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選挙、始めました2
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「谷先輩って、人気あるんですね」
「えっ?」
「一年の間では、親しみやすいって好評ですよ? 他の候補者もいないみたいですから、このまま当選じゃないですか?」
「……さあ、どうでしょうね」
好かれてないとは言わないが、局地的な気がする。まあ、他の面子だと(赤嶺も含めて)恐れ多いってことだよな、と思うながら俺はアイスティーを飲んだ。
もっとも、まだ立候補期間はあるから最後まで解らない。だから、と曖昧な返事をした俺に赤嶺は笑顔を崩さないままで言った。
「お互い、当選したら良いですね」
「……赤嶺様は、生徒会役員になりたいんですか?」
「はい?」
「当選しても、仕事は『お友達』にやって貰うんですか?」
……そう尋ねた俺に、返されたのが冒頭の台詞で。
腹黒よりある意味、性質が悪いと思いつつ俺は口を開いた。
「面倒じゃないですか?」
「……えっ?」
「赤嶺様が、周りに色々とやって貰う理由は解りました。だけどそれだったら、仕事をしてくれる赤嶺様の『お友達』が生徒会役員になれば良いんじゃないですか?」
うん、それだといちいち赤嶺経由に仕事頼まなくて良いからな。
思ったままに言うと、初めて赤嶺から笑顔が消えた――まあ、唖然とした表情でも可愛いは可愛いけど。
「とは言え……『お友達』の皆様が動くのは、赤嶺様の為ですからね。赤嶺様がいないのに、働いてはくれませんよね?」
そんな赤嶺に、俺はフォローを入れた。本心としては、一番が赤嶺だとしても生徒会メンバーが声をかけたら動くかな、と思うけど。
(随分と、ショック受けてるな……『お友達』の方が、生徒会役員ってステータスを手に入れるから? だけど、嫉妬とかそう言う感じとも違うような)
「……か?」
「えっ?」
「僕自身が仕事をすれば、周りの皆さんも……生徒会の皆さんも、僕を認めてくれますか?」
そう尋ねてきた赤嶺は、真剣だった。そんな相手の反応を見つつ、俺は赤嶺の質問に答えた。
「勿論ですよ。それこそ、俺が良い例じゃないですか? 平凡庶民ですけど、働いた分だけ評価されてます」
「そんな……」
「お気づかいなく、本当のことですから」
「……谷先輩が、羨ましいです。実力で、自分の居場所を手に入れてますよね」
しみじみと言われ、俺は何となくだが理解した。
(こいつにとっては、周りの好意を受けることが居場所を手に入れることなんだ)
腹黒じゃないけど期待に応えようとする辺り、ちょっと紫苑さんに近いかな? だけど、好かれてる理由が見た目だと思ってて、だからこそ俺が気になると。
「実力って言い方だと、ちょっと違うかもしれませんけど……その顔もあっての、赤嶺様ですよ?」
「っ!?」
「仕事をすれば、もっと好かれるでしょうけどね」
そうつけ加えたのは俺の負担が減るのは勿論だけど、可愛くて仕事も出来れば普通に周りから認められると思ったからだ。
(逆に顔だけだと万が一、ゴツくなったら苦労するだろうし……それにしても、美形も大変だな)
だからこそ俺は赤嶺みたいに「羨ましい」とは言わず、代わりに話も終わったんで「失礼します」と一礼し、食堂を後にした。
「今のって……顔、誉めて貰えたのかな?」
……俺を見送りながら、赤嶺がポツリと呟いたことには気づかずに。
「えっ?」
「一年の間では、親しみやすいって好評ですよ? 他の候補者もいないみたいですから、このまま当選じゃないですか?」
「……さあ、どうでしょうね」
好かれてないとは言わないが、局地的な気がする。まあ、他の面子だと(赤嶺も含めて)恐れ多いってことだよな、と思うながら俺はアイスティーを飲んだ。
もっとも、まだ立候補期間はあるから最後まで解らない。だから、と曖昧な返事をした俺に赤嶺は笑顔を崩さないままで言った。
「お互い、当選したら良いですね」
「……赤嶺様は、生徒会役員になりたいんですか?」
「はい?」
「当選しても、仕事は『お友達』にやって貰うんですか?」
……そう尋ねた俺に、返されたのが冒頭の台詞で。
腹黒よりある意味、性質が悪いと思いつつ俺は口を開いた。
「面倒じゃないですか?」
「……えっ?」
「赤嶺様が、周りに色々とやって貰う理由は解りました。だけどそれだったら、仕事をしてくれる赤嶺様の『お友達』が生徒会役員になれば良いんじゃないですか?」
うん、それだといちいち赤嶺経由に仕事頼まなくて良いからな。
思ったままに言うと、初めて赤嶺から笑顔が消えた――まあ、唖然とした表情でも可愛いは可愛いけど。
「とは言え……『お友達』の皆様が動くのは、赤嶺様の為ですからね。赤嶺様がいないのに、働いてはくれませんよね?」
そんな赤嶺に、俺はフォローを入れた。本心としては、一番が赤嶺だとしても生徒会メンバーが声をかけたら動くかな、と思うけど。
(随分と、ショック受けてるな……『お友達』の方が、生徒会役員ってステータスを手に入れるから? だけど、嫉妬とかそう言う感じとも違うような)
「……か?」
「えっ?」
「僕自身が仕事をすれば、周りの皆さんも……生徒会の皆さんも、僕を認めてくれますか?」
そう尋ねてきた赤嶺は、真剣だった。そんな相手の反応を見つつ、俺は赤嶺の質問に答えた。
「勿論ですよ。それこそ、俺が良い例じゃないですか? 平凡庶民ですけど、働いた分だけ評価されてます」
「そんな……」
「お気づかいなく、本当のことですから」
「……谷先輩が、羨ましいです。実力で、自分の居場所を手に入れてますよね」
しみじみと言われ、俺は何となくだが理解した。
(こいつにとっては、周りの好意を受けることが居場所を手に入れることなんだ)
腹黒じゃないけど期待に応えようとする辺り、ちょっと紫苑さんに近いかな? だけど、好かれてる理由が見た目だと思ってて、だからこそ俺が気になると。
「実力って言い方だと、ちょっと違うかもしれませんけど……その顔もあっての、赤嶺様ですよ?」
「っ!?」
「仕事をすれば、もっと好かれるでしょうけどね」
そうつけ加えたのは俺の負担が減るのは勿論だけど、可愛くて仕事も出来れば普通に周りから認められると思ったからだ。
(逆に顔だけだと万が一、ゴツくなったら苦労するだろうし……それにしても、美形も大変だな)
だからこそ俺は赤嶺みたいに「羨ましい」とは言わず、代わりに話も終わったんで「失礼します」と一礼し、食堂を後にした。
「今のって……顔、誉めて貰えたのかな?」
……俺を見送りながら、赤嶺がポツリと呟いたことには気づかずに。
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