みんなのたいちょう[完]

中頭かなり

文字の大きさ
上 下
2 / 49

2

しおりを挟む


「バグシが?」

 自室で武器を磨いていたルタが、目を見開き俺たちを見つめていた。その瞳は揺れ動き、困惑している様子である。彼に事態を伝えるために部屋へ駆け込んだアントンと、隣に立っていたリンゼイが大きく頷く。
 アーデ、早く来い。大変なことが起こった、とアントンに腕をひかれ騒ぎに強制参加させられた俺は、状況を詳しく理解できていないまま、彼らの顔を交互に見た。

「い、今、彼はどこに?」
「集会所にいます。縄で拘束されて」
「そんな!」

 彼は可哀想なほど青褪めていた。手入れしていた武器を置き、駆け足で集会所へ向かう。その背中を、アントン達と共に追った。
 Bエリアの中心部とされている箇所にある集会所には既に明かりが灯っていて、中から声がする。此処は誰かの誕生日を祝う時や、一ヶ月に二回程度開催される宴に利用される場所だ。こんな切羽詰まるような場面で使われる場所ではない。俺は心臓を脈撃たせながら集会所へ入るルタへ続いた。
 中では集落にいる男達の殆どが犇めき合っており、中心にバグシがロープを巻かれ拘束されていた。ルタは悲痛な声をあげ、一目散に彼へ近づく。跪き、バグシの拘束を解こうとした。

「ルパート。ルールを破ったからといって、こんなことをしてはいけない」
「だけど、隊長。こいつはAエリアに侵入して女達をレイプしようとしたんだぜ?」

 その言葉にルタが顔を顰め、目を伏せた。
 この集落には二つのエリアがあり、出入りするのは原則禁止となっている。女子供がいるAエリアに妻子がいる場合以外は立ち入ってはいけない。それはルタが考えたルールであり、集落にいるためには守らなければいけない事柄だ。
 しかし、どうやらバグシはルールを破ったらしい。夜間にAエリアへ侵入した所を、見張りに捕まったようだ。
 ルタは顔を歪めながら、バグシの縄を解く。

「それは、許されないことだ」
「そうだろ? ルタが決めたルールを破ったんだぜコイツは」

 ルパートの隣にいたゴドフリーが、持っていた長柄の棒でバグシの体を突く。暴力はやめてくれ、とルタがそれを庇った。

「うん、彼はルールを破ってしまった。だから、理由をちゃんと聞いて話し合おう。暴力だけでは何も解決しないよ……バグシ、どうしてこんなことしたんだい?」

 ルタは拘束されていたバグシの乱れた服を整えながら問うた。バグシは間を置いた後、口を開く。

「どうしてって……そんなの分かりきってるだろ」

 バグシはルタを睨みつけ、地を這うドブネズミのように低い声で語りかけた。ルタは頬を引き攣らせて、体を硬直させる。

「ここにいる、誰もがみんな思っているはずだ。……限界だ。俺たちには女が必要だ」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

処理中です...