みんなのたいちょう[完]

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 バグシが、先程まで拘束されていた弱者とは思えないほど高らかに周りの男達へ語りかける。彼が何を言いたいか察することができたもの達は、互いを見合い口を閉ざした。

「それはダメだ……」
「何故だ!? この集落には女がいる。一人や二人をこちらへ拝借するぐらい良いだろう。守ってやってるんだぞ? そのぐらいしてもらわないと、割に合わない」
「君たちの言い分は、十分に理解してる……でも、ダメだ……」

 ルタは苦しそうに顔を歪め、眉を顰めた。可哀想なほど縮こまっている彼は、隊長という肩書きを背負った男には到底見えない。

「……Aエリアにいる女性は、この惨劇で心に傷を負った人が多数いる。知らない男に無理やり襲われた影響で、未だに食事をまともに摂れない人もいるんだ。だから、その……」
「それが、俺たちが我慢しなけりゃいけない理由なのか? だとしたら酷すぎる。みんなはルタを信頼してるから言えないだけで、本当は随分前から鬱憤は溜まってた。そうだろ?」

 バグシは男達へ声をかける。ルパートやゴドフリーも、なんとも言い難い表情をして黙っていた。もちろん、俺や周りの連中も黙っている。

「だから、そういう本や、道具を外から取ってきている。自由に使っていいと決めているだろ? それじゃ────」
「それじゃダメに決まってるだろ! 俺たちは熱のある生身の女を抱きたいんだよ!」

 彼の言い分はご尤もだ。俺たちは女と無縁の生活を強いられている。それを成人向けの本や、オナホールなどで満たすのは到底難しい。
 一歩進めばそこには女がいるのに、触れられない。かなりのストレスであることは事実だ。

「わかってる。わかってるよ。君の言い分はわかってる……けど……」
「……バグシの言ってること、正論だよなぁ」

 声を上げたのはゴドフリーだ。ルタが顔を上げ、目を見開いている。え? と、短く言葉を吐き出したルタの額には汗が滲んでいた。
 ゴドフリーはルタの次にこの集落で権力がある男だ。故に距離も近く、ルタを信仰している節がある。だからこそ、バグシがルールを破ったことに対して憤怒していたのだ。
 しかし、そんな彼がバグシの言い分に賛同している。その言葉に、一同に緊張が走った。

「だってさぁ。俺たちはこのBエリアで毎日、ゾンビからAエリアの連中を守ってるんだぜ? 物資調達のためにここから抜け出して、外の世界へ足を踏み出してる。相当な危険と隣り合わせのはずだ。そんな俺たちに、少しの褒美ぐらいあったって良いよなぁ?」

 だろう? そう周りへ同意を求めるゴドフリー。ルタの顔が強張り、血の気を引いた顔色をしていた。
 ゴドフリーの隣にいたルパートが、そうだなと頷く。つられて雪崩のように周りにいた男達が声を上げ始めた。 俺も頷き、周りに同調する。

「ルタには悪いけどよ、ここにいる連中は我慢してるんだ。お前が設けた堅苦しいルールのせいでな」
「……っ」

 ルタが顔を伏せ、黙り込んでいる。

「……今から、いくか? Aエリアに」
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