を流すだけだった。
◇
俺を助けてくれた青年はルタ・アルセンという。この街から数キロ離れた町で、両親と農業をしながら田舎暮らしをしていたらしい。「僕もね、命からがら逃げ惑ったんだ」。ルタが運転する車の助手席で、その横顔を眺める。彼の両親はすでにゾンビに襲われ、他界してしまったそうだ。
「……俺の両親も、もう死んでるだろうな」
「そんなこと、言っちゃダメだよ」
ルタは悲しげに眉を歪めた。「きっと、生きてる。そう信じようよ」。彼の言葉に、確約は無かった。けれど何故か信用できた。そう思わせる何かがあった。きっと、魔法だ。彼の言葉は魔法に違いない。ルタがこちらに顔を向け、目を弧にした。俺はゆっくりと頷く。胸が高鳴り、手のひらに汗が滲んだ。
「さぁ、ついたよ」
車から降り、彼に導かれてたどり着いたのは、広い倉庫だった。重々しい扉をノックし、「帰ったよ」とルタが声をかける。数秒の間が空き、扉がスライドした。そこに居たのは、ブルネットの髪をした女だ。ルタより年上で、俺より年下の女。ルタと真逆で気の強そうな目をしている。
「食料と、新しい生存者。名前は、ゴドフリーだよ」
ルタが背負っていたリュックをおろし、中から缶詰を取り出す。そして俺を紹介した。ブルネットの女は腕を組んだまま俺とルタを交互に見る。「ジェスよ。よろしく」。彼女は短く告げ、踵を返した。「彼女は誰にでも無愛想なんだ。気にしないで」。ルタが申し訳なさそうに頬を引き攣らせた。
ふと、倉庫内へ視線を遣る。中には老婆と若い子連れの女、足を負傷した男、活発に走り回るガキ────その他数名が居た。ジェスとルタ、俺を含めて軽く十人は越している。
「ここはね、生存者が寄り添って生活している場所なんだよ」
ルタがもう一度、空になったリュックを背負い直した。倉庫の隅に保管してある銃を手に取り、状態を確認していた。「君、銃の扱いは?」。こちらを見ずにルタが問う。俺は「いいや」と短く答えた。
「じゃあ、僕が教えてあげる。今からもう一度、外へ出るけど一緒に行く?」
年下であるにも関わらず、彼は俺を包み込むような声音でそう言った。「大丈夫。僕が手取り足取り、きちんと教えてあげるから」。まるで初夜の手ほどきをする夜に慣れた女のように見え、俺はかぶりを振った。ルタの笑みにぐらりと何かが傾きそうになる。
「嫌なら、無理しなくていいよ」
「いや、えっと……行きたい。行かせてくれ」
俺の反応に、ルタが嬉しそうに笑った。手を引かれ、倉庫内を後にする。その熱い手のひらに頭の奥がぼんやりとした。
「ん、ぁ゛、ッ……あ、ッぅ」
薄暗い部屋の中。窓から差し込む月明かりが血の気のない頬を照らしている。真白い腰を掴み、ガツガツと奥を抉ると、喉の奥から引き攣った悲鳴を漏らした。きつく瞑った目尻から涙が溢れる。苦しそうな表情に、腰が重くなった。
もっと苦しめて、追い詰めて、ルタの全てを穢したい。もっと、もっと。
「ひ、ぎッ、……、あ~……ッ、いッ、だ……」
無意識に、奥を攻めすぎたようだ。その鈍痛に彼が首を横に振った。やがて、俺の手に爪を食い込ませる。引き剥がそうと抵抗する仕草に、カッと頭に血がのぼった。瞬間、ルタを殴りつける。ガツンと鈍い音が響き、拳にジワリと痛みが滲んだ。草臥れたベッドに横たわった彼は、殴られた目元を押さえ、声にならない音を漏らしている。
「ごめん、痛かったな」
