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ホワイトデーデート
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刃金×出灰で、タイトル通りホワイトデーデートです。
※
高三だった刃金さんは、三月初めに白月学園を卒業した。
俺としては先月、バレンタインにはチョコ入りパンナコッタを渡し、俺の誕生日にはデートしてご馳走して貰ったんで、今日のホワイトデーは会えないかもとすら思っていた。
だけど、卒業式の後に会った刃金さんに言われた。
「ホワイトデー、当日は平日だからお前、学校だよな……その後の土曜か日曜に、会えるか?」
「えっ……はい。土曜日、大丈夫です」
「そうか。じゃあ、土曜日の朝十時。車で、寮まで迎えに行く」
刃金さんとくればバイクのイメージだが、卒業前に刃金さんは車の免許も取って車を購入していた。と言うか、俺の誕生日の時は珍しく雪が降ったのでいつものバイクではなく、刃金さんの車で移動した。
(あれ? でも、雪とかじゃないのに車って……何か、誕生日の時みたいな高価い店に行くのか?)
誕生日に雪予報が出ているのは、割と早いうちに解って。それこそ、行けなくなるのも覚悟して刃金さんにプレゼント代わりにとレストランを予約して貰った。一人で入る勇気はないし、初めての高級レストランは刃金さんと体験したかったからだ。副会長のお見合いに連れていかれたことは、ホテルだしそもそもデートじゃないので、ノーカウントとさせて頂く。
(ランチ、無茶苦茶美味かった)
思い出してついうっとりしてしまったが、すぐに我に返って今後のことを考える。そうなると、レストランに行った時のようにジャケットを羽織ればいいのだろうか?
しばしの沈黙の後、まずは考えてないでちゃんと聞かねばと思って顔を上げると、やれやれって顔で笑った刃金さんに頭を撫でられた。
「行くのは、オムライス食った店だ。だから服は、いつも通りでいい。車なのは昼飯食った後、渡したい物があるからだ」
「えっ? 昼ご飯がプレゼントですよね?」
「いや、前はランチの値段知って、お前がビビったからプレゼントってことにしたけど……俺にも、プレゼントさせろよ。まあ『今回は』お返しだから、甘いのにするけどな」
「……ありがとう、ございます」
『今回は』と言うのが気になったが、刃金さんがお返ししてくれるというのは嬉しかったのでお礼を言った。そして、あることを思いついたので俺は刃金さんにお願いをした。
「あの店に行くのなら、一つ、やりたいことがあるんですけど……」
※
それから本日、刃金さんと約束をした土曜日。
「オムライス食うか?」
「メニューを変えても、やるんですね……いただきます。あ、エビフライ食べます?」
「おう」
俺と刃金さんは、前に頼んだメニューを逆に頼んだ。つまり刃金さんはオムライスで、俺はミックスセットだ。
前回同様、他の客がいるがもれなく刃金さんの「あーん」がついてくる。そして前回同様、いや、今では付き合ってるんで俺はオムライスを貰い、代わりにエビフライを差し出した。
そして食べ終えて、車の助手席に乗ったところで俺はお洒落な紙袋を渡された。
「……おお……っ」
中を見ると、色彩々のマカロンがたくさん入ってた。お洒落で美味しそうなのに、つい声を上げてしまう。そんな俺に、隣の運転席に座る刃金さんがふは、と笑った。
「イイ反応だな」
「綺麗で可愛いじゃないですか」
「あんま表情変わってねぇけど、目はすげぇキラキラしてるな。出灰だって、美味そうなの作るだろ?」
「流石に、マカロンは作れないですよ……こんなに貰って、いいんですか?」
「ああ……あ、でも」
「?」
そこで一旦言葉を切ると、刃金さんは紙袋からピンクのマカロンを一つ、手に取り、包装紙から取り出すと俺の口の前に差し出してきた。
それにあ、と口を開けて俺は口に入れられたマカロンを咀嚼し──その後「つまらないものですが」と、俺が作ったマドレーヌを差し出すと、刃金さんに抱き締められた。聞くと金持ちな刃金さんにプレゼントを自分から(誕生日は刃金さんから聞かれたし)ねだらず、逆に何かと手作りお菓子をくれる俺に感激したらしい。
(金持ちのイケメンって大変だな)
喜んでくれたのは嬉しいが、こっそり哀れに思ったのは内緒である。
※
高三だった刃金さんは、三月初めに白月学園を卒業した。
俺としては先月、バレンタインにはチョコ入りパンナコッタを渡し、俺の誕生日にはデートしてご馳走して貰ったんで、今日のホワイトデーは会えないかもとすら思っていた。
だけど、卒業式の後に会った刃金さんに言われた。
「ホワイトデー、当日は平日だからお前、学校だよな……その後の土曜か日曜に、会えるか?」
「えっ……はい。土曜日、大丈夫です」
「そうか。じゃあ、土曜日の朝十時。車で、寮まで迎えに行く」
刃金さんとくればバイクのイメージだが、卒業前に刃金さんは車の免許も取って車を購入していた。と言うか、俺の誕生日の時は珍しく雪が降ったのでいつものバイクではなく、刃金さんの車で移動した。
(あれ? でも、雪とかじゃないのに車って……何か、誕生日の時みたいな高価い店に行くのか?)
