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俺なりのケジメ1
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次の日の放課後、登校した俺は生徒会室に現生徒会メンバーの他、紅河さんと紫苑さん、それから真白達に来て貰った。
そんな俺に何かを感じたのか、一茶と奏水も生徒会室について来る。
そして皆の前で、俺は今日、集まって貰った理由を口にした。
「突然、お呼び立てして申し訳ありません……本日は改めて、皆さんとおつき合い出来ないとお伝えしたく、集まって頂きました」
ギョッとする一同の前で、俺はペコリと頭を下げた。
「……理由を、聞かせて下さい」
最初に尋ねてきたのは、紫苑さんだった。
「皆さんが素敵すぎて、選べないからです」
「違います。何故、今、このタイミングで?」
確かに今、クリスマスイベントの準備している。元々、つき合わないって言ってるのに、わざわざ気まずくする必要はない。卒業式の時に伝える選択肢もあった。
……だけど、これには刃金さんのこと以外にも理由はあった。
「皆さんそれぞれの新しい出会いを、邪魔したくないからです」
「邪魔だなんて! 僕達は……僕はっ」
「俺は、諦めろって言える立場じゃないですけど……元々、俺は一人で皆さん全員とつき合うことは出来ません。今までは皆さんの好意に甘えていましたけど、皆さんの出会いの機会をこれ以上、奪う訳にはいきません」
夏休みは、何だかんだと前生徒会メンバーや現生徒会メンバーと過ごした。そして今は、生徒会役員として黒士や朱春とも過ごしてる。
だけど、これからクリスマスに年越し、お正月にバレンタインとイベント目白押しだ。つき合えないのに、皆を独占し続ける訳にはいかない。
「……僕の気持ちは、迷惑ですか?」
「紫苑」
泣きそうな表情と声で、俺に尋ねてきた紫苑さんを止めたのは――真白だった。
もっとも、真白も口をへの字にして泣きそうなのを我慢していたけれど。
「迷惑だったら、もっと早く全力でお断りしています……正直、生徒会を辞めて、退学して、外国に逃げようとも思いました」
「「「!?」」」
俺の言葉に、皆が息を呑む。それに、だけど、と俺は言葉を続けた。
「今でも、どうして俺なんだって思いますし、考え直すべきだと思いますけど……嫌じゃないんです」
そう、面倒だけど嫌じゃない。大切なことなんで、二回言っておく。
そして刃金さんを好きだって自覚してから、俺も皆にとっての『好きな相手』だって、改めて考えてみて――つき合えないからって、逃げ出すのはあんまりだと思った。俺がされたら、また吐きそうになるレベルでショックを受ける。
「好きになってくれて、ありがとうございます。ですが、申し訳ありません。皆さんのことは友達や仲間、先輩としてしか見られません」
我ながら勝手だとは思うけど、許して貰えるなら卒業まではこの学校にも生徒会にもいたい。でも、こんな俺の顔なんて見たくないって言うんなら、潔く身を引こう――そう思い、再び俺は頭を下げた。
「……そう、ですよね。君は、何でもはっきり言いますものね」
紫苑さんの言葉に、俺は顔を上げた。
眼鏡の奥の目が潤んではいるけど、紫苑さんは笑っていた――取り繕う作り笑いじゃなく、素の紫苑さんの表情だった。
「そんな君だから気になって、好きになったんでした……僕こそ、ありがとうございます。すぐには無理ですけど、諦めるよう努力します」
「あの、努力って……急に、無理しなくて良いんですよ?」
「……全く、君って子は」
紫苑さんの言葉にそう言うと、やれやれって感じでため息をつかれた。
まあ、俺が言うなって話なんだけど――紫苑さんって生真面目って言うか、馬鹿がつくくらい真面目だからな。変に努力されると、予想の斜め上に進みそうだし。ゆっくり、ぼちぼちやって欲しい。
「友達で、いてくれるのか?」
そんなことを考えていた俺の手が、不意に真白に両手で掴まれる。
「……真白が、よければ」
「オレ、出灰とこうやって手繋いだり、ギュッてしたいんだぞ? それでも?」
さっきは我慢してたけど、感情が高ぶったのか真白はポロポロ涙を零しながらそう尋ねてきた。
……どうしよう、真白としては真剣に悩んでの台詞なんだろうけど。
(王道らしく、ピュアだな)
それくらいなら、外国だと挨拶だよな。いや、まあ、俺達日本人だし。本人は真剣(大切なことなんで、やっぱり二回言っておく)だろうから。
「俺も、真白と友達でいたい……そう言うのは、これから会う大切な奴にとっておけよ」
「……おうっ」
だから、それくらいとは思わずにそう言うと、真白はパッと手を離して大きく頷いた。
