みんなのたいちょう

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 ゴドフリーが呟く。その声はシンと静まり返る集会所に響いた。声は、何かを繋ぎ止めていた糸をぷつりと切り落とす、鋭いハサミのようだった。

「だめ、やめてくれ。ゴドフリー、ダメだ」

 必死な形相でゴドフリーの足へ縋り付くルタ。俺は周りの男達へ視線を投げる。周囲の男達も何処か不安げに状況を眺めていた。

「でもよ、ルタ。現状を見てみろよ。どうやってこの鬱憤を収めれば良いんだ?」
「……後日、ちゃんとAエリアの隊長と話し合う、話し合うから……」
「話し合って解決するか? 本当に? Aエリアの隊長はジェスだろ? 気の強いあいつが、女を引き渡すとは到底思えんがなぁ……」
「ちゃんと、説明する。だから────」
「隊長が代わりになればいい」

 ポツリと誰かが呟いた。発言者はバグシだ。みんなの視線が彼へ集中する。ルタもバグシを見つめていた。

「女を差し出せないなら、隊長が代わりになればいい。俺は別にそれでも構わないと思うが」

 耳が痛くなるほどの静寂が場を支配する。ゴクリと誰かが唾液を嚥下した。その音が妙に耳にこびりつく。ルタは喉から短く呼吸音を漏らし、汗を頬から顎へ伝わせている。手は小刻みに震えており、顔色がとても悪い。

「……どうだ? みんな」

 バグシが周りへ同意を求める。最初に返事をしたのはゴドフリーとルパートだ。

「俺は構わない」
「俺も」

 言葉を皮切りに、続々と声が上がった。俺も、俺も。言葉はまるで渦を巻く波のように集会所を埋め尽くす。その異様さに、俺は混乱した。隣にいたリンゼイは腕を振り上げ、アンタが代わりになってくれ、と声を荒げている。床に膝を突き、呆然と男達を見上げるルタに、暴力にも近い言葉が降り注いだ。
 辺りを見渡す。男達の顔は興奮と興味に満ち溢れていた。その恐ろしさに身ぶるいする。しかし、この異様な光景に駆り立てられている自分がいるのもまた事実だ。文字通り、勃起しそうなほどに。

「ま、待って。待って。落ち着いて────」
「アンタが女たちの代わりになれ」
「そうだ。俺たちに無理強いするなら、アンタが体を差し出せ」
「っ、あっ!」

 彼は肩を小突かれ、その場に倒れた。周りを囲むように男が群がる。倒れたルタの顎を掴み、ゴドフリーが呟く。

「ルタ。この場にいる全員がAエリアに乗り込むか、ここで今すぐお前が体を差し出すか。どちらか選べ」
「……ッ」

 ルタが顔を俯かせる。震える肩は頼りなく、とてもじゃないが今までこの集落の男達を纏めていた人物だとは思えない。
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