誕生日に雪予報が出ているのは、割と早いうちに解って。それこそ、行けなくなるのも覚悟して刃金さんにプレゼント代わりにとレストランを予約して貰った。一人で入る勇気はないし、初めての高級レストランは刃金さんと体験したかったからだ。副会長のお見合いに連れていかれたことは、ホテルだしそもそもデートじゃないので、ノーカウントとさせて頂く。
(ランチ、無茶苦茶美味かった)
思い出してついうっとりしてしまったが、すぐに我に返って今後のことを考える。そうなると、レストランに行った時のようにジャケットを羽織ればいいのだろうか?
しばしの沈黙の後、まずは考えてないでちゃんと聞かねばと思って顔を上げると、やれやれって顔で笑った刃金さんに頭を撫でられた。
「行くのは、オムライス食った店だ。だから服は、いつも通りでいい。車なのは昼飯食った後、渡したい物があるからだ」
「えっ? 昼ご飯がプレゼントですよね?」
「いや、前はランチの値段知って、お前がビビったからプレゼントってことにしたけど……俺にも、プレゼントさせろよ。まあ『今回は』お返しだから、甘いのにするけどな」
「……ありがとう、ございます」
『今回は』と言うのが気になったが、刃金さんがお返ししてくれるというのは嬉しかったのでお礼を言った。そして、あることを思いついたので俺は刃金さんにお願いをした。
「あの店に行くのなら、一つ、やりたいことがあるんですけど……」
※
それから本日、刃金さんと約束をした土曜日。
「オムライス食うか?」
「メニューを変えても、やるんですね……いただきます。あ、エビフライ食べます?」
「おう」
俺と刃金さんは、前に頼んだメニューを逆に頼んだ。つまり刃金さんはオムライスで、俺はミックスセットだ。
前回同様、他の客がいるがもれなく刃金さんの「あーん」がついてくる。そして前回同様、いや、今では付き合ってるんで俺はオムライスを貰い、代わりにエビフライを差し出した。
そして食べ終えて、車の助手席に乗ったところで俺はお洒落な紙袋を渡された。
「……おお……っ」
中を見ると、色彩々のマカロンがたくさん入ってた。お洒落で美味しそうなのに、つい声を上げてしまう。そんな俺に、隣の運転席に座る刃金さんがふは、と笑った。
「イイ反応だな」
「綺麗で可愛いじゃないですか」
「あんま表情変わってねぇけど、目はすげぇキラキラしてるな。出灰だって、美味そうなの作るだろ?」
「流石に、マカロンは作れないですよ……こんなに貰って、いいんですか?」
「ああ……あ、でも」
「?」
そこで一旦言葉を切ると、刃金さんは紙袋からピンクのマカロンを一つ、手に取り、包装紙から取り出すと俺の口の前に差し出してきた。
それにあ、と口を開けて俺は口に入れられたマカロンを咀嚼し──その後「つまらないものですが」と、俺が作ったマドレーヌを差し出すと、刃金さんに抱き締められた。聞くと金持ちな刃金さんにプレゼントを自分から(誕生日は刃金さんから聞かれたし)ねだらず、逆に何かと手作りお菓子をくれる俺に感激したらしい。
(金持ちのイケメンって大変だな)
喜んでくれたのは嬉しいが、こっそり哀れに思ったのは内緒である。
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