ワンナイトパラダイス

中頭かなり

文字の大きさ
上 下
11 / 77
不細工と美人

10

しおりを挟む


「ねぇ。今日は何処に連れて行ってくれるの?」

 椎名の微笑みに、鼓動が増す。いつもとは違った、ボーイッシュな格好が愛らしい。ホットパンツから覗いた生足が、眩しいほど滑らかだ。華奢ですらりとしたその脚に見惚れていると、椎名が腕を引いた。

「何、ジロジロ見てるんですか。エッチですよ」

 薄ピンクのグロスが乗った唇が俺を誘惑するように、動く。生唾を飲み込み、短く息を吐き出した。

「今から、ラーメン屋に行こうかと」
「ラーメン? 私、大好物なんです」

 子供のようにはしゃぐ彼女の髪が揺れる。甘い香りが鼻腔を刺激し、俺は眩暈がするほど興奮した。





 胃の中に収めた麺類に満足し、俺たちは火照った体を夜風で冷ます。コッテリ油の豚骨ラーメンを啜る彼女は、いつもの上品で気高い彼女とはかけ離れて、より親しみを感じる女に見えた。耳に髪の毛を掛け、ふうと麺に息を吹きかける彼女は一層、魅力的に感じ、そんな女を隣に置いて食事しているのだと自覚し、俺は鼻を鳴らす。
 高台から光る街を見下ろしている彼女の隣へ向かう。椎名は手すりに手をかけ、宝石の様なそれを見つめていた。臭いセリフかもしれないが、そんな横顔が夜景よりも綺麗だった。

「白石さん」
「何?」
「告白、してくれないんですね」

 喉に唾液が絡み、咽せる。そうだ。俺は彼女に、告白をしていない。彼女は、俺の決意を聞きたいのだ。待っているのだ。
 彼女は唇を尖らせ、俺から目を逸らした。意気地なし、と言いたげな椎名を見て、背筋を伸ばす。
 ごほんとひとつ咳払いをし、彼女の肩を掴み、向かい合うように立った。椎名は溢れそうなほど、目を見開いている。

「椎名さん」
「はい」
「好きだ。付き合ってくれ」

 人生で二度目の告白を、俺はした。一回目はめぐみ。あの時は色々焦っていて、この女で良いか、と決めてしまった。けれど今は違う。俺はちゃんと「彼女が良い」と、決心している。あの時とは、全く違うのだ。
 俺は彼女からの返答を、目を瞑り待つ。息を吸い込む音が、耳を撫でた。

「……はい!」

 彼女は泣きそうになりながら、俺を見上げている。俺は無意識のうちに彼女を抱きしめていた。暖かい体温が身に染みる。これから、ずっと一緒にいよう。呟いた声は夜風に消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

処理中です...