可愛くて、頭を撫でたくなったけど――真白も頑張ってるから、俺も我慢することにした。
そんな俺に何かを感じたのか、一茶と奏水も生徒会室について来る。
そして皆の前で、俺は今日、集まって貰った理由を口にした。
「突然、お呼び立てして申し訳ありません……本日は改めて、皆さんとおつき合い出来ないとお伝えしたく、集まって頂きました」
ギョッとする一同の前で、俺はペコリと頭を下げた。
「……理由を、聞かせて下さい」
最初に尋ねてきたのは、紫苑さんだった。
「皆さんが素敵すぎて、選べないからです」
「違います。何故、今、このタイミングで?」
確かに今、クリスマスイベントの準備している。元々、つき合わないって言ってるのに、わざわざ気まずくする必要はない。卒業式の時に伝える選択肢もあった。
……だけど、これには刃金さんのこと以外にも理由はあった。
「皆さんそれぞれの新しい出会いを、邪魔したくないからです」
「邪魔だなんて! 僕達は……僕はっ」
「俺は、諦めろって言える立場じゃないですけど……元々、俺は一人で皆さん全員とつき合うことは出来ません。今までは皆さんの好意に甘えていましたけど、皆さんの出会いの機会をこれ以上、奪う訳にはいきません」
夏休みは、何だかんだと前生徒会メンバーや現生徒会メンバーと過ごした。そして今は、生徒会役員として黒士や朱春とも過ごしてる。
だけど、これからクリスマスに年越し、お正月にバレンタインとイベント目白押しだ。つき合えないのに、皆を独占し続ける訳にはいかない。
「……僕の気持ちは、迷惑ですか?」
「紫苑」
泣きそうな表情と声で、俺に尋ねてきた紫苑さんを止めたのは――真白だった。
もっとも、真白も口をへの字にして泣きそうなのを我慢していたけれど。
「迷惑だったら、もっと早く全力でお断りしています……正直、生徒会を辞めて、退学して、外国に逃げようとも思いました」
「「「!?」」」
俺の言葉に、皆が息を呑む。それに、だけど、と俺は言葉を続けた。
「今でも、どうして俺なんだって思いますし、考え直すべきだと思いますけど……嫌じゃないんです」
そう、面倒だけど嫌じゃない。大切なことなんで、二回言っておく。
そして刃金さんを好きだって自覚してから、俺も皆にとっての『好きな相手』だって、改めて考えてみて――つき合えないからって、逃げ出すのはあんまりだと思った。俺がされたら、また吐きそうになるレベルでショックを受ける。
「好きになってくれて、ありがとうございます。ですが、申し訳ありません。皆さんのことは友達や仲間、先輩としてしか見られません」
我ながら勝手だとは思うけど、許して貰えるなら卒業まではこの学校にも生徒会にもいたい。でも、こんな俺の顔なんて見たくないって言うんなら、潔く身を引こう――そう思い、再び俺は頭を下げた。
「……そう、ですよね。君は、何でもはっきり言いますものね」
紫苑さんの言葉に、俺は顔を上げた。
眼鏡の奥の目が潤んではいるけど、紫苑さんは笑っていた――取り繕う作り笑いじゃなく、素の紫苑さんの表情だった。
「そんな君だから気になって、好きになったんでした……僕こそ、ありがとうございます。すぐには無理ですけど、諦めるよう努力します」
「あの、努力って……急に、無理しなくて良いんですよ?」
「……全く、君って子は」
紫苑さんの言葉にそう言うと、やれやれって感じでため息をつかれた。
まあ、俺が言うなって話なんだけど――紫苑さんって生真面目って言うか、馬鹿がつくくらい真面目だからな。変に努力されると、予想の斜め上に進みそうだし。ゆっくり、ぼちぼちやって欲しい。
「友達で、いてくれるのか?」
そんなことを考えていた俺の手が、不意に真白に両手で掴まれる。
「……真白が、よければ」
「オレ、出灰とこうやって手繋いだり、ギュッてしたいんだぞ? それでも?」
さっきは我慢してたけど、感情が高ぶったのか真白はポロポロ涙を零しながらそう尋ねてきた。
……どうしよう、真白としては真剣に悩んでの台詞なんだろうけど。
(王道らしく、ピュアだな)
それくらいなら、外国だと挨拶だよな。いや、まあ、俺達日本人だし。本人は真剣(大切なことなんで、やっぱり二回言っておく)だろうから。
「俺も、真白と友達でいたい……そう言うのは、これから会う大切な奴にとっておけよ」
「……おうっ」
だから、それくらいとは思わずにそう言うと、真白はパッと手を離して大きく頷いた。
可愛くて、頭を撫でたくなったけど――真白も頑張ってるから、俺も我慢することにした。
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