みんなのたいちょう[完]

中頭かなり

文字の大きさ
上 下
4 / 49

4

しおりを挟む
 ゴドフリーが呟く。その声はシンと静まり返る集会所に響いた。声は、何かを繋ぎ止めていた糸をぷつりと切り落とす、鋭いハサミのようだった。

「だめ、やめてくれ。ゴドフリー、ダメだ」

 必死な形相でゴドフリーの足へ縋り付くルタ。俺は周りの男達へ視線を投げる。周囲の男達も何処か不安げに状況を眺めていた。

「でもよ、ルタ。現状を見てみろよ。どうやってこの鬱憤を収めれば良いんだ?」
「……後日、ちゃんとAエリアの隊長と話し合う、話し合うから……」
「話し合って解決するか? 本当に? Aエリアの隊長はジェスだろ? 気の強いあいつが、女を引き渡すとは到底思えんがなぁ……」
「ちゃんと、説明する。だから────」
「隊長が代わりになればいい」

 ポツリと誰かが呟いた。発言者はバグシだ。みんなの視線が彼へ集中する。ルタもバグシを見つめていた。

「女を差し出せないなら、隊長が代わりになればいい。俺は別にそれでも構わないと思うが」

 耳が痛くなるほどの静寂が場を支配する。ゴクリと誰かが唾液を嚥下した。その音が妙に耳にこびりつく。ルタは喉から短く呼吸音を漏らし、汗を頬から顎へ伝わせている。手は小刻みに震えており、顔色がとても悪い。

「……どうだ? みんな」

 バグシが周りへ同意を求める。最初に返事をしたのはゴドフリーとルパートだ。

「俺は構わない」
「俺も」

 言葉を皮切りに、続々と声が上がった。俺も、俺も。言葉はまるで渦を巻く波のように集会所を埋め尽くす。その異様さに、俺は混乱した。隣にいたリンゼイは腕を振り上げ、アンタが代わりになってくれ、と声を荒げている。床に膝を突き、呆然と男達を見上げるルタに、暴力にも近い言葉が降り注いだ。
 辺りを見渡す。男達の顔は興奮と興味に満ち溢れていた。その恐ろしさに身ぶるいする。しかし、この異様な光景に駆り立てられている自分がいるのもまた事実だ。文字通り、勃起しそうなほどに。

「ま、待って。待って。落ち着いて────」
「アンタが女たちの代わりになれ」
「そうだ。俺たちに無理強いするなら、アンタが体を差し出せ」
「っ、あっ!」

 彼は肩を小突かれ、その場に倒れた。周りを囲むように男が群がる。倒れたルタの顎を掴み、ゴドフリーが呟く。

「ルタ。この場にいる全員がAエリアに乗り込むか、ここで今すぐお前が体を差し出すか。どちらか選べ」
「……ッ」

 ルタが顔を俯かせる。震える肩は頼りなく、とてもじゃないが今までこの集落の男達を纏めていた人物だとは思えない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

処理中です...