ワンナイトパラダイス

中頭かなり

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彼女とあのカフェでパフェを食べる。

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 彼女の私服は、意外と普通だった。スキニーパンツにオーバーサイズのTシャツ。靴は厚底のサンダルだ。メイクはそこまで濃くないし、髪は一纏めにされ、乱暴に後頭部で結ばれている。夢で会った彼女とはまた違った一面に驚きつつ、小野田の元へ駆け寄った。

「お待たせしました」
「いえ、私もさっき来たところです」

 彼女はそう言い、持っていた携帯端末を肩に下げたショルダーバッグにしまう。行きましょうか、と小野田は歩みを進めた。
 私は横を歩く彼女をチラリと見る。包帯をしていない小野田は新鮮で、思わず笑ってしまった。どうしたんですか? と問われ、なんでもないです、と答える。
 小野田は夢で見たよりほんの少しだけ背が高い。隣に並ぶと、必然的に彼女を見上げる形になる。

「ところで」

 小野田が口を開いた。入院時、カサついていた唇は今や潤いを取り戻している。

「そのワンピース似合ってますね」

 全身に汗が滲んだ。そう。この日のために、夢で着たワンピースと似たものを探し出し、購入していた。家で着た時は、似合うだろうか、と不安だったがどうやら彼女のお気に召したらしい。仕事服の色味がない感じより、そっちの方があなたらしい、と言われ顔から火が吹き出しそうになる。どうも、と返すのがやっとだ。
 何分か歩き辿り着いたカフェは、外装も内装も、夢とは違うものだった。薄暗い店内には、テーブルの上にノートパソコンを置き仕事をするサラリーマンと、歳を召した夫婦がいた。私たちは窓際の席に腰を下ろし、メニュー表を見る。

「カプチーノとチョコパフェ」

 メニュー表を一瞥し、そう言い放った彼女。決めるのが早いなぁと感心しつつ、ページを捲る。

「じゃあ、私はメロンソーダとイチゴパフェ……」

 店員を呼びつけ、注文を終えた私は、意を決して口を開く。

「退院、おめでとうございます」

 頭を下げると、彼女はどうも、と微笑んだ。傷跡が気になるのか、はたまた痒いのか、彼女は頭部に出来ているであろう傷を触っている。

「……なんで私を誘ってくれたんですか?」

 純粋な疑問だった。確かに、彼女を励ましはした。が、それまでの関係だと思っていた。看護師と患者の、ありがちな関係。それが何故か、退院祝いで食事をするという関係にまで発展している。
 彼女はお冷やに口をつけ、ふふ、と緩やかに口角を上げる。何がおかしいのだろう、と眉を顰めると彼女が続ける。
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