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彼女とあのカフェでパフェを食べる。
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「馬鹿らしい話なんで、聞き流してください」
「ハイ」
「笑った顔が、娘とそっくりなんです」
そう言われ、私は口を開けた。娘? 彼女に娘など居るのだろうか。私の感情を察したのか、小野田は慌てて言葉を続ける。
「私の、夢に出てくる娘に似てるんです」
それから彼女は、自身がONP錠を飲み見る夢を赤裸々に告白した。幸彦という完璧な旦那がいること。可愛い娘がいること。立派な一軒家に住まい、幸せな日曜日を送っていること。そして、夢の内容を客に話した途端、結婚してくれと告げられたこと。無理だと断ると逆上して殺されかけたこと。
全てを話し終えた頃、手元にパフェが届いた。夢で見たものよりほんの少しだけちゃっちいそれは、しかし美味しそうで、唾液が滲み出る。
「ね? 馬鹿らしい話でしょう」
そう、皮肉っぽく笑った彼女はパフェへ手をつけた。
馬鹿らしい、話だろうか。私はそうは思わなかった。自身で実現できない夢を、架空の自分に託すことはそんなに愚かなことだろうか。
「そういえば、名前聞いてなかったですね」
「あ、星水って言います」
宙に字を書いてみせる。へぇ、変わった苗字。と、カプチーノを啜りながら彼女が呟いた。今更の自己紹介に、なんだかむず痒くなる。
「星水さんは」
「え?」
「星水さんは、どんな夢を見るんですか?」
真っ直ぐな瞳が、私を捉えている。スプーンを持った手に、汗が滲んだ。彼女を勝手に夢に登場させたことを話してしまえば、気持ち悪いと言われてしまうだろうか。
「引きませんか?」
「引かない」
「絶対?」
「絶対」
私は息を漏らし、パフェに乗ったイチゴと睨めっこする。意を決して、口を開いた。
「実は私。ONP錠には、否定的な立場でして」
「ほうほう」
「と、言うのも。私にはあまり欲がなく。欲を夢で満たしたところで、夢は結局のところ夢でしかない、という考えがあるんです。なので、あまり飲まないんですけど……今月は、ONP錠を飲んで夢をみたんです」
どんな? と小野田が興味深そうに尋ねる。いやぁ、と口籠る私に、ここまできて勿体ぶらないでよ、と彼女が唇を尖らせた。
「あなたと、パフェを食べる夢を見まして」
へぇ。と、彼女が声を上げた。意外や意外。彼女は引いたような表情を見せず、寧ろあっさりとしていた。
「その夢を見たのって、私とあなたが初めて会った日の夜?」
「は、はい。あの日の記憶が残ってたのか、夢に小野田さんが出てきて……」
「ハイ」
「笑った顔が、娘とそっくりなんです」
そう言われ、私は口を開けた。娘? 彼女に娘など居るのだろうか。私の感情を察したのか、小野田は慌てて言葉を続ける。
「私の、夢に出てくる娘に似てるんです」
それから彼女は、自身がONP錠を飲み見る夢を赤裸々に告白した。幸彦という完璧な旦那がいること。可愛い娘がいること。立派な一軒家に住まい、幸せな日曜日を送っていること。そして、夢の内容を客に話した途端、結婚してくれと告げられたこと。無理だと断ると逆上して殺されかけたこと。
全てを話し終えた頃、手元にパフェが届いた。夢で見たものよりほんの少しだけちゃっちいそれは、しかし美味しそうで、唾液が滲み出る。
「ね? 馬鹿らしい話でしょう」
そう、皮肉っぽく笑った彼女はパフェへ手をつけた。
馬鹿らしい、話だろうか。私はそうは思わなかった。自身で実現できない夢を、架空の自分に託すことはそんなに愚かなことだろうか。
「そういえば、名前聞いてなかったですね」
「あ、星水って言います」
宙に字を書いてみせる。へぇ、変わった苗字。と、カプチーノを啜りながら彼女が呟いた。今更の自己紹介に、なんだかむず痒くなる。
「星水さんは」
「え?」
「星水さんは、どんな夢を見るんですか?」
真っ直ぐな瞳が、私を捉えている。スプーンを持った手に、汗が滲んだ。彼女を勝手に夢に登場させたことを話してしまえば、気持ち悪いと言われてしまうだろうか。
「引きませんか?」
「引かない」
「絶対?」
「絶対」
私は息を漏らし、パフェに乗ったイチゴと睨めっこする。意を決して、口を開いた。
「実は私。ONP錠には、否定的な立場でして」
「ほうほう」
「と、言うのも。私にはあまり欲がなく。欲を夢で満たしたところで、夢は結局のところ夢でしかない、という考えがあるんです。なので、あまり飲まないんですけど……今月は、ONP錠を飲んで夢をみたんです」
どんな? と小野田が興味深そうに尋ねる。いやぁ、と口籠る私に、ここまできて勿体ぶらないでよ、と彼女が唇を尖らせた。
「あなたと、パフェを食べる夢を見まして」
へぇ。と、彼女が声を上げた。意外や意外。彼女は引いたような表情を見せず、寧ろあっさりとしていた。
「その夢を見たのって、私とあなたが初めて会った日の夜?」
「は、はい。あの日の記憶が残ってたのか、夢に小野田さんが出てきて……」
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