彼の手を無理やり剥がし、シーツに押しつけた。ルタの目元は赤くなり、いつも以上に潤んでいる。俺がずいと顔を近づけると、彼が怯えた表情を見せた。「ひっ」と引き攣った声を漏らし、顔を背けるルタ。腫れた部分へ舌を伸ばし、べろりと舐めると塩気が広がった。彼の汗と涙を味わいながら、ちゅっと音を立てて離れる。
「は、はっ、はッ……」
浅く呼吸を繰り返したルタは、体を震わせている。怖がってほしく無くて、唇を喰んだ。何度も柔らかいそこを啄み、恋人同士のように深く口づけをする。歯列を舐め、舌で口内を弄る。唾液を交換し合いながら、彼の頬を両手で包み込んだ。
「ッ、……はぁッ、ん、……んー……」
「ルタ、好きだ」
彼の背中に腕を回し、抱きしめる。耳元で何度も好きだと囁き、腰を揺らした。喉を反らせ喘ぐ彼の首筋に歯を立てる。ルタは俺の愛の呟きに返答はしなかった。ただ静かに悲鳴をあげ、涙を流すだけだった。
◇
俺を助けてくれた青年はルタ・アルセンという。この街から数キロ離れた町で、両親と農業をしながら田舎暮らしをしていたらしい。「僕もね、命からがら逃げ惑ったんだ」。ルタが運転する車の助手席で、その横顔を眺める。彼の両親はすでにゾンビに襲われ、他界してしまったそうだ。
「……俺の両親も、もう死んでるだろうな」
「そんなこと、言っちゃダメだよ」
ルタは悲しげに眉を歪めた。「きっと、生きてる。そう信じようよ」。彼の言葉に、確約は無かった。けれど何故か信用できた。そう思わせる何かがあった。きっと、魔法だ。彼の言葉は魔法に違いない。ルタがこちらに顔を向け、目を弧にした。俺はゆっくりと頷く。胸が高鳴り、手のひらに汗が滲んだ。
「さぁ、ついたよ」
車から降り、彼に導かれてたどり着いたのは、広い倉庫だった。重々しい扉をノックし、「帰ったよ」とルタが声をかける。数秒の間が空き、扉がスライドした。そこに居たのは、ブルネットの髪をした女だ。ルタより年上で、俺より年下の女。ルタと真逆で気の強そうな目をしている。
「食料と、新しい生存者。名前は、ゴドフリーだよ」
ルタが背負っていたリュックをおろし、中から缶詰を取り出す。そして俺を紹介した。ブルネットの女は腕を組んだまま俺とルタを交互に見る。「ジェスよ。よろしく」。彼女は短く告げ、踵を返した。「彼女は誰にでも無愛想なんだ。気にしないで」。ルタが申し訳なさそうに頬を引き攣らせた。
ふと、倉庫内へ視線を遣る。中には老婆と若い子連れの女、足を負傷した男、活発に走り回るガキ────その他数名が居た。ジェスとルタ、俺を含めて軽く十人は越している。
「ここはね、生存者が寄り添って生活している場所なんだよ」
ルタがもう一度、空になったリュックを背負い直した。倉庫の隅に保管してある銃を手に取り、状態を確認していた。「君、銃の扱いは?」。こちらを見ずにルタが問う。俺は「いいや」と短く答えた。
「じゃあ、僕が教えてあげる。今からもう一度、外へ出るけど一緒に行く?」
年下であるにも関わらず、彼は俺を包み込むような声音でそう言った。「大丈夫。僕が手取り足取り、きちんと教えてあげるから」。まるで初夜の手ほどきをする夜に慣れた女のように見え、俺はかぶりを振った。ルタの笑みにぐらりと何かが傾きそうになる。
「嫌なら、無理しなくていいよ」
「いや、えっと……行きたい。行かせてくれ」
俺の反応に、ルタが嬉しそうに笑った。手を引かれ、倉庫内を後にする。その熱い手のひらに頭の奥がぼんやりとした。
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