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不細工と美人
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◇
「ねぇ。今日は何処に連れて行ってくれるの?」
椎名の微笑みに、鼓動が増す。いつもとは違った、ボーイッシュな格好が愛らしい。ホットパンツから覗いた生足が、眩しいほど滑らかだ。華奢ですらりとしたその脚に見惚れていると、椎名が腕を引いた。
「何、ジロジロ見てるんですか。エッチですよ」
薄ピンクのグロスが乗った唇が俺を誘惑するように、動く。生唾を飲み込み、短く息を吐き出した。
「今から、ラーメン屋に行こうかと」
「ラーメン? 私、大好物なんです」
子供のようにはしゃぐ彼女の髪が揺れる。甘い香りが鼻腔を刺激し、俺は眩暈がするほど興奮した。
胃の中に収めた麺類に満足し、俺たちは火照った体を夜風で冷ます。コッテリ油の豚骨ラーメンを啜る彼女は、いつもの上品で気高い彼女とはかけ離れて、より親しみを感じる女に見えた。耳に髪の毛を掛け、ふうと麺に息を吹きかける彼女は一層、魅力的に感じ、そんな女を隣に置いて食事しているのだと自覚し、俺は鼻を鳴らす。
高台から光る街を見下ろしている彼女の隣へ向かう。椎名は手すりに手をかけ、宝石の様なそれを見つめていた。臭いセリフかもしれないが、そんな横顔が夜景よりも綺麗だった。
「白石さん」
「何?」
「告白、してくれないんですね」
喉に唾液が絡み、咽せる。そうだ。俺は彼女に、告白をしていない。彼女は、俺の決意を聞きたいのだ。待っているのだ。
彼女は唇を尖らせ、俺から目を逸らした。意気地なし、と言いたげな椎名を見て、背筋を伸ばす。
ごほんとひとつ咳払いをし、彼女の肩を掴み、向かい合うように立った。椎名は溢れそうなほど、目を見開いている。
「椎名さん」
「はい」
「好きだ。付き合ってくれ」
人生で二度目の告白を、俺はした。一回目はめぐみ。あの時は色々焦っていて、この女で良いか、と決めてしまった。けれど今は違う。俺はちゃんと「彼女が良い」と、決心している。あの時とは、全く違うのだ。
俺は彼女からの返答を、目を瞑り待つ。息を吸い込む音が、耳を撫でた。
「……はい!」
彼女は泣きそうになりながら、俺を見上げている。俺は無意識のうちに彼女を抱きしめていた。暖かい体温が身に染みる。これから、ずっと一緒にいよう。呟いた声は夜風に消えた。
「ねぇ。今日は何処に連れて行ってくれるの?」
椎名の微笑みに、鼓動が増す。いつもとは違った、ボーイッシュな格好が愛らしい。ホットパンツから覗いた生足が、眩しいほど滑らかだ。華奢ですらりとしたその脚に見惚れていると、椎名が腕を引いた。
「何、ジロジロ見てるんですか。エッチですよ」
薄ピンクのグロスが乗った唇が俺を誘惑するように、動く。生唾を飲み込み、短く息を吐き出した。
「今から、ラーメン屋に行こうかと」
「ラーメン? 私、大好物なんです」
子供のようにはしゃぐ彼女の髪が揺れる。甘い香りが鼻腔を刺激し、俺は眩暈がするほど興奮した。
胃の中に収めた麺類に満足し、俺たちは火照った体を夜風で冷ます。コッテリ油の豚骨ラーメンを啜る彼女は、いつもの上品で気高い彼女とはかけ離れて、より親しみを感じる女に見えた。耳に髪の毛を掛け、ふうと麺に息を吹きかける彼女は一層、魅力的に感じ、そんな女を隣に置いて食事しているのだと自覚し、俺は鼻を鳴らす。
高台から光る街を見下ろしている彼女の隣へ向かう。椎名は手すりに手をかけ、宝石の様なそれを見つめていた。臭いセリフかもしれないが、そんな横顔が夜景よりも綺麗だった。
「白石さん」
「何?」
「告白、してくれないんですね」
喉に唾液が絡み、咽せる。そうだ。俺は彼女に、告白をしていない。彼女は、俺の決意を聞きたいのだ。待っているのだ。
彼女は唇を尖らせ、俺から目を逸らした。意気地なし、と言いたげな椎名を見て、背筋を伸ばす。
ごほんとひとつ咳払いをし、彼女の肩を掴み、向かい合うように立った。椎名は溢れそうなほど、目を見開いている。
「椎名さん」
「はい」
「好きだ。付き合ってくれ」
人生で二度目の告白を、俺はした。一回目はめぐみ。あの時は色々焦っていて、この女で良いか、と決めてしまった。けれど今は違う。俺はちゃんと「彼女が良い」と、決心している。あの時とは、全く違うのだ。
俺は彼女からの返答を、目を瞑り待つ。息を吸い込む音が、耳を撫でた。
「……はい!」
彼女は泣きそうになりながら、俺を見上げている。俺は無意識のうちに彼女を抱きしめていた。暖かい体温が身に染みる。これから、ずっと一緒にいよう。呟いた声は夜風に消えた。
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